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日本の宇宙開発最前線 第6回

「かぐや」も「きずな」もがんばっています!

アポロ疑惑に終止符? 日本の人工衛星、大活躍!

2008年05月26日 13時49分更新

文● 小黒直昭

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アンテナについて少々

 アクティブフェーズドアレイアンテナというのは、イージス艦なんかについている平べったい「フェーズドアレイレーダー」の、通信用アンテナ版といったところ。昔のレーダーというと、怪獣映画などで見かけるように、クルクル回転するパラボラアンテナから電波ビームを出して、360度方向の飛行機などを探知していたのですが、ファイズドアレイ方式では、平面のアンテナに無数の小さい素子を配置。各素子から出る電波が押し合いへし合いし、結果的に電波の飛んでく方向が1つになるようになっていて、その方向の制御は、電子的に、各素子が出す電波の位相を細かくコントロールすることで行ないます。つまり、フェーズドアレイレーダーの場合、アンテナを回さなくても、アンテナ正面の上下左右方向を、電子制御で走査でき、走査の速度も、アンテナの回転速度という物理的制約によらないというメリットがあります。

アクティブフェーズドアレイアンテナ

きずなに搭載された、送信用(上)と受信用(下)のアクティブフェーズドアレイアンテナ。並んだ128素子の角錐ホーンで、電波を送受する。提供:JAXA

 レーダーの場合、目的は敵航空機などの探知ですが、きずなに搭載されたアクティブフェーズドアレイアンテナは、あらかじめ場所が設定された以外の相手との通信で、その力を発揮します。たとえば、一般のパラボラアンテナでは、設定された相手以外と通信しようとすると、それこそレーダーのように回転させるか、または衛星自体を回転させて、アンテナを相手に向ける必要があります。そうすると、衛星自体がぐらついたり、制御のために燃料を消費してしまいます。しかし、フェーズドアレイアンテナの場合は、電子制御で通信方向を変えられるので、そうした心配もありません。

 きずなのアクティブフェーズドアレイアンテナでは、2ミリ秒で電子的にビームの方向を変更することが可能で、日本の静止衛星軌道上から、地球のほぼ3分の1のエリアを通信範囲としています。これにより、短時間に不特定の位置の相手と次々と通信を切り替えたり、また、アジアなど広い地域のどこで起こるかわからない災害時に、相手との安定した通信を確保することが期待できるのです。

もっと「技術」もPRを!

 かぐやも、きずなも、結局のところ、今すぐ僕らの暮らしに役立つものではありません。学術衛星であったり、実験機なので当たり前の話なのですが、幸いにしてかぐやはハイビジョンで地球の出を撮影し、宇宙のロマンということで注目を集めました。しかし、こと、きずなのように、今すぐブロードバンドが日本中に!とか、分かりやすいキャッチフレーズで予算を取ろうとするやりかたはあまり好きになれません。期待していた人はガッカリでしょう。

 縦割り行政なので、予算の分捕りあいも仕方のない側面もあるのでしょう(※)。けれど、地味ながら着実に実績を上げることととか、その先端性や必要性を粘り強く国民に説明することが、今後は予算獲得の上でも必用になってくるはずです。少なくとも、この記事を読んでいる人にはアピールするはずです。多分。

低予算化と縦割り行政打破のために、ひまわりの後継機と航空管制衛星を合体させた「運輸多目的衛星1号」は、99年、打ち上げに失敗。縦割りを堅持していれば、どっちかの打ち上げは成功し、結果的にムダな出費を抑えられたのではとの批判もあびました。

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