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日本の宇宙開発最前線 第6回

「かぐや」も「きずな」もがんばっています!

アポロ疑惑に終止符? 日本の人工衛星、大活躍!

2008年05月26日 13時49分更新

文● 小黒直昭

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画像公開は論争終結のため?

 ところで、なんでJAXAはこんな画像を公開したのでしょうか。もちろん、ニュースになって知名度を上げたいという思惑はあるのでしょう。ただ、投入した観測機器と、その観測結果を基にした三次元地形図が、本当に正確かどうかを確認するために、既知の写真と比較する必要があった、というのが、本来の撮影の目的のようです。つまり、場所が場所だけに、本当に正しいかどうか検証するためのデータ(写真)が、アポロのときのものしかなかった、というのが、本当のところ。別に、論争を終わらせるために撮影したわけじゃないんです、多分。

 ちなみに、今回の画像に使われたのは、かぐやに搭載された3つの観測カメラのうち、「地形カメラ(TC:Terrain Camera)」と呼ばれる可視光域の観測機器。最大の特徴は、2つのカメラが、かぐやの進行方向前方30キロと、後方30キロを同時にえんえんと撮影して記録する点。ふつうに直上から撮影したのと異なり、TCでは地形の斜面も捉えられるし、2つの画像から立体画像を生成すれば、月の三次元地形図が作成できるという特徴を持ちます。

かぐやTCのフライトモデルとその走査イメージ。提供:JAXA

 ということで、今回公開された後者の画像は、こうして作成された地形図から、アポロ15号で撮影されたのと同じ観測地点から見た風景を再現したもの、といえます。ただ、惜しむらくは、TCの解像度は、1ピクセルあたり10メートル。なので、アポロの風景写真には写っていた月面車や月面の細部は当然写っていないのです。

 ちなみに、残る2つのカメラでは、可視近赤外域での撮影で、月の地質と、月表面の鉱物分布を探査します。これと三次元画像を組み合わせた地形図を作製することが、かぐやのひとつの重要なミッションとなっています。

「きずな」だってがんばってます

きぼう

きずなのイメージ。提供:JAXA

 一方、あまりニュースにならなかった世界一もあります。それが、5月12日に発表された、超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」による、1.2Gbpsでのデータ通信実験の成功で、衛星通信としては世界最高速度だといいます。

通信速度解説

きずなに搭載された「マルチビームアンテナ」により、地上局との1.2Gbpsでの通信に成功。この速度は実用衛星の10Mbps(JSAT/下り)を大きく上回る。提供:JAXA

 もともときずなは、2001年に政府の「e-Japan重点計画」に端を発した実験衛星で、e-Japanという言葉自体が死語になったいま、ニュースにならないのはあたりまえという気もしなくはないですが、要は、「あまねく人にブロードバンドを」ということで、ブロードバンドが使えない山間部や離島での衛星によるインターネットアクセスと、都市部と遠隔部のイントラネットを実現するために、その実験機として計画されました。

(次のページへ続く)

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