米国で最大規模の仮想通貨取引所2社が、当局に相次いで起訴された。
証券取引委員会(SEC)に起訴されたのは、バイナンスとコインベースの2社で、それぞれ取引量で世界最大と2番目の取引所だ。
バイナンスについては、創業者で仮想通貨業界で絶大な知名度があるチャンポン・ジャオ氏個人も提訴の対象とされている。
2022年11月に大手取引所FTXが経営破たんして以降、SECは仮想通貨に対する取り締まりを強化している。
一見した限りでは、仮想通貨の世界を代表する2社が並べられて取り締まりのターゲットになったように見えるが、詳しく見ると、より深刻なのはバイナンスの訴訟だ。
訴訟の展開次第では、バイナンスは米国でのビジネスが継続できなくなる可能性があると見られている。
客の資産と自社の資産を「混同」
SECは2023年6月5日にBinance Holdings(バイナンス)とその関連企業、創業者のジャオ氏を提訴した。
SECは訴状で、バイナンスの13件の違法行為を指摘しているが、おおむね次のような内容だ。
バイナンスは、世界最大の仮想通貨取引のプラットフォームを運営している。
バイナンスとジャオ氏は、顧客から預かった資産を、自社の資産と混同し、他の事業に流用していたとされる。
また、公には、米国の顧客はバイナンスのプラットフォームでは取引ができないと発言しながら、一部の米国人の顧客に対しては、同社のプラットフォームでの取引を認めていたとされる。
SECが指摘するのは、いわゆる「分別管理」の問題だ。
本来、暗号資産交換業者(仮想通貨の取引所)や証券会社などは、顧客の資産は他の資産から切り離して管理することが求められている。
他の資産と混ぜてしまうと、出金を求める顧客が集中した時に、速やかに出金ができなくなり、最悪の場合出金できなくなる恐れがあるからだ。
実際に経営破たんしたFTXは、関連会社の損失を埋めるため、取引所の顧客の資産を流用し、顧客が資産を引き出せない事態が生じている。
SECは今回の訴訟に合わせて、「米国の顧客の資産保護を確実にする」として、バイナンスや関連会社、ジャオ氏の資産を凍結するよう、裁判所に求めている。
さらに、今回の提訴とは別に、刑事事件に発展する可能性があるともみられている。
米国の司法省は、バイナンスがマネーロンダリングを防止する措置を講じていなかったとして、会社やバイナンスの訴追を検討している。
コインベースは「未登録」
バイナンスが提訴された翌日の6月6日には、コインベースがSECに提訴された。
SECは訴状で、コインベースが未登録のまま、交換所やブローカー、清算機関の事業をしていたと指摘している。
登録をしていた場合、SECによる検査など投資家保護の措置を受けられたが、コインベースはこうした措置を怠っていたとされる。
コインベースとSECの裁判では、同社が扱う仮想通貨などが米国の証券法で登録が義務付けられる有価証券に該当するのかなどについても争われるとみられている。
米国でも「まず登録」?
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