36年前に打ち上げられた人工衛星「ISEE-3」をクラウドファンディングで救う試みが4月27日にスタートした。
ISEE-3はNASA(アメリカ航空宇宙局)やESA(ヨーロッパ宇宙機関)が運用していた探査機で、1978年8月12日に打ち上げられ、ハロー軌道(いわゆるラグランジェポイントを通る軌道)に乗り、同型機ISEE-1/2とともに太陽風の観測、彗星観測を行ったのち、1997年に運用を終了した。
ディープスリープ状態にあったが、長い周回を経て地球に接近しつつあり、NASAが状態を確認したところシステムは良好であり推進剤の残量も確認できた。このため新たな軌道に投入して彗星探索に使おうという計画が持ち上がったが、地上局の機材は老朽化のため廃棄されており運用することができず、また新たに通信機材を作る予算もないという状態だった。
クラウドファンディング「ISEE-3 Reboot Project」は、エンジニアとプログラマ、科学者を動員し、ISEE-3を運用するためのシステムを再構築すること。人的資源はボランティアで参加してくれる人がいるが、30年前のドキュメントを読み込んで通信用機材をコンピュータ上にシミュレート、実際に通信できるシステムを作るにはそれなりにハードウェア資源を必要とする。資金獲得に成功してシステムを再構築できればNASA保有の電波望遠鏡により再起動信号を送り、運用が可能となる。
なお、計画を進めているのはSpace CollegeおよびSkycorpで、アポロ計画の記録として残されている膨大なアナログ信号データを現代のコンピュータで解析処理し、これまで写真として発表されていない(取り出せなかった)画像を拾い出すLOIRP(Lunar Orbiter Image Recovery Project)という計画も進めている。
ファンドの目標額は12万5000ドルで達成期限まで20日。スタートからわずか1日強で5万ドルを超えており順調のように見えるが、プロジェクトは緊急性を要している。月をスイングバイして新たな軌道に投入するには今年6月中旬までの再起動が必要とされているためだ。
クラウドファンディングでの資金提供者は、10ドル以上で公式ページに名前が掲載、50ドルで感謝状、500ドルでミッションパッチ、750ドルで3Dプリンタで作成したISEE-3モデルといった特典がある。36年前の宇宙機をクラウドファンディングで復活。実際に再起動して運用できるどうかも未定なのが宇宙計画の難しいところだが、ともかく進捗を見守りたい。
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