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SaaS Worldで見えた!日本がSaaSを推進する理由

SaaS導入で労働生産性は15%上がる

2008年12月10日 20時00分更新

文● 大谷イビサ/ネットワークマガジン編集部

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12月10・11日の2日間、東京国際フォーラムにおいて、IDGジャパン主催の「SaaS World/Tokyo 2008」(以下、SaaS World)が開催された。基調講演では総務省の西浦 智幸氏が、SaaSの重要性と導入推進策について講演した。

ブロードバンド大国なのに IT活用が進まないのは?

 SaaS Worldは、講演と展示によりサービスやビジネスモデルを啓蒙するSaaS専門のイベントで、今回が3回目となっている。

基調講演に立った総務省の情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐の西浦 智幸氏

基調講演に立った総務省の情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐の西浦 智幸氏

 初日の基調講演に立った総務省の情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐の西浦 智幸氏は、原油高・円高による経済の低迷に加え、人口の減少という課題を抱えた現在の日本においては、早急に新しい経済成長のトレンドを見付ける必要性があると訴える。ここで重要になる1人あたりの生産性が、実は他の先進国に比べて大きく劣っている現状に総務省は着目した。

ブロードバンド大国であるにもかかわらず、労働生産性が横ばいという現状

ブロードバンド大国であるにもかかわらず、労働生産性が横ばいという現状

 「労働生産性が横ばいの我が国に対して、米国はICTを活用することで、一貫して成長を続けている。我が国は屈指のブロードバンド大国であるにもかかわらず、ICTが十分活用されていないのが現状」(西浦氏)というのが総務省の分析だ。

 そこで注目するのが、やはり「SaaS」。「情報化投資を見てみると、通信関連は実は約1割で、残りの9割がソフトウェアへの投資。ヒト、カネ、モノのない中小企業で、こうしたソフトウェアを安価なブロードバンド環境によってサービスとして利用できるSaaSは、『我が国ならではの生産性向上のブレイクスルー』と考えている」(西浦氏)とSaaSの有効性に大きく注目している。

 実際、2007年の総務省の調査によると、資本金5000万円以下の中小企業ではSaaS・ASPの導入により、約15パーセントの労働生産性の向上が見られたという調査も明らかにした。

企業ディレクトリや税制措置も検討

 こうした分析から、総務省はASPICやマルチメディア振興センターなどとともに積極的にSaaSの導入を推進している。具体的には、調査の結果、明らかに不足しているSaaSへの知名度向上や、安全性や信頼性を担保するSaaSベンダーの認定制度などの施策を導入したという。

統一されたIDでシングルサインオンを実現する企業ディレクトリの構想

統一されたIDでシングルサインオンを実現する企業ディレクトリの構想

 今後の施策としては、企業ごとにユニークな「公開コード」を提供することでシングルサインオンを容易にする「企業ディレクトリ」や、企業活動をネットワーク上で可視化するための「場所コード」、さらに税制面での優遇措置まで検討。このうち、いくつかはユビキタス特区で実証実験をしていくことになるとのことだ。特に「企業コード」が普及すると、公的なIDを用いて、複数のSaaSをログインなしに串刺しで使えるようになるので、プラットフォームの違いを吸収するメリットが生まれる。

 こうしたいくつもの施策により、2012年にはSaaSの市場を2兆円規模に育てていくという目標を掲げ、西浦氏は講演を終えた。

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