OSDLジャパンと日本Linux協会が主催する『JLA/OSDLセミナー』が、OSDLジャパンラボのある横浜ビジネスパークで行なわれ、昨年設立されたばかりのOSDLジャパンラボが参加者に公開された。
『JLA/OSDLセミナー』
最初に講演した、東京大学大学院情報理工学研究科コンピュータ科学専攻の石川裕氏は、HPC向けクラスタ用OSである『SCore』を紹介し、OSDLラボを利用したテストの計画を発表した。
東京大学大学院情報理工学研究科コンピュータ科学専攻 石川裕氏。 |
『SCore』は、技術研究組合 新情報処理開発機構が開発し、現在はPCクラスタコンソーシアムが管理するクラスタシステムソフトウェア。ノード間の接続にTCP/IPベースのネットワークを使用するBeowlfクラスタなどと違って、“PM”と呼ばれる、EthernetまたはMirinetネットワーク上で動作するHPCクラスタ専用の通信プロトコルが用意されている。また、各ノードのLinuxシステム上で動作し、クラスタ全体を制御する“SCore-Dグローバルオペレーティングシステム”が用意され、シングルシステムイメージによる効果的なスケジューリングが可能になっている。現在はIA-32Linux向けに公開されている。
『SCore』の今後の計画として、IA-64への対応を進めるとしており、そのためにOSDLラボを利用したテストを実施するつもりであることが発表された。
引き続き、東海大学電子情報学部コミュニケーション工学科の清水尚彦氏が、Linux Super Page Kernel Projectを紹介した。
東海大学電子情報学部コミュニケーション工学科 清水尚彦氏。 |
Linux Super Page Kernelは、Linuxカーネルが扱うことができるページサイズを大きくすることで、ページテーブルキャッシュのミスによるオーバーヘッドを減らし、プログラムの実行速度を速めるというパッチ。データベースなど多くのメモリを要求するアプリケーションをより高速に実行することが可能になるという。現在はAlpha向けのβ版パッチが公開されているが、今後ほかのアーキテクチャへ移植するためにOSDLのテストを利用したいと語った。
最後に、米OSDLラボディレクタであるTimothy D. Witham氏が、OSDLのScalable Test Platform(STP)について説明した。
米OSDLラボディレクタ Timothy D. Witham氏 |
STPは、OSDLが提供するテストスィートだ。OSDLは、Linuxによる電気通信基幹システムや、大規模科学技術計算などのスケーラビリティが必要な用途での利用を促進するために、さまざまなテストプログラムとテスト環境が用意されるという。
テスト用に用意されるマシンは、1、2、4、8、16プロセッサのIA-32/64マシン。STPユーザーは、自分で作成したパッチを適用したカーネルを送付してテストすることができ、結果はメールとWebで通知される。また、テスト自体もオープンソースで開発されており、SourceForgeのSTPプロジェクトに参加して新しいテストの開発を行なうこともできる。
これにより、ユーザーは自分でテスト環境を用意したり、テストのためのカーネルのビルドやソフトウェアのインストールといった負担がなくなり、オープンソースのコミュニティメンバーがスケーラブルなシステムの開発を進めることができるとしている。