コールドスタンバイの検討事項
ホットスタンバイは、使用するプロトコルによってシステム停止時間がほぼ読める(計算できる)。ルータを冗長化するVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)なら数秒、ダイナミックルーティングプロトコルであるOSPF(Open Shortest Path First)なら数十秒、RIP(Routing Information Protocol)なら2分強とプロトコルごとに動作時間が決まっていて、どれも短時間のうちに自動的に切り替わる。すなわち、効果はわかりやすい。あとはそのための費用を支出できるかどうかで採用の可否が決まる。
これに比べて、コールドスタンバイの効果(≒システム停止時間)には変動要因が多い。すなわち、費用をかければシステムの停止時間を短くでき、システム停止に対する許容時間が長ければ費用を抑えることができる。コールドスタンバイで停止時間を最短にするには、
- 予備機を本番機と同数だけ用意し、それぞれ本番機とまったく同じ内容を設定
- 予備機は本番機が設置された拠点に配備
- システムの専門家でない社員でも、ケーブルを差し替えて電源を投入するだけで交換が完了するための事前設定
が必要になる。しかし、実際にこれを実行すると、全体の費用はホットスタンバイとほとんど同じになってしまう。
トータルの費用を削減するには、何よりも予備機の台数を削減して、ルータの購入費用と保守費用を圧縮しなければならない。すなわち、ハードウェア障害が生じたら、そのたびに「予備機に障害機の設定を登録し、設置拠点へ配送する」という仕組みを採用することになるだろう。この際に検討すべき事項は、予備機の保管場所や設定を投入する要員、設定作業を行なう場所などがある。システムの停止時間を許容時間内に収めるために、企業ごとに異なる拠点の地理的要因/人的資源を考慮して、具体的な復旧手順まで決めておかなければならない。
参考までに、全国に100台以上のルータを設置している企業で、3種類のコールドスタンバイの方法を比較検討した資料を引用しよう(表1)。
案1 | 案2 | 案3 | ||
---|---|---|---|---|
目的および概要 | 停止時間を短く | 費用を安く | 完全アウトソーシング | |
実施内容 | 予備機の台数 | 本番機と同数 | 2~3台 | 10台前後 |
予備機の保管場所 | 本番機のある拠点 | 本社のシステム部門 | 保守業者の地域ブロック拠点 | |
予備機の設定作業 | あらかじめシステム部門が投入しておく | 障害発生時にシステム部門が投入する | 障害発生時に保守業者が投入する | |
予備機の移送 | (不要) | バイク便や宅急便を利用する | 保守業者の担当者が持参する | |
予備機の交換作業 | 社員が行なう | 社員が行なう | 保守業者が行なう | |
メリット | ・復旧までの時間が短い | ・費用は安い ・予備機のファームウェア更新や設定内容の変更に柔軟に対応できる | ・社内に専門家が不要 ・予備機のファームウェア更新や設定内容の変更に柔軟に対応できる | |
デメリット | ・予備機のファームウェア更新や設定内容の変更に手間がかかる ・機器コストがかかる | ・本社から遠い拠点ほど復旧までの時間が長い | ・保守業者の拠点から遠い拠点ほど復旧までの時間が長い ・保守業者のサービスレベルによるが、案2よりも業者を動かす費用がかかる |
この表の案1は、先に述べたもっとも費用のかかる方法である。案2は、比較的狭い地域に拠点が集中している会社であればメリットが大きい。本社のシステム部で予備機を保管して、障害の際には
- システム部員が設定を投入
- バイク便で拠点に急送
- 現場の一般の社員が交換する
という方法である。案3は、ITとは無縁の一般企業で、拠点を全都道府県に展開している場合によく使われる。保守契約を結んだベンダーの各地域の保守拠点ごとに予備機を1~2台ずつ保管し、障害の際にはベンダーの保守要員がその保守拠点から障害が発生した拠点まで予備機を持って行き、現地で設定を投入して機器を交換するという方法である。
(次ページ、「オートコンフィグを活用しよう」)

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