「Cyber-shot」という名前の意味
ケータイカメラが創り出してきた新しい価値について考えてから、今回のお題であるSO905iCSに立ち戻ってみると、最新モデルは既に「ケータイにカメラが付いた」というモノではなくなっていることが感じられる。その先頭を切って走るのが、Cyber-shotケータイなのだ。
「日本初のCyber-shotケータイなので、その名前を名乗れるカメラの性能とデザインに仕上げたかった」とは、須藤さんの言葉。単に高画素のカメラをケータイに搭載すれば、すぐにCyber-shotケータイと呼べるわけではないという。
カメラ機能へのこだわりは、Cyber-shotでおなじみのスライドオープンでレンズを露出させるとすぐに撮影ができる簡単さから始まる。「ボタンを押して機能を呼び出してでは、カメラとしてスマートではない」という須藤さんの言葉には、これはケータイではなくCyber-shotなのだ、という気合いが感じられる。
Cyber-shotと同じ横方向で操作できるように、ボタンなどの配置にもこだわった。ケータイでは珍しい3cmまで寄れる接写機能や、笑顔を認識してシャッターをきる「スマイルシャッター」なども搭載し、カメラとして使っても妥協がないような仕上がりだ。
女性に嬉しい「結婚式ケータイ」
また、画質の向上も利用スタイルに大きく影響する。
先日参加した研究室のクリスマスパーティーで、先生の顔をデザインしたケーキが用意された。すると、その場にいた全員がケーキを取り囲んで、写真をパシャパシャ撮っていたのだが、結局、あとでメーリングリストにデジカメ写真のアーカイブが流れた。
やや暗い、雰囲気のある会場の照明の中では、フォトライトを使っても、既存のケータイではなかなかきれいな画質を得ることができなかったのだ。一方、デジカメの場合は、ISO感度などを調節して、フラッシュなしでもある程度きれいな写真が得られる。自分の手元には(暗い)写真があるけれど、やっぱりデジカメで撮ったきれいな写真が欲しい、ということになったわけだ。
高画素化されてきてもなお、画質に対してのある種の信頼性を獲得できていなかったケータイカメラのポジショニングが浮き彫りになるエピソードだ。
Cyber-shotケータイは、この画質に対するイメージへの挑戦でもある。デジカメと同じ画質がケータイで得られるなら、カメラを別に持って行ったり、あとからデジカメの写真を送ってもらったりすることがなくなると容易に想像できる。
NTTドコモの須藤さんは、Cyber-shotケータイについて、「結婚式に行く女性が、カバンにこれ1台を入れるだけで済むようになれば、スマートじゃないですか」と言う。確かに、結婚式での女性の持ち物を見ると、小さなパーティーバッグに、おサイフ、ケータイ、デジカメを詰め込んでいる。もしケータイかデジカメのどちらかひとつで済むとしたら嬉しい話だ。
結婚式でもケーキ入刀という幸せいっぱいの瞬間を、ケータイカメラで撮る人は多い。日常だけでなく、非日常もフォローできる。ケータイのカメラは、除々にそんな存在になりつつある。
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