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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第6回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

永遠のベータ

2008年06月29日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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 数年前、ウェブサイトを見ていると「工事中」と書いたページをよく目にしたものだ。表現というものは完成してから公開するのが当たり前だったから、コンテンツとして未完成の状態をウェブ世間にさらす申し訳なさから「工事中」と表記したのだろう。

 考えてみれば、どんなウェブサイトも工事中なのは当たり前。オンラインの情報は本質的に、常に更新される可能性を含んでいるからだ。つまり、ウェブ上の表現に「完成」はない。ウェブ全体が、永遠にベータなのだ。

 そしてブログのスタイルが一般化するにつれて、「工事中」は消えていった。ブログは時間をかけて大規模な「作品」を練り上げる必要はない。思い立ったらその都度、その日その時の刹那を表現すれば、ウェブサイトとしての形が整い、その時点における「完成」を堂々と公開できる。人々がブログを気軽に始めて、手軽に書き続けられる一因がそこにある。もしかしたらこのほうが、人間の生き様に合っているのかもしれない。

 生々流転。万物流転。変化を続けることこそ発展につながる。インターネットを生んだ米国の言語表現からも、変化し続けることを是とする文化が読み取れる。たとえば、大学の講義科目のことは「course」という。仕事やプロジェクトの最終目標のことは「goal」だ。トイレは「restroom」、そして人が亡くなることは「pass away」という。人は常に動き、変化し続ける、ということを大前提にして社会が展開しているのだ。

 人は死ぬまで成長を続ける、永遠のベータなのである。


筆者紹介─塩澤一洋


著者近影

「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」がモットーの成蹊大学法学部教授。専門は民法や著作権法などの法律学。表現を追求する過程でMacと出会い、六法全書とともに欠かせぬツールに。2年間、アップルのお膝元であるシリコンバレーに滞在。アップルを生で感じた経験などを生かして、現在の「大公開時代」を説く。



(MacPeople 2006年12月号より転載)


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