新型コロナウイルスの陽性者との濃厚接触を知らせるアプリの配布が、日本でも始まった。
2020年6月19日から厚生労働省がスマートフォン向けに配布している「新型コロナウイルス接触確認アプリ」(COCOA)だ。厚労省によれば、6月25日午後5時までに、434万件のダウンロードがあったという。
厚労省のアプリは、アップルとグーグルが開発したプログラムがベースになっている。
リリースされたアプリを使ってみたり、規約類を読んだりした限りでは、開発段階からプライバシーをめぐる議論を呼んだだけに、プライバシーへの配慮にかなり苦心した形跡がうかがえる。
ただ、このアプリに対しては、プライバシーへの配慮を重視したことで、感染の拡大防止への効果は限定的だとの見方もある。
●収集する個人情報は限定的
リリースされたアプリの機能は、とてもシンプルだ。
スマホの近距離通信機能、Bluetoothを使う。
アプリを使っている人のスマホでBluetoothがオンになっていると、お互いに通信をして、近くにいることを確認する。
陽性者として登録をした人が1メートル以内に15分以上いると、「濃厚接触の疑いがある」との通知が届く。
厚労省が公開しているアプリのプライバシーポリシーによれば、同省が取得する情報は、(1)陽性者の「処理番号」と、(2)陽性者の「日次鍵」の2つだけだという。
陽性者は本人が同意した場合、保健所で電話番号やメールアドレスを登録し、(1)の処理番号が通知される。
プライバシーポリシーでは、(2)の日次鍵は、24時間ごとに生成される識別子と説明されている。陽性者のスマホと処理番号を結びつけるID番号のようなものと理解していいだろう。
規約上は、名前や生年月日、電話番号、スマホの位置情報など、アプリ利用者の個人を特定するための情報は収集しないとされる。
●陽性者側の利用に心理的障壁は?
陽性者がこのアプリを利用するかしないかは、個人の自由だ。アプリを利用することにした場合は、保健所で個人情報を通知した際に通知された(1)の処理番号を、アプリに入力する。
陽性者が近くにいた情報がスマホ間で交わされるには、おおまかに次のようなステップがある。
1. 保健所で陽性者として登録し、処理番号をもらっている
2. スマホを持っていて、使いこなすことができる
3. 厚労省のアプリをダウンロードする
4. アプリを使って処理番号を登録する
5. Bluetoothがオンになっている
スマホ間の通信は暗号化され、個人が特定できない仕組みではあるが、自分の処理番号を入力して、アプリを利用するには、心理的な障壁はないのだろうか。
陽性者の個人情報が不当に特定されたり、中傷される事態は絶対に避けなければならないが、現在のアプリの仕組みで濃厚接触が確認されるには、陽性者が処理番号を持っていて、アプリを利用している必要がある。
陽性者の心情を想像すると、個人が特定できない仕組みだと頭では理解できても、やはり利用に踏み切るのは怖いと感じる人が多いのではないか。
●国外では位置情報利用の動き
日本で運用が始まったアプリは位置情報を使わないが、海外では、位置情報を使って陽性者を「追跡」する動きもある。
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