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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第107回

中国政府に包囲されるアリババ アリペイの国有化もささやかれる

2020年12月28日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 中国のIT最大手アリババに対する、中国政府の締め付けが強まっている。

 中国の当局が2020年12月24日、アリババグループ・ホールディングスを調査していると発表した。発表によれば、同社は独占的な行為の疑いが持たれている。

 クリスマスイブには、もうひとつ中国政府の動きがあった。中国人民銀行など金融系の4当局が近く、スマホ決済サービスAlipay(アリペイ)を展開するアントグループと会合を開き、「公正な競争と消費者保護」のため、同グループを指導すると発表した。

 11月にはアントグループの経営幹部らが中国当局に呼び出され、その直後に予定していた新規株式公開を延期している。

 相次ぐ中国当局の動きに、アリペイの国有化までささやかれている。

●「二者択一」迫る?

 アリババグループと、アリペイはいずれもジャック・マー氏が実質的に経営権を握る。

 アリババグループに対する調査を進めているのは、中国の独占禁止法を所管する国家市場監督管理総局だ。

 同局の発表によれば、アリババグループは、取引先に対して「二者択一」を迫るなどの独占的な行為の疑いが持たれている。

 同局の発表文は2行ほどの短いもので詳細については想像するほかないが、中国の独禁法にヒントがある。

 同法には「市場支配的地位の濫用の禁止」が規定されている。この規定では、取引先に対して自社との取引を強制する行為などが禁じられている。

 たとえば、Eコマースサイトの出店企業に対して「アリババで商品を売りたいなら、アマゾンや楽天には出店しないでね」と強制する行為などが、この規定に抵触しそうだ。

 一方で、金融系4当局の発表も2行ほどで詳細には踏み込んでいないが、今後アントグループに対して何らかの制裁を課し、経営方針などの転換を迫ると考えられる。

●マ-氏は「嫌われた」?

 アリババグループは、バイドゥ、テンセント、ファーウェイとともにBATHと呼ばれる、中国のテック・ジャイアントだ。中国の当局はなぜ今、アリババに対する規制を強化するのだろうか。

 ニューヨーク・タイムズは12月24日付で、「中国がジャック・マー氏に厳しくなった理由」との記事を公開した。

 マー氏は、近年の中国でもっとも成功した起業家の一人で、人々の尊敬を集めてきた。しかし記事は、こうした感情に変化が生じ、憎悪の対象になったと指摘する。

 「ダディー・マー」(マー父さん)とも呼ばれ人々に愛されてきたが、最近は「邪悪な資本家」「血を吸う幽霊」とも呼ばれるようになったという。

 背景には、中国社会での格差の拡大がある。一部の富裕層がほとんどの富を独占する一方で、若者たちは大学を卒業してもホワイトカラーの職を得るチャンスは限られている。

 こうした若者の一部が、金に困ると、アントグループの金融プラットフォームで手軽に借金をする。

 記事は、中国社会におけるマー氏のイメージの変化には、中国政府が厳しい姿勢に変化したことも影響しているとも指摘する。

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