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VRグローブから産業用フィジカルAIへ急拡張。Melt(旧Diver-X)が狙う「手のデータ」

VR向けデバイスで培ったUXを、ロボット遠隔操作と模倣学習データ収集へ

 Melt Interface Technologies株式会社(旧Diver-X、以下Melt)は6月23日、新型グローブ型VRコントローラー「ContactGlove3」と、ロボティクス向けデータグローブ「ContactGlove3 Pro」を発表した。同社は7月1日付で、Diver-X株式会社から現社名へと変更している。

 Meltはこれまで、Diver-XとしてVRユーザー向けのグローブ型デバイスを開発してきた。今回の発表は、VR周辺機器から、ロボット遠隔操作や模倣学習、製造現場の品質保証に使う産業用インターフェースへと事業領域を広げる動きを示すものだ。

VRグローブ企業から、産業用インターフェース企業へ

 ContactGlove3は、触覚フィードバック機能を備えたグローブ型VRコントローラーだ。電磁場(EMF)方式による高精度なハンドトラッキングを採用し、VRChatやResoniteなどのSteamVRコンテンツで利用できる。価格は9万9800円からで、2026年10月の出荷開始を予定している。

ContactGlove3には新型コントローラモジュール「Magnetra3」を同梱

 そして今回の発表の本命となるのが、ロボティクス向けの業務用データグローブContactGlove3 Proだ。ROS 2、C++、Python SDKに標準対応し、Linux、macOS、Windowsで利用できる。価格は49万8000円から。ロボット遠隔操作や作業データ収集、模倣学習に使う指先データの取得を想定する。

 Meltは、ContactGloveシリーズの高精度なハンドトラッキングや触覚フィードバックに加え、産業用ロボットや次世代ロボット産業への展開も打ち出した。社名変更の狙いも、こうした事業領域の広がりにある。新社名は、VR向けデバイスに限定せず、人とデジタル技術をつなぐインターフェース全般を手がける企業としての位置づけを明確にするものだ。

個人向けVRで鍛えたUXが、BtoB導入のきっかけに

 同社CEOの迫田大翔氏は、この1年を振り返り、「市場のモメンタムにいかに乗るかを意識してきた」と話す。同社が注目しているのは、XRとフィジカルAIの接続だ。VR向けに開発してきたグローブは、人の細かな手の動きや力加減を取得するデバイスでもある。

 迫田氏によれば、現在の同社の収益の半分以上はBtoB事業によるものだという。インドの工場では1万台規模の導入案件が進んでおり、BtoC向けのVRデバイスとして出発したContactGloveが、産業向け市場でより大きな事業機会につながっている。

 こうした展開を迫田氏は「toCからtoBへの逆輸入」と表現する。印象的な例として挙げたのが、 米国の著名なヒューマノイドスタートアップでの導入経緯だ。きっかけは、同社のエンジニアが個人的にContactGloveを知っていたことだった。ContactGlove 3への切り替え時期に在庫が切れていた際には、そのエンジニアが秋葉原の小売店まで買いに来たこともあったという。

 産業向けのデータグローブでは、トラッキング精度や遅延性能が重視される。また、長時間にわたり使用する現場では、装着感や操作性も導入を左右する。MeltはBtoCのVR市場でユーザーに揉まれてきたぶん、装着性やコントローラー拡張機能、XRとの接続性に強みがある。

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競合は欧州のManus、Meltは価格とUXで追う

 競合はオランダのManus(マヌス:Manus Technology Group)だ。同社はデータグローブ領域で長い実績を持ち、欧州のアカデミアにも強いネットワークを持つ。一方、Meltは価格とUXで追い上げる。ContactGlove3 Proは50万円台から導入でき、Manusのフラグシップモデルは約150万円。価格を約3分の1に抑えながら、性能面では同等水準を実現していると迫田氏は自信を見せる。

 国内でも導入は広がっている。迫田氏によれば、一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)が採択されたNEDO事業(参照)では、参加企業のうち半数がContactGlove3 Proを導入しているという。さらに、国内のフィジカルAI関連スタートアップやヒューマノイドロボット関連企業への導入も進んでいる。

まずは工場の作業支援と品質保証から

 ただし、迫田氏は単純なテレオペレーションでのツール導入を中長期の主戦場とは見ていない。将来的には「人間中心のフィジカルAI」として、製造現場の作業をデータ化し、品質保証や作業効率化につなげる考えだ。

 例えば、自動車工場では現場の作業者が負担なく使えるよう、軍手のようなウェアラブルに近づける構想がある。グローブにマイクを組み合わせれば現場の音を取得でき、ヘルメットにカメラを取り付ければ作業者の視界も記録できる。完成品だけを検査するのではなく、工程ごとの作業を保証することで、全体の品質保証につなげる発想だ。

 さらに、グローブに振動を返すことで、作業者に次の動作や注意点を伝えることもできる。迫田氏は、「リズムゲームのように作業を支援するイメージ」だと説明する。デバイス単体の販売にとどまらず、データ収集、作業支援、品質保証を含むプラットフォーム型の事業へ広げる狙いがある。

ロボットに学ばせるためのデータを集める

 長期的には、ロボットの自動化が成長ドライバーになる。ただし、Meltがロボット本体を作るわけではない。同社が担うのは、人間の身体動作や触覚を、ロボットが学習できるデータに変換するインターフェース領域だ。

 触覚や力覚をどこまで再現すべきなのかは、まだ業界全体でも答えが固まっていない。Meltは、触覚や力覚がデータの質にどう関わるのかを、研究開発と実証の両面から検証していく。 同社は1月、双方向力覚提示技術「EXOS」の事業ライセンスを取得しており(参照)、こうした技術もロボティクス向けデータ収集に生かす考えだ。

 製造現場の品質保証や作業効率化という足元の課題から入り、将来のロボット学習に使えるデータを蓄積する。Diver-XからMelt Interface Technologiesへの社名変更は、フィジカルAI時代のインターフェース企業へ移るための意思表示でもある。

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