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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第4回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

プレゼンのカクシン

2008年06月15日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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人生はプレゼンの連続 マネから磨く自分のスタイル


01

 プレゼンテーション(プレゼン)は、「一対多」のコミュニケーションだ。自分が情報を発信し、大勢の人に伝える。相手が一人の場合もあるけれど、たいがい聴衆は複数だ。目の前の人々にメッセージを的確に伝え、納得へと導く。ビジネスでは必須の技術だし、それ以外にもプレゼンを必要とする場面は多い。そもそも人は、社会の中で自分をアピールしながら生きている。人生はプレゼンの連続といっても過言ではない。さまざまなプレゼンを、スマートにキメることができたらカッコいい。どうしたらプレゼン上手になれるだろう。

 プレゼンの目的はメッセージの伝達だ。だからプレゼンの準備は、自分のメッセージを明確にすることから始まる。まずは伝えたいメッセージを3秒で表現するのだ。短い言葉で表現されるメッセージこそ、プレゼンの核心となる。それさえできれば、あとはそのメッセージを効果的に伝える手順や手法を使って、3秒を3分に、3分を30分に膨らませていけばいい。メッセージが明快であれば、プレゼンの長さにかかわらず、確信を持ってそれを伝えることができる。相手に的確に伝わることになる。

 たとえば民法の講義で私が伝えているメッセージは、「民法って超面白い!!」だ。講義は、民法の面白さを伝えるプレゼンなのだ。大教室に集まった300人以上の受講者が、しーんと講義に聞き入る。学生たちに私語などまったくない。メッセージが確実に届けば、おのずと講義の中身に引き込まれていくからだ。

 メッセージが明確になったら、次はその伝え方を考える。日本では一般に、米国のビジネスマンはプレゼンが上手だと思われている。しかし実際のところ、その陰には訓練の積み重ねがある。前回お伝えした「show and tell」はその典型だ(参考記事)。友人たちの前で自分の大切なモノについて語る。米国の子どもたちはこれを繰り返しながら、人前で話す術を身に付けていくのだ。誰でも練習を繰り返せば、プレゼン上手になれる。

 プレゼンに限らず、何かのテクニックを会得する最良の方法は、モノマネだ。その道の達人が実際に行っている姿を、できるだけたくさん観察して特徴をつかむ。それを自分もマネしてやってみる。試行錯誤しながら繰り返す。うまい人に見てもらい、アドバイスを受ける。人前で実践して、フィードバックを受ける。失敗を繰り返しながら次第に上達していく。手本を何度もよく見てマネをし、練習と実践と失敗を積み重ねることが大切だ。

 そうはいっても、達人がプレゼンする姿を見る機会は意外と少ない。しかし幸い、Macユーザーにはステキなお手本がいる。スティーブ・ジョブズだ。アップルが世の中に送り出す新製品や新サービスの多くは、ジョブズのプレゼンによって紹介される。彼が舞台に立つエキスポの基調講演の模様は、オンラインで配信されていることが多い。目線、手の動き、間のとりかた……。よく観察してマネしてみよう。ただし、ジョブズ・スタイルはあくまでもお手本のひとつだ。聴衆に対して口頭で何かを伝えるプロ、例えば漫才師とか落語家とか、バラエティー番組のメインキャスターなどの仕事は、すべて参考になる。

 いろいろな手本を観察してマネを繰り返すと、テクニックが蓄積される。他人のテクニックが自分のものになっていくのだ。そして、蓄積が進むと自分らしさがにじみ出てきて、いつしか自分のスタイルが確立してくる。ジョブズのプレゼンが魅力的なのは、ジョブズらしさに満ちているからだ。自分のキャラクターをうまく使って、自分らしいプレゼンができるようになったらスバラシイ。「自分スタイル」を磨き上げていくのだ。


(次ページに続く)

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