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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第45回

なぜヒトはケータイでカラオケをするのか?

2008年10月30日 19時30分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ヒトカラでコミュニケーション、ヒトカラで広告

 実はセガのヒトカラは、ソーシャルネットワーキングの機能が付加されているカラオケサービスなのである。

「ヒトカラには『運命のヒトカラ』というサービスがあります。同じ曲を24時間以内に歌った人と友達になれる機能です。また公認アーティストのSNSコミュニティも人気があります。アーティストと直接的なやりとりができたり、カラオケのコツを教えてもらうこともできます」(三澤氏)

壁紙部分を広告にすることで、歌詞を見ながら歌うユーザーの目に入る。森永製菓の「プチッとハイチュウ」の販促キャンペーンなどを実施し、認知向上につながったそうだ

 最終的なコミュニケーションの出口として、バンドを組んでもらってセガ公認アーティストになってもらうといったことまで考えているそうだ。手元のケータイで歌を歌っていたらいつの間にかバンド仲間ができて、スタジオでレコーディングをしている。そんなサクセスストーリーが生まれるかもしれない。

 さらに、ユーザー数を増やすことで、コミュニケーションツールとしてのカラオケだけでなく、広告媒体としての価値も高めつつある。

「カラオケアプリの背景画面は広告枠になっています。ヒトカラのサイトでもキャンペーンや特集コーナーを設けて、歌うごとにたまるポイント『カラット』でインセンティブを付けています。現在アドバゲームとして、遊ぶことがPRにつながる手法が増えてきましたが、歌うことによるPRという手法です」(三澤氏)

 確かにコマーシャルで流れている音楽をいつの間にか覚えていたり、耳に残るサウンドロゴはいくつか空で歌うこともできる。音楽と製品やサービスの結びつきを強くプロモーションすれば、歌うことによるPRも実現できる。これは好きな曲をすぐに歌えるケータイ上ならではの手法と言えるだろう。



未来のケータイカラオケ像


 先日開催されたCEATEC JAPAN 2008でプロジェクターケータイが展示されたり、複数のケータイで合奏をするYAMAHA Mobile Orchestraのステージが披露されていた。ケータイは非常にパーソナルな情報通信機器であったはずだが、1人ではなく複数の人で楽しむ端末への進化が模索されているのが、昨今の傾向ではないだろうか。

取材中に実際にヒトカラを披露してくれたセガトイズの松本氏。カラオケが好きでもなかなか歌いにいけない人たちに喜ばれるだろう

 飲み屋から自分の部屋にまでパーソナル化されたカラオケも、再び複数の人でシェアするエンターテインメントへの回帰が待っているような気がする。ケータイがシェア型に移行するときに、カラオケがキラーコンテンツの1つになるのは想像に難くない。

 LTEやWiMAXといった次世代高速データ通信の環境が整ってきたときに、カラオケの高音質化や、ライブビデオに合わせて歌えるカラオケといったリッチな経験もできるようになるだろう。あるいは複数の人と映像をつないでセッションをしたり、全国1位のカラオケの達人にハモってもらうというサービスも面白い。

 いずれにしても、カラオケは空間に酔うエンターテインメントであることは変わらない。ケータイカラオケによって、その空間をリアルだけでなく、ヴァーチャルに作ることも実現する未来が持っていると思うのだ。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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