仮想通貨(暗号資産)の強気相場が続いている。
代表的な仮想通貨ビットコインは、7月14日朝の時点で435万円台で取引されている。
2023年1月1日の価格は217万円台で、年初の2倍に上昇している。
2022年の年末には世界最大手の取引所のひとつFTXの経営破たんで、仮想通貨市場全体に対する悲観が強まっていたことを思い返すと、驚きの上昇と言える(参考:「仮想通貨市場に激震──FTX経営破たん」)。
今回の強気相場のきっかけは、2023年6月、世界最大の資産運用会社ブラックロックが米国の証券取引委員会(SEC)に、ビットコインの現物に投資する上場投資信託(ETF)の上場を申請したことにある。
ビットコインへの投資を本格化させる姿勢を明確にしたことで、仮想通貨が資産のひとつとして定着するとの期待さえ高まっている。
ただ思い出しておきたいのは、SECがこれまで、さまざまな企業による仮想通貨ETFの承認申請を却下してきた事実だ。
ETFとは上場され、取引所で売買される投資信託
あらためてETFとは何かを整理するため検索してみたところ、日本証券業協会がYouTubeに公開している動画がわかりやすかった。
ETFは投資信託の一種だ。
投資信託は、多くの人から集めた資金を株式や債券などに投資する。運用した成果は、資金を出した人たちに分配される。これが投資信託の大まかな仕組みだ。
通常の投資信託は取引所に上場されず、その価格は通常、1日に1回決められる。
これに対してETFは、「上場投資信託」の名前の通り取引所に上場され、取引所で売買されるため、株価と同様に価格が動き続ける。
こうした前提を踏まえると、ブラックロックは、多くの会社や個人から資金を集めてビットコインに投資する商品をつくり、取引所で売買したいので、SECに承認を求めているということになる。
運用総額は日本のGDPの2倍
繰り返しになるが、ブラックロックは「世界最大」の資産運用会社と呼ばれている。
運用している資産は10兆ドルで、日本のGDP(国内総生産)の2倍にあたると言われている。
「世界のGDPの10%を運用する会社」と説明する記事もある。
銀行のように街なかに店舗やATMがあるわけではないため、金融と関わりのない人たちにとってはなじみのない会社かもしれない。
しかし世界最大規模の資産を集めて運用しているだけに、市場におけるブラックロックの影響は計り知れない。
6月6日には、ラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が来日し、岸田文雄首相と面会したことで、国内でもニュースになった。
フィンク氏は7月5日、今回のビットコインETFの上場申請について米国メディアのインタビューに答え、「投資家がより低コストかつ容易にビットコインを取引できるようにしたいとの考えを示した」と報じられている。
絶大な影響力のある会社が当局に対して正式に承認を求め、CEOがメディアで「やります!」と言っている状況で、期待が高まるのは当然だろう。
実際、フィデリティ・インベストメンツなど数社が、ブラックロックの後を追う形で、SECへのETFの申請に動いた。
6月22日のブルームバーグは、「ブラックロックが『なにか知っている』」という見出しの記事を配信している。
ブラックロックが上場申請に動いたことで、同社が「当局の承認につながる新しい知見」を持っているから申請を決めたとの根拠不明の観測が市場に広がっているという。
ブラックロックは、却下の歴史を覆せるか
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