塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第14回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
DRMのない音楽配信
2008年08月24日 15時00分更新
性悪説から性善説へ 社会の熟度が試される

'07年5月30日、「iTunes Plus」が始まった。256kbpsのAAC形式でエンコーディングされており、DRMが付加されていない楽曲ファイルを買える。従来iTunes Storeで販売されていたのは128kbpsのDRM付き。それがPlusでは、ビットレートが2倍になって音質が向上したうえに、DRMフリーなので使い勝手もいいのだ。
さっそく、今までiTunes Storeで買った楽曲のうち、アルバム1枚10曲をPlusにアップグレードした。アイリッシュ・フィドルの名手、アラスデア・フレイザーのアルバム「The Road North」である。
古いファイルを消去せずダウンロードしたので、iTunesのライブラリには以前に買った128kbpsの「保護されたAACオーディオファイル」と今回買った256kbpsの「購入したAACオーディオファイル」が交互に20曲並んだ。これで聴き比べができる。
まず、1曲目から順に新旧のファイルを聴いてみた。使ったのはソニー(株)のモニターヘッドホン「MDR75 06」である。確かに音が違う。Plusから買ったファイルのほうが、音に迫力とツヤがあり、粒立ちがいい。
特に各音のアタックがはっきりしているし、弦をこするノイズも自然に聴こえる。また低音部の音が豊かに響き、音程感も明瞭だ。さらに、高音成分がたくさん含まれるハーモニックスもきれい。総じてダイナミックで、演奏者が近くにいると感じられる。そんな印象だ。
聞くところによるとiTunes Storeで売られている楽曲ファイルは、専門のレコーディングエンジニアがそれぞれの圧縮率に最適化しながらCDとは別に制作したものらしい。一般人がCDからiTunesに取り込み自動的に圧縮したものとはまったく質が違うとのこと。納得である。
(次ページに続く)

この連載の記事
- 最終回 公開の価値
- 第23回 教養のチカラ
- 第22回 失敗の創造性
- 第21回 肯定力
- 第20回 自分と相手のエンジョイ
- 第19回 創造的Leopard
- 第18回 著作権法をポジティブに
- 第17回 写真は未来を写す
- 第16回 デジタルの時間軸
- 第15回 音楽・写楽・楽校・楽問
- この連載の一覧へ