軽量化されてもスペックは優秀
T400sはCPUに、Core 2 Duo SP9400(2.40GHz)もしくはSP9600(2.53GHz)する。薄くはなったが、特にスペックダウンはしていない。なお今回は、SP9400搭載モデルを試用している。また、試用機はDVDスーパーマルチドライブを搭載したモデルだが、CPUと同様に、出荷時にBlu-rayドライブを選択することも可能となっている。
薄さと軽さを実現するために、T400sではX300シリーズでも採用された、カーボン繊維とガラス繊維のハイブリッドCFRPが使われている。そのためもあって、ディスプレー部はかなり剛性が高い。14.1型と大型であるが、片側を持って開いたり、天板を押しても、たわみなどはほとんど感じられないほどだ。全体的な「カッチリ感」「しっかり感」は、さすがといったところだろう。
ディスプレーのバックライトはLEDで、その点も薄型化に貢献している。ただ少々気になったのは、ディスプレーの色温度が低めで、色が黄色側に振れているように感じることだ。白バックでテキストを見続ける場合、目への負担は少なそうだが、写真を扱う場合は少々厳しいのではないか、という印象を受けた。
拡張性の面も問題はない。USBは3つで、うちひとつはeSTAと共用。背面に2つ、左側にひとつという構成だ。本体左側にはExpressCard/34のスロットがあるが、これは出荷時に5in1タイプのメモリーカードスロットと排他となる。メモリーカードスロットはExpressCardやUSBなどで拡張も可能なことを考えると、ExpressCardを選んでおくのがいいだろう。
キーボードは「史上最高」?
タッチパッドも優秀
今回、レノボが最大の自信をもってアピールするポイントとなっているのが「キーボード」だ。久々にレイアウトや機構を含め、大幅な改善されたものを搭載している。
写真を見ればおわかりのように、キー配列はいつものThinkPadのものから、少々変更が加えられた。目立つのは、ESCキーとDeleteキーが縦に長く、大型になった点だろう。「使用頻度を考えて大型化した」とレノボ開発陣は説明しているが、その効果は確かに大きい。
筆者はESCキーとDeleteキーをあまり使わない方だが、それでも、それらのキーを「意識せずに感触だけで押せる」のは快適、と感じた。IMEの変換取り消しや、文字削除などにこれら2つのキーを多用するタイプの人々ならば、効果はより劇的なものに感じるだろう。
なにより、とにかくびっくりしたのは「タイプ感」の良さだ。元々ThinkPadのキーボードは快適さで定評があったが、T400sのキーボードはさらに気持ちいい。T400と比べても、キャラクターがかなり異なっている。このところのThinkPadのキーボードは、少々「くにゃっ」とした柔らかな感触のものが多かったように思うが、T400sのキーボードは「シャキッ」とした印象だ。
と言っても、打鍵に力がいるわけでも、底打ち感があるわけでもない。打鍵音も小さい。本連載ではずいぶんたくさんのノートパソコンを採り上げてきたが、こと「タイプの気持ちよさ」でいえば、断然トップといっていい。T400に比べれば、昔のThinkPadに近い印象だ。
タッチパッドも、同様に大きな変更が加えられた部分である。従来、ThinkPadのタッチパッドと左右のパームレスト部には段差が存在したが、T400sのタッチパッドは、他社製品で増えつつある段差のないものになった。その上で、タッチパッドの感触を良くするために採用されたのが、表面に細かい出っぱりをつけた加工だ。見た目にも美しいが、それ以上に、絶妙な指の滑りを実現する上で効果的であり、非常に良いアイデアだと感じた。
もうひとつ、このタッチパッドの良い点は、「マルチタッチの操作性が良い」ことにある。マルチタッチ搭載のノートは増えているが、Windowsノートに限定するならば、実用性が高い製品はそれほど多くない。OS側のサポートがまだ未熟であることに加え、ドライバー側もまだまだ未熟であるためだろう。MacBookが実現しているような「快適なマルチタッチ」が実現されている製品には、筆者はお目にかかったことがない。
だがT400sのマルチタッチは、アップルのそれに比肩しうる操作性を備えている、と言っていい。レノボによるソフト開発の確かさに加え、タッチパッドが広めに作られていること、また滑り具合のいい表面加工がされている、ということも影響しているだろう。
そしてT400sにしかないメリットが、パッドをトラックポイントと併用できる、ということだ。以前より、トラックポイントを使いつつ、スクロールなどにはタッチパッドを使う、という使い方ができたが、これにマルチタッチが加わることで、操作感はさらに良くなる。ほんのちょっとしたことだが、単なるギミックではない快適さが感じられた。
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