今回のテーマは、本連載でも取り上げた「ThinkPad T400s」である。この製品は、レノボが操作性や薄さにこだわって作った高付加価値モデルである。詳しくはレビューをご参照いただきたいが、確かにその操作性は抜群で、本連載で扱った25製品の中でもトップクラスといっていい。
14型としては薄型・軽量、しかも快適というこの製品はいかにして生まれたのだろうか? T400sの開発を担当した、レノボ・ジャパン(株)大和事業所 研究・開発 製品開発統括担当の磯田 肇氏に話を聞いた。
「Tシリーズらしさ」を保って薄型化・軽量化を目指す
T400sは、その名のとおり「ThinkPad T400」の「スモールモデル」といった趣の製品である。企画そのものも、まさにそう言った発想で生まれた、と磯田氏は話す。
磯田「2006年4月に、14型クラスTシリーズの1号機であるT400を発表しましたが、当時からすでに『もっと薄いものを作りたい』という構想がありました。ですので、まず『T400をベースにどこまで薄くできるか』ということを検討していきました。1年くらいは検討しましたね」
「ただ、それは製品になりませんでした。多少なりともできることはあるんですが、製品としてのインパクトがなかったからです」
「その頃、同じ大和研究所で『ThinkPad X300』を開発していました。それならば、X300で行なったことをベースに、スクラッチから開発した方がいいのではないか、と考えたわけです。それが2007年夏くらいのことですね」
そこで気になるのは、14型というサイズ感だ。特に日本市場では、モバイルノートといえばサイズは10~13型が主流。14型は少々大きい、という印象も受ける。
磯田「『13型のTはどうするのか?』といった点についても、侃々諤々の議論が行なわれました。結局はT400sは14.1型になったわけですが、その理由は『X300との違い』と言いますか、『Tを名乗るための定め』の部分にあります」
「まずは、LV(低電圧版)でなく標準電圧のCPUを使うということ。パフォーマンスであまり妥協したくない、ということです。次にドッキングステーションの存在。これは、特に大手企業の案件で必要となるものです。そして最後が交換可能なウルトラ・ベイ」
「それらの要素を入れて、相当な数の検討を行なったのですが、13型にすると、どうも『ランチボックス』感が出てしまう。真四角な感じになってしまい、あまり見栄えがよくなかったんです。薄くすることは重要なのですが、見た目をスマートにすることも重要ですからね。そう考えると、13型ではないということになりました」
「サイズの目標は、T400と同じ幅と奥行きで、厚さはX300に+2.5mm以内でした。実際に、厚さはプラス2.5mm内で実現できました。X300の場合には光学ドライブが7mm厚という、非常に特別なものを使いました。しかしT400sは、数も出てほしいと期待されている商品でしたので、量産の面でも、コストの面でも7mmドライブは使いづらかった」
「そこで、一般的な9.5mm厚ドライブを採用しています。その分で2.5mmは厚くなってしまう。そこは計算通りでしたね。それに対して、奥行きと幅はT400比で、若干ですが大きくなっています。とはいえ、1mm程度ですから、使ったり持ったりしてみても、その差はほとんど感じられないだろうとは思います」
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