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なぜ、同じ課題を与えても、リーダー候補者の実践には差が生まれるのか ― 企業横断で育成を考える図解10枚を公開

PR TIMES

組織行動科学(R)︎
能力や意欲だけで説明を終えず、仕事の捉え方・実践の過程・職場の条件を確認。国内外14件の関連文献を参照し、実践の違いを育成につなぐ五つの観点を整理

980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、組織行動科学(R)の研究・教育開発を行うリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑 智康)は、「なぜ、同じ課題を与えても、リーダー候補者の実践には差が生まれるのか」をテーマに、企業のリーダー育成を考える図解10枚を公開しました。

本資料は、研修転移、目標設定、問題の捉え方、集団での情報共有、実行計画、経験学習などに関する14件の関連文献を参照し、実践の違いを確認するための五つの観点を、当社の実務上の整理として提示するものです。
候補者の能力や意欲だけでなく、本人が何を達成すべき仕事と捉え、何を確かめ、他者とどう調整し、実行した結果から何を学び直しているかに着目しました。併せて、その実践を可能にする裁量、情報、実行機会、支援、時間配分などの職場条件を取り上げています。

経営者、人事・人材開発担当者、候補者を育成する上司、研修企画・運営担当者が、実践の違いを評価して終えるのではなく、次に必要な支援と経験を具体化するための資料として活用することを想定しています。



公開の背景 ― 同じ課題が、同じ仕事として受け取られているとは限らない

「関係者と業務上の課題を確認し、改善に取り組んでください」。
例えば、このような依頼を受けた場面を考えます。改善案をまとめて説明することを目指す場合と、判断に必要な情報を関係者と確かめ、実行する内容や結果の確認方法まで具体化する場合では、本人が引き受けた仕事の範囲が異なります。

ただし、この違いを「能力ではなく、捉え方の問題」と言い切ることも適切ではありません。研修で学んだことを職場で使う「研修転移」のメタ分析では、認知能力、動機づけ、支援的な職場環境など、個人と環境の双方が実務への活用と関連しています。

そこで本資料では、能力と環境のどちらか一方に説明を求めるのではなく、本人の知識・技能・動機が、どのような仕事の捉え方と職場条件のもとで、実際の行動につながっているかを確認する立場を取ります。

人材の選抜や配置に必要な評価を否定するものではありません。本資料が焦点を当てるのは、その評価とは別に、実践を前進させるために何を確かめ、何を支援するかという育成の問いです。

まず、提出物・実践・学習・成果を分けて確認する

報告書が詳しいこと、実際に行動したこと、経験から学んだこと、事業上の成果が出たことは、それぞれ異なります。リーダーシップ研修のメタ分析でも、受講者の反応、学習、職場への転移、成果は区別して検討されています。

本資料では、この区別を実務で使うために、何が記録され、何が実行され、何が次の仕事で使えるようになったかを分けて確認することを提案します。

例えば、「記載がない」は、まず記録上の状態を表します。それだけで「実施していない」「理解していない」「できない」とは判断しません。また、行動計画を書いたことと、関係者が実行を引き受けたこと、その後に実行されたことも分けて扱います。



五つの観点を、原因の断定ではなく、確認の入口にする

実践の違いを確認する観点として、「課題の目的理解」「仕事の見方」「事実への近づき方」「相手との関係の捉え方」「実行と振り返り」を整理しました。

これらは、五つの原因を特定したという発表ではありません。また、候補者を五つのタイプに分類するものでもありません。一つの仕事について、どの過程が進み、どこで止まり、何を確かめれば前進できるかを見るための観点です。

当社は、着手時の捉え方の違いが、その後に集める情報、対話で扱う内容、実行して得られる経験にも違いをもたらす可能性に着目しました。これは関連研究を接続した説明仮説であり、全過程の因果関係を検証したものではありません。

五つの観点は、固定的な順序で通過する段階でもありません。相手との対話で目的の理解に戻ることも、実行結果から事実の確かめ方を見直すことも想定しています。



課題の目的理解 ― 本人は、どの状態を実現する仕事として引き受けたのか

目的を確認する際、課題文を覚えているかだけを見るのではなく、本人が何を達成したら前進したと判断しているかを確かめます。

同時に、依頼者、直属上司、評価者の期待も確認対象にします。「自分で考えてほしい」と伝えながら、実際には想定した答えへの一致だけを求めていないか。本人に任せた範囲が、関係者の間で異なっていないか。

課題を渡すことに加えて、どの状態を目指し、どこまでを担う仕事なのかを確認する。これを、育成の着手時に行う実務提案として示しています。

図中の分岐は、課題の引き受け方の違いを説明する例であり、発生頻度や割合を示したものではありません。

仕事の見方 ―「遅い」「弱い」という評価を、仕事の経過へ戻す

例えば「対応が遅い」という一件でも、依頼を受けてから何の情報を待ち、誰が何を判断し、その判断を誰へ渡す必要があったかによって、検討すべき対応は変わります。

本資料では、評価語を否定するのではなく、評価の対象となった具体的な仕事をたどり、どこを変えれば前進するかを検討することを提案します。

専門知識と問題の捉え方の関係は、熟達研究でも扱われています。ただし、そこで得られた知見を使って、企業の候補者を提出物の表現だけから熟達者・初心者と分類することはしません。



事実への近づき方 ― 詳しい説明を、検証済みの根拠と同じにしない

「担当者が『承認が遅くて困った』と話した」という記録と、「遅延の主因は承認者の対応だった」という判断は別です。後者を判断するには、依頼時点、必要情報がそろった時点、承認時点などを確かめる必要があります。

他者理解に関する実験研究でも、相手の立場を想像するだけでは、推測の正確さが一貫して高まるとは限らず、直接の会話で相手の見方を得ることの意義が示されています。ただし、会話で得た説明が常に正しいことを保証するものではありません。

本資料が提案するのは、相手の発言を退けることではなく、発言を入口に、出来事、当時の情報、判断の理由を確かめ、必要に応じて記録や他の説明とも照合することです。



相手との関係の捉え方 ― 同意だけでなく、異なる情報と制約を扱う

関係者が集まって話し合えば、判断に必要な情報が自然にそろうとは限りません。

情報が参加者に分散している集団意思決定課題のメタ分析では、集団は各人だけが持つ情報より、皆が知っている情報を多く取り上げる傾向を示しました。また、各人だけが持つ情報をどれだけ共有できたかは、判断の質と関連していました。

この知見を踏まえ、本資料では、相手から賛成を得たかだけでなく、自分が知らなかった情報、異なる見方、実行上の制約を仕事の進め方に組み込めたかを確認します。

共に仕事を進めることは、責任を曖昧にすることではありません。判断する人、実行する人、必要な条件を明確にすることまでを扱います。



実行と振り返り ― 実施報告から、次の判断に使える記録へ

「理解が進んだ」「認識を共有できた」という振り返りにも意味があります。ただし、その記述だけでは、何が分かり、どの判断や行動が変わったかまでは確認できません。

実施後の検討を構造化したデブリーフィングのメタ分析では、対照条件と比べて平均的なパフォーマンスの改善が報告されています。一方で、参加者、検討の焦点、目的、評価対象を整合させることの重要性も示されています。

そこで本資料では、感想に加えて、予想と実際の違い、その違いを踏まえて次に変える点を残すことを提案します。実行できなかった場合も、方法、権限、時間、相手との調整などを分けて確認します。



本人への要求と、職場が整える条件を両方見る

「もっと主体的に取り組んでほしい」と求める際には、本人が実際に何を確認し、誰に働きかけ、何を決められる仕事になっているかも確認します。

役割の捉え方に関する職場研究では、役割を柔軟に捉えることとパフォーマンスとの関連が、裁量の大きい仕事では見られ、裁量の小さい仕事では見られなかったという結果が報告されています。役割の捉え方を、仕事の条件から切り離して扱わないことが重要です。

本資料では、本人に必要な知識・技能・動機を確認すると同時に、必要な情報へのアクセス、試行できる範囲、上司の支援、時間配分などを点検することを提案します。

職場条件を確認することは、本人の課題を打ち消すためではありません。本人が学び直すことと、組織が整えることを、具体的に分けて扱うためです。



課題の提示から、実践・支援・結果確認・再実践までをつなぐ

リーダーシップ研修のメタ分析では、ニーズ分析、フィードバック、実践を含む複数の学習方法、期間を空けた学習などが、有効性に関わる設計要素として示されています。

本資料の最後では、課題を一度出して提出物を評価するだけでなく、着手前の確認、事実確認、対話・調整、行動の具体化、実施後の振り返り、別の仕事への応用をつなぐ育成設計を提案しました。

運用では、本人が行ったこと、支援を受けて行ったこと、実行機会がなかったこと、状況を確認できていないことを分けて残します。記録の量を増やすことではなく、次の支援や判断に必要な内容を確認することを目指します。

また、実践の前進は、活動件数の増加だけで判断しません。条件に応じて、方法を変える、いったん止める、専門家や上位者へ判断を求めることも含め、何を根拠に選んだかを扱います。



活用の入口は、一人の、一つの仕事を確かめること

本資料は、研修後の面談、実践課題の振り返り、次世代リーダー育成プログラムの見直しなどで、論点を共有する材料としての活用を想定しています。

最初から候補者全員を一括して比較するのではなく、一人の候補者が取り組んだ一つの仕事について、何を目指し、何を確かめ、誰と調整し、何を実行し、その結果から何を修正したかを確認します。

そのうえで、本人に必要な学習と、職場側に必要な支援を具体化し、次の仕事で確かめます。全員に同じ改善策を当てはめるのではなく、条件に応じて必要な確認・判断・行動を選べるようにすることを目指します。

実践の差を、人の評価だけで終わらせない。
どの過程で実践が止まり、何を整えれば前進するかを、本人と確かめる。


これが、今回の図解10枚を通じて提案する、リーダー育成の中心的な視点です。

全文・図解10枚統合版PDFをダウンロードできます

▶ 全文・図解10枚統合版PDFをダウンロードする(全30ページ)
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※本資料は、公開研究を参照した実務論考です。個人の能力を判定する診断尺度や、特定企業の研修効果・業績貢献を実証した資料ではありません。

研究上の位置付けと利用上の留意点

本資料は、公開された関連研究を参照し、企業の育成実務に接続する観点を整理したものです。新たな企業横断調査の結果や、特定企業・個人の能力評価を発表するものではありません。文献を網羅的に抽出した系統的レビューでもありません。

参考文献

以下は、本資料の基礎となる論考で参照した14件の文献です。各研究の知見と、当社による観点の整理・実務提案は区別しています。
- Blume, B. D., Ford, J. K., Baldwin, T. T., & Huang, J. L.(2010). Transfer of training: A meta-analytic review. Journal of Management, 36(4), 1065-1105. DOI: 10.1177/0149206309352880.
- Lacerenza, C. N., Reyes, D. L., Marlow, S. L., Joseph, D. L., & Salas, E.(2017). Leadership training design, delivery, and implementation: A meta-analysis. Journal of Applied Psychology, 102(12), 1686-1718. DOI: 10.1037/apl0000241.
- Seijts, G. H., Latham, G. P., Tasa, K., & Latham, B. W.(2004). Goal setting and goal orientation: An integration of two different yet related literatures. Academy of Management Journal, 47(2), 227-239. DOI: 10.5465/20159574.
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- 佐々裕美・向後千春(2024)「企業内技術研修における研修転移意志への影響要因と自律的な研修転移の促進に関する検討」『日本教育工学会論文誌』48(2), 381-390. DOI: 10.15077/jjet.47078.




組織行動科学(R)について

組織行動科学(R)は、組織で働く人の思考と行動が「なぜ起こり、なぜ続くのか」を、事業環境、歴史、経験から明らかにし、より善く再現するための研究・実践体系です。
リクエスト株式会社は、980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、企業で働く成人の研究と教育開発を行っています。






リクエスト株式会社について

リクエスト株式会社は、組織行動科学(R)を基盤に、企業で働く人の行動、判断、経験形成、組織学習に関する研究と実践支援を行っています。

代表取締役の甲畑智康は、2003年に東京藝術大学美術学部を卒業後、企業の人材育成・組織開発に20年以上携わってきました。芸術における創造の過程と、企業における判断形成の双方を背景に、AI時代の「判断デザイン」「判断経験設計」「判断構造設計Pro」の体系化を進めています。

会社名:リクエスト株式会社
代表者:代表取締役 甲畑 智康
所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
公式サイトhttps://requestgroup.jp
会社概要https://requestgroup.jp/corporateprofile
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