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山谷剛史の「中国IT小話」 第33回

日本は中国人の悪いことばかり報道する、は本当か

2008年10月10日 09時00分更新

文● 山谷剛史

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コピペ報道が横行する中で


 外国人(中国人)でもインターネットを通して容易に読める日本のネットメディアも「中国のことを悪く言ってばかりだ」と知日派の中国人は指摘する。

 確かに日本のネットメディアや週刊誌は、日本人にとっては意外な(時として中国にとっては都合の悪い)ニュースを色々と載せている。

中国人は日本のニュースサイトを見ている

 では中国はどうだろう? 中国政府系のメディア「新華社」、中国共産党系のメディア「人民日報」といったメディアがあるが、それだけを見るネチズンは超少数派だ。多くはポータルサイトの「新浪」(Sina)なり「捜狐」(SOHU)なり「網易」(NetEase)なりの中国政府の許可は必要だけど民営メディアを利用している。

 前回の記事でも書いたが、これらのメディアが配信する記事で、編集局員自身が書いた記事はほとんどない。多くが意外性のあるPVが稼げそうなニュースを勝手に他所のメディアから拝借している。

新華網でも、他所のニュースを利用する

 なので、中国人読者の日本のイメージ(たとえばAVのイメージからくる日本の女子学生の話とか)にあった記事ばかりが配信され、中国人読者にとっての日本の印象にバイアスがかかる(日本だけでなく全ての物事にいえるが)。中国のネットメディアには、さまざまなニュースソースがあり、いいニュースも悪いニュースも、事実もゴシップも玉石混交で配信されている。そうした環境の下にいる人々が、一方的に「日本のメディアは中国の印象を悪くしている」というのはダブルスタンダードが発動しているのではないか。



メディアのバイアスという文化への慣れ


 日本であれば、記事内容と、その記事を執筆したメディアの双方を加味して文章を読むことができる(「ただしソースはXX」と書けば、記事本来の視点に補正がかかるわけだ)。が、中国では丸ごとコピーするので、メディアごとに記事の色が出ない。そうした中国の環境で育ってきた中国人は、いくら日本語が流暢であっても、背景を理解できない。

 簡単に言うと、極端な日本語の反中・嫌中の記事を見たときに「ただしソースはXX」補正ができないのである。その結果「日本のメディアは反中だ、よくない」という結論に至ってしまうのは自然なことだろう。

 「中国の悪い面ばかり報道する」とは言われるが、たとえば中国限定、ないし中国をよく扱う旅行モノの番組とか、中国をテーマにしたバラエティー番組のクイズコーナーなど、外国人をひきつける中国のいい面もテレビでは放送されている。また、中国の紀行や歴史を扱った雑誌や漫画やドラマもある。

 それでもなお、「中国の悪い面ばかり報道する」という印象が強いのは、日本のニュースのあり方に対して、知らず知らずのうちに「意外性」を感じているからではないか。それぞれが当たり前と思っている報道のスタイルを理解し合わない限り、この問題を解決することは難しい。例えば日本からワイドショーをなくすのは非現実的だ。来日経験のある知日派の中国人は、ワイドショーという事件の解釈方法があるということを受け入れるしかない気がする

山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)


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