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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第247回

金融庁の“FinTech推し”続く QR決済、さらに参入促進へ

2023年09月04日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 夏の終わりになると金融庁が毎年、今後の方針を発表する。

 「金融行政方針」というかたい名前の文書だが、2023年度は8月29日に公表された。

 この文書はFinTechや仮想通貨の分野が今後、どう変化していくかを考えるうえで、とても大切な内容が含まれている。

 今年度の金融行政方針で目につくのは、さまざまなスタートアップへの支援策だ。

経営者による個人保証は減るか

 スタートアップや、創業間もない中小企業が金融機関から融資を受ける時は、経営者が個人で保証することが多い。

 経営者が持っている土地や建物を担保にしたり、経営者個人が連帯保証人になったりする。

 要するに、返せなかったら「お前が責任を取れ」という仕組みだ。

 こうした仕組みが長い間、創業者たちの重荷になってきたのは事実だろう。

 スタートアップが数億円、数十億円の資金を調達したというニュースが時々報じられるが、多くの中小企業経営者にとっては手の届かない世界だ。

 狭い意味での「スタートアップ」という言葉は、ベンチャーキャピタルが投資先と認めた創業間もない企業を指す。

 金融行政方針は、「経営者保証に依存しない融資慣行の確立」を掲げている。

 その具体策のひとつに挙げられているのは、事業そのものを担保とした融資だ。

 こうした仕組みでは、金融機関が企業に融資をする際、事業計画書などを審査して、プロジェクトがお金を生みそうかどうかを評価する。

 プロジェクトがうまくいかずに返済が滞ったとき、土地が担保の場合、その土地は金融機関が回収するが、こうした事業への融資の場合、回収されるのは事業そのものだ。

 金融機関は、事業や会社を他の企業に売却するなどして、貸した金の回収を図るが、土地や建物のように簡単には買い手が見つからないだろう。

 金融庁が掲げる事業を担保とする融資の促進は、融資をする金融機関側に対しても事業を評価する能力の大幅な向上を求めるものだろう。

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