日本でも多くの人に知られているSIMフリースマートフォンの「ZenFone」。カメラ特化型や大容量バッテリー搭載モデルなど多数のバリエーションを誇る同シリーズですが、その登場までの道はひと筋縄ではいかないものでした。
前回は、同社のWindows Mobile機やPadFoneなどをピックアップ。PCメーカーならではのスマートフォン開発の道のりをたどっていきましょう。
ZenFoneの大ヒットでメジャーメーカーの仲間入り
PadFoneでAndroidスマートフォン市場へ本格的な参入を始めたASUSでしたが、タブレットに変形するという合体ギミックは一部のユーザーにのみにしか受け入れられませんでした。
2013年末にはそれまで10.1型だったタブレット側を7型に小型化した「PadFone mini」を発売しますが、これは前年に登場しヒット商品となった「iPad mini」にならい、サイズを小型化したものだったのでしょう。
しかし、ASUSはPadFoneの裏で、従来とは全く異なるスマートフォンの開発をしていたのです。それが2014年1月に発表された初代の「ZenFone」シリーズでした。
当初発表されたモデルは「ZenFone 4」「ZenFone 5」「ZenFone 6」の3モデル。いずれも機種名の数字は画面サイズ(インチ)を表します。
2014年4月に台湾で発売されるや、ZenFoneは一瞬で品切れになるほどの大人気となります。
その最大の理由は価格でした。ZenFone 5は4990台湾ドル(当時のレートで約1万7000円)、ZenFone 6は7990台湾ドル(同2万4000円)と、2万円前後という誰にでも買いやすい価格で販売されたのです。
CPUはクアルコムではなく、インテルのAtom Z2580を採用したのも当時としては珍しいものでした。両モデル共に通信方式はW-CDMA/GSM、カメラはリアが800万画素にフロントが200万画素。ディスプレー解像度はHDと、価格を考えれば十分なスペック。スマートフォン初心者にも使いやすい製品だったのです。
そして、ZenFone 5は、同社のノートPCのように同じモデル名ながらも、スペック違いのバリエーションモデルを後から追加していきます。ZenFone 5はメモリーが1GBと2GBの2種類の製品をモデル名「A500CG」として発売されましたが、その後、CPUをSnapdragon 400に変更し、LTEに対応させたモデルを「A500KL」として投入。
さらには、A500CGのCPUをAtom Z2560とし強化したモデルが「A501CG」として登場させました。ちなみに、A500KLは電池カバーにインテルのロゴが入っていないという、ちょっとマニアックな外観上の差もありました。
ところで、ASUSの社名の由来を知っているでしょうか? この名前はギリシャ神話に出てくる空飛ぶ白馬の「ペガスス(PEGASUS)」を由来としています。
「すべての製品に高い品質と独創性を吹き込むことにより、機知に富むペガススが象徴する強さ、創造性、純粋さを具体的に実現する」(ASUSのWEBより)という意味を込めて、この社名となったのです。
実は、ZenFone 5のバリエーションモデルには、この社名の由来となったペガススの名前を冠したモデルもあるのです。 中国ではZenFone 5のCPUをMediaTekのMT6732に変更し、通信方式もTD-LTE/TD-SCDMA/GSMに変更した「Pegasus X002」が通信キャリアの中国移動から発売になりました。ZenFoneのキャリアカスタマイズモデルでもあり、価格をさらに引き下げることで、シャオミなど中国新興メーカーの低価格モデルにも十分対抗できる製品でした。
その後は中国電信向けに「Pegasus X003」も登場。こちらはCPUをSnapdragon 410とし、通信方式はCDMA2000に対応させたモデルでした。
なお、この年は合体型端末の完成形ともいえる「Transformer Book V」も発表しています。5型ディスプレーのAndroidスマートフォンを、タブレットに合体させるアイディアはPadFoneシリーズと同じです。
しかし、なんと合体相手はWindows 8.1をOSとして持つ、単体でも利用できるタブレットなのです。
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