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「NTTの不正が認定されたがまだ解決してはいない」――イー・アクセス

2001年04月26日 00時14分更新

文● 編集部 佐々木千之

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イー・アクセス(株)は25日、東京・港区の本社に報道関係者を招き、同社の千本倖生代表取締役社長らが、事業概況と総務省に対して行なったNTTの営業活動に関する意見申出について説明を行なった。

NTT東西はフェアな競争を

イー・アクセスは2日、総務省に対して東日本および西日本電信電話(株)のDSL営業活動の改善を求める意見申出を行なっていた。本日、総務省から意見申出に対する対応としてNTT東西に改善を求める行政指導が文書で行なわれたため、意見申出の内容と総務省の対応に関して千本代表取締役、企画部の庄司勇木部長らが詳しく説明した。

千本倖生代表取締役社長
千本倖生代表取締役社長

同社では2000年にもDSL機材のコロケーション(電話交換局内の設置スペース提供)に関し、NTT東西が明確な理由なく提供エリアを限定したり、回線数やラック寸法などを制限したり、設置可能かどうかの調査に関して遅延行為を行なっているとして是正を求め、公正取引委員会へ申立を行なっている。これについては総務省がコロケーションのルールを整備し、公取委がNTT東西へ勧告や注意を行ない改善されたという。

今回の問題の1つは、“116”を巡るもの。現在、DSLを利用するにはアナログ回線でなければならないため、ISDNユーザーはアナログ回線に切り替える必要がある。また、DSL申し込み確認の際に、申し込む回線の名義人住所も合わせて確認することになっている。これはNTT東西側がイー・アクセスに要求してきたものだという。ところが、この申し込みや確認に、NTT東西の営業部隊である116番が使われることで、不正競争行為問題が起きた。

116を巡る問題点
イー・アクセスが示した、116を巡る問題点

同社がユーザーから連絡を受けた具体的な事例として以下のような例が紹介された。

  • イー・アクセスのDSLサービスのため、ISDNからアナログ回線への変更を116に依頼したところ「当社と直接契約いただいたかた以外のかたは(工事が)後回しになる」と返答。
  • DSLが利用できるかどうかのチェック(NTTが行なっている)で、返答がありユーザーが116に問い合わせると「フレッツ・ADSLへ申し込めば可能」と返答。
  • ISDNからアナログ回線への工事を116に依頼したところ「フレッツ・ADSLだと工事日はすぐ決まるが、他事業者は後回し」と返答。

同社は、相互接続事業者の営業情報を、営業部隊である116と分離する仕組み(ファイアーウォール)の確立や、NTT東西以外のDSLサービス開通時におけるNTT東西の受け付け体制の改善を求めた。総務省は、本日の行政指導の報道発表に先んじて千本社長らを呼び、対応について説明を行なったという。総務省が申出の通りの事実確認ができたとして、ファイアーウォールの確立、DSLサービス申し込み時の名義人住所欄の削除を指導したとしている。

意見申出のもう1点はダークファイバー(※1)の利用に関してのNTT東西とイー・アクセスの交渉における問題。同社はDSLサービスを迅速に展開するため、DSL機材を設置する電話交換局の接続は自前の回線を新しく引くのでなく、NTT東西のダークファイバーを利用する方針で事業を行なっている。

※1 敷設されていながら利用されていない(光っていない)光ファイバーを指す。ここで問題とされたのは電話交換局同士を結んでいるダークファイバー。

ここでは、利用可能かどうかの調査依頼を出してから返答までに4ヵ月もかかり、その間に理由の提示がなく、かつ不必要と思われる申し込みメールの書式変更が行なわれたとしている。書式変更に関しては変更案がたびたび示されるばかりで実務が進まないため、旧書式で一方的に調査申し込みを提出したという。そのほか、1つの問い合わせに付随すると思われる問い合わせに対して、新たな調査依頼として書類を提出するような官僚的対応を受けたとし、遅延行為があったのではないかとしている。

また、当初東京23区にはふんだんに芯線(銅線)があるという話で、それに基づいて事業計画を立てたところ、最終的に2、3割は接続ができないという回答を受けたという。これは、イー・アクセスが先に申し込んでいたにもかかわらず、ほかのDSL業者に芯線を提供したり、空いているにもかかわらずNTTが将来のためにとっておくことにしたのではないかと考えざるを得ないとしている。

これについても総務省は、調査によってやはり事実確認ができたとして、NTT東西に対して光ファイバー接続の際の性格かつ十分な情報の開示、非現用設備がある場合の即応、または即応不可の場合の可能時期および芯線情報開示、標準的処理期間の設定を指導したという。特にイー・アクセスがサービス提供を希望しながら、芯線がないとして断られた新宿局、西新宿局について、調査で二百数十の芯線が見つかったことが、イー・アクセスに報告されたという。

残るNTT問題
いまだに残っているNTT問題

千本社長によると、NTT東西はイー・アクセスの意見申出後、今回の行政指導に先だって問題点を大幅に改善してきているが、なお不合理な手続きや不明朗な価格設定が残っており、今回の指導がNTT東西の手続きや情報を開示し、フェアな競争ができるようになるための先鞭をつけたものになればと考えているという。

2001年末に20万人を見込む

NTT問題の説明に先立って、千本社長とエリック・ガン(Eric Gan)代表取締役兼最高財務責任者から、事業説明が行なわれた。それによると、イー・アクセスのDSLサービスの累計申込者数は3月30日現在で3万500回線。うち開通数1万6908回線で、DSL事業者中トップの実績であるという。2001年末の加入者数は、NTT東西による“問題”が発生しなければ20万人を見込んでいるとしている。

サービスエリアについては「現在東京、大阪、名古屋の大都市圏しかサービスしていないが、パートナーであるISPからは早く全国展開をとの声があるのは事実。ただ、現時点ではまだ全国に展開してもとても事業にならない。マーケットの立ち上がりとニーズを見ながら決定していきたい」(小畑至弘取締役兼最高技術責任者)という。

イー・アクセスのDSL回線数の推移
イー・アクセスのDSL回線数の推移

記者からは、フレッツ・ADSLやほかのDSL事業者のサービスとどうやって差別化を図るのかという質問が出たが、これには「端末の自由化について作業を行なっており、ここ1ヵ月で売り切りサービスが可能になると思う(現在はレンタルのみ)。夏にはイー・アクセスのコンテンツサービスに対応した端末も登場する」(小畑氏)などと答えた。「経費の圧縮についても非常に細かく行なっており、NTT東西が企業体力に任せた排他的価格などを仕掛けてこず、フェアな競争であれば十分勝ち目はある」(千本社長)という。

イー・アクセスの'99年度(4~翌3月)、2000年度の売り上げと現預金残高
イー・アクセスの'99年度(4~翌3月)、2000年度の売り上げと現預金残高

FTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)に関しては、「今の銅線のように6000万(回線)ものファイバーを末端まで引くには、数兆円の投資がいる。すぐに光になって100Mbpsになるなどとは、NTTの経営上からも信じられない。10年後はともかく、2、3年ですぐにFTTHになるとは考えていない」(千本社長)と延べ、当面はDSLサービス中心のサービス展開を行なうとした。

千本社長は電電公社時代、光ファイバー展開プロジェクトのリーダーを務めるなどしており、光ファイバー事業については詳しい。また(株)DDIやDDIポケット(株)の起業に関わるなど、企業経営についても専門家で、千本社長の言葉には説得力がある。NTT東西も民間企業としての色が強まってきており、これまでのような不透明性は、株主に対する情報開示の点からも許されなくなるだろう。NTT東西が大資本をバックに強引にFTTHを進めれば、ほかの通信事業者などひとたまりもない、という意見もあることは事実だが、国の内外からフェアであることを求められることは必至だ。DSLや光ファイバーを巡る問題はまだ今後も続きそうで、NTT東西やイー・アクセスの動きからは当分目が離せない。

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