IT業界で使われる英単語には、もともとの単語の意味から派生して「業界用語」として定着した言葉が多くある。これまでに本コラムで紹介してきたbinaryやbatch、前回紹介した警告を表すIT英単語などがそうだ。これから紹介する2つのIT英単語もそうした業界用語で、なおかつ意味的に近い関係にある言葉だ。
まず、プログラマに馴染みのある「library」。「図書館、蔵書、書庫」といった意味の英単語だ。さらに「dictionary.com」で調べてみると……。
library
A place in which literary and artistic materials, such as books, periodicals, newspapers, pamphlets, prints, records, and tapes, are kept for reading, reference, or lending.(文学、芸術資料を保管する所。たとえば講読や参照、貸し出しのために本、定期刊行物、新聞、パンフレット、プリント、記録、テープなどがある場所をいう)
このようなlibraryの意義から転じて、エンジニアは「使いたいときに貸し出せるように保管してあるデータの集まり」という意味で使うようになった。つまりlibraryにあるデータやプログラムは、ほかのプログラムから利用できる「部品」と考えられる。libraryはデータやプログラムの集合体ではあるが、あくまでも貸し出す立場なので、単独で実行することはできない。
libraryの1つに、WindowsのDLL(Dynamic Link Library)がある。DLLは、複数のアプリケーションソフトが共通して利用するプログラムを部品化して保存しているファイル。DLLにあるプログラムは、アプリケーションソフトの要求に応じてメモリに呼び出され利用される。
このlibraryと似たような意味で使われているのが「archive」。「古文書や公文書の保管所」という意味の英単語だ。「dictionary.com」には、このように書かれていた。
archive
A place or collection containing records, documents, or other materials of historical interest.(記録や文書、その他の歴史上の重要な資料を、収集保管すること、または場所)
こうしたarchiveの意義から転じて、エンジニアは「ファイルなどまとめてを保管する場所」という意味で使うようになった。ファイルを“まとめて”圧縮したZIPやLZHなどもarchiveの一種である。ZIPやLZHによって圧縮されたデータは、たとえ単独で実行できるプログラムであっても、解凍しない限り利用することはできない。つまりarchiveに保管されているデータとは、後で何かに使うためにしまわれており、決められた手順(操作)を踏まない限り、取り出すことはできない状態にある。
libraryもarchiveも、日本語では「保管する」という意味で捉えられがちだ。しかし、それぞれが「何をどんな目的のために保管しているのか」という相違点を把握しておけば、IT英文を読み進むためのカギを見つけられるだろう。
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Illustration:Aiko Yamamoto

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