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日本の宇宙開発最前線 第6回

「かぐや」も「きずな」もがんばっています!

アポロ疑惑に終止符? 日本の人工衛星、大活躍!

2008年05月26日 13時49分更新

文● 小黒直昭

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衛星を使ったインターネットは幻か

 実は90年代には、衛星を使ったインターネット計画が世界中で立ち上がっていて、2001年というと、そのほとんどの計画がすでに頓挫しかかっていた時代です。実際、ビル・ゲイツ氏が鳴り物の入りで立ち上げたインターネット通信会社・テレデシック社も、実験衛星こそ打ち上げたものの、2002年には計画を事実上放棄しています。にも関わらず、掛け声で突き進んでしまうのが、日本の悪いところ。2005年にはきずなを打ち上げ、2007年にはその実験結果を受けて商用機を打ち上げることを計画。そのため、民間の株式会社超高速衛星インターネットサービス企画という会社が、2003年に設立されています。

 結局、きずなの打ち上げは今年になって実現し、当初計画の実験がようやく3年遅れで実現した、というのが今回のトピックなわけです。ちなみに、商業衛星の打ち上げのメドは立っていないようです。

 かように、現時点では、衛星によるインターネットアクセスのデジタルデバイド解消は見えていないのですが、今回、きずなが1.2Gbps通信に使った「マルチビームアンテナ」や、きずなの持つ、もうひとつの「アクティブフェーズドアレイアンテナ」などは、なかなか興味深いものです。

きずなの広域走査アンテナ

広域走査アンテナAPAA、国内用アンテナMBA6。提供:JAXA

 まず、2つ搭載されたマルチビームアンテナですが、ひとつは通信を9つのビームに分割して、日本国内、もう一方のアンテナは、マニラ、バンコク、シンガポールなど10カ国と、固定した通信を可能にしています。これには、特殊なマルチポートアンプというものが搭載されていて、たとえば、雨で通信事情が悪化した地域のビームだけ送信電力を上げることで、通信を安定させたり、逆に需要の低い地域のビームの電力を下げ、衛星の消費電力を抑えることができます。

 また、きずなにはATMというルータの親玉みたいな交換機も搭載されていて、たとえば、東京からマニラ宛てに送ったデータは、きずなから地上にいっせいに送信されるのではなく、マニラ行きのビームにだけ乗せられる仕組みに。これによって、ほかのビームの通信帯域が下がることがないようになっています。

(次のページへ続く)

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