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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第86回

インスタはフェイスブックの脅威だった 買収の裏側、米公聴会で注目集める

2020年08月03日 09時00分更新

文● 小島寛明

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Mark Zuckerberg, F8 2018 Keynote

 日本時間2020年7月29日夜ごろから、アメリカの主要メディアにこんな見出しの記事が次々に掲載された。

 「巨大IT企業(ビッグテック)が議会でグリルに」

 あらためて辞書を調べてみるとgrillという英単語には「直火で焼く」だけでなく、「厳しく追及する」「質問攻めにする」という意味がある。

 この日アメリカの議会で開かれたのは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのCEOたちが議員たちの質問に答える公聴会だ。

 アメリカ議会は、GAFAと呼ばれる4社が圧倒的な市場支配力を背に、ライバル企業との競争をねじ曲げ、消費者の利益を害していると疑っている。

 ウェブ会議システムを通じての公聴会ではあったが、スンダー・ピチャイ、ティム・クック、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスの4氏がそろって議会で証言した。米ワシントンポストは「歴史的な反トラスト公聴会」と表現している。

 とくに連邦取引委員会などの政府機関が集めた、4社の幹部たちのメールやチャットのやり取りなど多くの証拠書類が公開されたことは大きいが、中でも注目を集めているのは、フェイスブックがインスタグラムを買収した際のザッカーバーグ氏のメールの中身だ。

●オンライン経済の皇帝たちには屈しない

 議会側は、公聴会の冒頭から戦闘的だった。

 下院反トラスト小委員会で委員長を務めるデイヴィッド・シシリン氏(民主党)は、公聴会の開会時にこう述べている。

 「建国者たちは、王の前で屈することはなかった。わたしたちは、オンライン経済の皇帝たちにも屈するべきではない」

 この日公表されたのは、おもに4社が自社の優位を揺るがす可能性のある競合企業にどう対応してきたかを示す証拠書類だ。

 フェイスブックは、2012年にインスタグラムを買収した。同年4月12日付の日本経済新聞によれば、当時のインスタグラムはまだ社員13人でほぼ売上が立っていなかったが、フェイスブックは約10億ドル(約810億円)をつぎ込んだ。

●競争するより買ってしまえ

 世界を驚かせたM&Aの1ヵ月半ほど前、2012年2月27日にザッカーバーグ氏が別のフェイスブックの幹部に送ったメールには、写真共有アプリを提供するインスタグラムなどの企業について、こんな記述がある。

 「ビジネスは初期段階だが、ネットワークは確立されている。ブランドにはすでに意味があり、彼らが大きな規模に成長すれば、我々にとって極めて破壊的になりうる」

 返信のメールの中で、幹部はザッカーバーグ氏にこう問いかける。

1) 潜在的な競争相手を中立化するのですか?
2) 人材を手に入れるためですか?
3) サービスを向上させるためわれわれのプロダクトと彼らのプロダクトを統合するのですか?

 これに対して、ザッカーバーグ氏は、「実際には僕らが買うのは(大規模なサービスを作るための)時間だ」と答えている。

●証拠としては弱含み

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