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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第45回

世界最強の危険リンク集を作った「常識人」の姿とは?

2009年04月13日 12時30分更新

文● 古田雄介

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UG系の管理人は常識人が大多数なんです

これまでで一番衝撃的だったのは「FLMASKリンク裁判」だったと語る

―― コンテンツ的に、「こんな情報を載せるなんてけしからん!」みたいな声はよく届きますか?

HIDE それが、いまのところはゼロなんですよ。初期の頃は、更新履歴兼日記を掲載していて、日記自体はよく叩かれましたけどね。「映画を見に行きました」と書いたら「いい歳して映画見てんじゃねー!」とか(笑)

 クレーム自体は本当に少ないですね。それは、核心のコンテンツを批判すると、何されるか分からないというイメージがあったのかもしれません。最近、別の管理人さんにメールを送ってお会いしたんですが、サイトのイメージから管理人像が作られるらしく、「アナタにわざわざメールを送りたいと思わなかった」と言われましたから(笑)

メインコンテンツの「A Table Of Contents」にある「人間について考える」コーナーのリンク一覧。こうしたページが全17枚用意されている。10年以上の年月をかけているだけあり、その情報量は圧倒的だ


―― やっぱり「世界最強」ですからね(笑) でも、アングラ系サイトでも常識的な人は多いですよね。

HIDE 昔からアングラ系やっている人はすごく普通の人ばかりですよ。普通に会社で働いているような。なかには仁義の世界の匂いを感じる人もいましたけど。ただ、そういう人もすごく礼儀正しくて、オフ会で会っても威圧的な行為はしません。まあ、それがいい意味で怖いんですけど(笑)


―― ちなみに、これまで法的なトラブルはありましたか?

HIDE 2000年頃に、一回警察から連絡がありましたね。世界最強の危険リンク集の掲示板に、ある女性を誹謗中傷する書き込みがあったということで、ログを見せてほしいという内容でした。サーバー管理している知人の家に電話があったんですけど、当時の警察はネットに関する知識があまりなかったようで、知人が言いくるめて特に何もせずに済みました。だけど、今だったらそうはいかないでしょう。


―― ネットの規制は徐々に厳しくなっていった印象ですか? それとも急?

HIDE 事件がある度に段階的に厳しくなっていきましたね。初期の頃にグレーゾーンとされていたことも、判例によってラインが変化しますから。一番衝撃的だったのは、1997年の「FLMASKリンク裁判」*2 です。違法と判断されたアダルトサイトにリンクを貼っていたことが違法と判断されたんです。相手先が違法だとしても、リンクしただけで有罪というのは驚きましたよ。あの事件以来、アダルト系サイトは相当神経をすり減らしたと思います。

 今では掲示板のちょっとした書き込みが脅迫罪になるのが常識ですもんね。ネット全体のモラル低下があるので仕方ない面もありますけど、やりすぎると言論統制になるから、個人的にはあまり喜ばしくない傾向と思います。

*2 FLMASKリンク裁判……大阪わいせつリンク事件(裁判)とも呼ばれる1997年4月の出来事。画像処理ソフト「FLMASK」の作者Mr.K氏が自身のホームページにおいて、同ソフトで加工した画像などを掲載するアダルト系サイトにリンクを貼った。そのアダルト系サイトがわいせつ図画公然陳列罪で有罪となり、Mr.K氏には「自作ソフトの販売促進のために違法サイトを利用した」という嫌疑がかけられ、大阪地裁で「わいせつ図画公然陳列幇助」の罪で有罪判決を受けた。

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