静かに「ステーブルコイン」に注目が集まっている。
ステーブルコインは、ドルや円など特定の資産に連動させることで価格の安定を目指す仮想通貨の一種だ。
2023年8月上旬には、米国の電子決済大手ペイパル(PayPal)が、独自のステーブルコインの発行を始めた。
日本でも、三井住友信託銀行や四国銀行などが、ステーブルコインの発行を視野に、実証実験をしている。
日本でも、ステーブルコインが日常の生活に近づいてきたと感じさせるニュースは増えてきたが、正直なところ理解は追いついていない。
何に使うのか? 税金は? そもそも、儲かるのか?
1. 同額の円やドルに戻せる
ステーブルコインには、いくつか種類があるが、話が複雑になりすぎるため1種類のみ紹介する。
ドルや円と連動するステーブルコインは、法定通貨を裏付けとして発行する。
100万円分のステーブルコインを発行する場合、裏付けとして100万円を保有し、ユーザーから返してという請求があったら、法定通貨で返すことになる。
利用者からみれば、1コイン=1ドル、または1コイン=1円でステーブルコインに交換し、同じ額で法定通貨に戻すことができる。
ペイパルのステーブルコインPaypal USDは、2023年8月25日の午前5時には、1PYUSD=1.01ドルかいわいで取引されており、今のところ価格の安定が実現している。
日本円建てのステーブルコインを1円で購入した人は、手数料は別として、そのステーブルコインをおおむね1円で売却できることになる。
2. 儲かりそうにはない
仮想通貨は2009年にビットコインの発行が始まったばかりだ。
初期から仮想通貨を保有していた人の中には、数年後にビットコインの価値が数万倍になった、数百万倍になったという事例も存在する。
しかし、こうした夢のような話は、一般のテレビやネットニュースが仮想通貨を報じる今となっては昔話に過ぎない。
仮想通貨の中には、保有量に応じて報酬が分配される仮想通貨も存在するが、こうした機能を持つ仮想通貨は、ステーブルコインには該当しない。
1コイン=1円を目指すステーブルコインの性質上、価格が急上昇し、大儲けできるというものではない。
「ステーブルコインで利益を得よう」といった儲け話が身の回りにあるときは、落ち着いて考える必要があるだろう。
3.「利確」は課税対象の可能性
ステーブルコインは、いつでも、ほぼ1対1の割合で法定通貨と交換できるのを目指して設計されている。
そうなるとビットコインが値上がりした時に、売買をしている人が利益を確定するため、ステーブルコインと交換することもあるだろう。
その場合、国税庁が公表している「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」という文書が参考になりそうだ。
ビットコイン価格の上昇による利益を確定するため、ビットコインとステーブルコインを交換すると、値上がり分は「譲渡」によって得た利益とみなされ、課税の対象となる可能性がある。
仮想通貨の取引で得た利益は「雑所得」に分類され、会社員であっても、確定申告が必要となることがある。
4. 送金や買い物に使えそう
ステーブルコインが日常生活に入ってきた場合、円をコインに交換し、支払いや送金に使うことになる。
900円のラーメンを食べた時は900コインを支払い、飲み会の支払いが1人3000円だった時は、3000コインを幹事に送金する。
しかし、支払いや飲み会の幹事への送金であれば、PayPayや楽天ペイなどのスマホ決済ですでに実現している。
こう考えると、疑問が浮かぶ。ステーブルコインは、スマホ決済と何が違うのか。
5. 「すぐに使える」が強みか
スマホ決済で支払いをする場合、ラーメンを食べた客は手数料を請求されない。
しかし、ラーメンを提供した店は、数%の手数料をスマホ決済の会社に支払う。
900円のラーメンに対して2%の手数料と考えると、ラーメンを1杯提供するたびに18円の手数料を支払うことになる。
売上も、後でスマホ決済会社からラーメン屋の店主の口座に振り込まれることになる。
ステーブルコインの場合は、円とコインを交換する時に手数料を支払うが、その後は(おそらく)手数料はかからないだろう。
店主としても、決済の会社からの入金を待つ必要はなくなり、客が支払った900コインは、店主のウォレット(口座)に直接送金される。
仮に、日々の仕込みに必要な食材の納入業者もステーブルコインを使っている場合、ステーブルコインで仕入れの代金を支払うことになる。
ただ、ステーブルコインが普及するとしても、一定の時間はかかる。
ラーメン屋も、食材を納入する業者もステーブルコインでの支払いを受け付けるようになるのは5年先か10年先か。
ステーブルコインは、利用者や利用可能な店が増えれば増えるほど利便性が向上するのは間違いなさそうだ。
しかし利用者が少ない間、いわゆるアーリーアダプターたちは、じっと不便に耐えるしかない。
6. 地銀が年内に発行の動き
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