もうコンセプトじゃない。“未来都市”が展示会場の外で動き始めている
北島×ガチ鈴木の最近何してた?
SusHi Tech Tokyoは大盛況。でも本番はその先
北島:SusHi Tech Tokyoは、とにかく人が多かったね。
ガチ鈴木:本当に多かったです。大企業の新規事業担当者など、これまでスタートアップイベントにあまり来ていなかった層もかなり増えていた印象でした。「今どんな技術が出てきているのか」「新しいサービスやアイデアはあるのか」を探しに来ている人が多かったですね。
北島:PoCから事業化に進まない話ってもう10年どころかずっと続いているテーマだけど、スタートアップ側としては、「このサービスを実際に導入したい」「こういう形で一緒に使いたい」という具体的な話につながるとうれしいよね。
ガチ鈴木:そうですね。SusHi Techが人を集めたのは間違いなく価値があります。これからどう具体的な連携や事業につながっていくのかが重要になってくると思います。
ブータンが構想する「マインドフルネス都市」
北島:SusHi Techサイドイベントにもたくさん行ってたね。おもしろかったところは?
ガチ鈴木:ブータンですね。かなり衝撃的でした。渋谷キューズで開催されたパートナーイベント「Road to AVS, Japan Edition / ブータンへの道」に参加したのですが、そこで紹介されていたのが、ブータンの「Gelephu Mindfulness City(GMC)」という特別行政区プロジェクトです。
ガチ鈴木:GMCは、ブータン南部のゲレフ地域に構想されている未来都市で、スタートアップや研究機関、大企業などが、新技術の実証や事業開発を行う拠点として整備が進められています。規模は東京都23区の約2倍。2029年には国際空港の開港も予定されています。
北島:かなり大規模ですね。知っている人からいまブータンにいるので、という話が別でもあったけど、この規模なら関連する人が多いのもうなずける。
ガチ鈴木:しかも、ブータン国王直下の国家プロジェクトです。AIやエネルギー、都市インフラなどの最新技術を導入しながら、「マインドフルネス」「幸福」「文化との調和」も含めた未来都市を作ろうとしているんです。いわゆるシリコンバレー型の「成長最優先」とは少し違うんですよね。
北島:ブータンらしいでいいのかな。ブータンって、インターネットやIT化が進んだことで、以前より幸福度ランキングが下がったと言われているよね。だからこそ、単純なデジタル化ではなく、「どう技術と共存するか」を意識しているのかもしれない。
ガチ鈴木:そうですね。経済成長だけではなく、「人が心地よく暮らせる都市をどう作るか」という視点をかなり強調していました。10月には、現地で世界中の投資家やイノベーターを集めた大型イベントも予定されています。日本の投資家やスタートアップも、これから本格的に関わっていく段階ですね。
北島:SusHi Techもそうだけど、単なる展示会ではなく、「次の都市モデルをどう作るか」という議論になってきているよね。
トヨタは“実験する街”を本当に作ってしまった
北島:そして、もう一つがトヨタの実験都市「Woven City」ですね。
ガチ鈴木:4月22日のイベント「KAKEZAN 2026」に参加し、自分は初めて行きましたが、現地で目の当たりにすると「本当に作ってしまった」という感じでした。
今回公開されたのは、第2フェーズとなる「Toyota Woven City Innovators Garage」です。 もともと工場だった建物を改装した巨大な開発拠点で、イベントスペースや試作工房(ファブラボ)、カフェ、宿泊スペースまでそろっています。開発者やスタートアップが滞在しながら、実際にものづくりや実験を進められる施設ですね。建物の中も広く、小型モビリティのような乗り物なら、その場で試作や走行実験ができる規模感でした。
北島:スタートアップとの共同開発も前提になっているんだよね。
ガチ鈴木:そうです。トヨタ関連企業だけではなく、採択された企業やスタートアップも一緒にプロジェクトを進めていく形です。実際、街の中にはセンサーを組み込んだ住宅や、自動配送の仕組みなどがすでに導入されています。
特徴的なのは、住民自身がアプリを使って、「どのデータを提供するか」を選べることです。健康データを提供する人もいれば、家の中のデータは共有しない人もいる。利用者自身が細かく設定できるようになっています。
北島:データ利用への同意そのものが、街の仕組みの一部になっているわけですね。
ガチ鈴木:そうなんです。例えば、上島珈琲は「コーヒーを飲むことで集中力がどう変化するか」を検証する実験を進めていました。普通の街だと、生活データを継続的に集めるのは難しいですが、Woven Cityでは、日常生活の中でそうした実証ができるんです。
北島:そもそもPoCの考え方からして違うんだね。
ガチ鈴木:PoCは、「今ある困りごとをどう解決するか」が出発点になることが多かったと思います。一方でWoven Cityは、「未来の暮らしそのものを先に作ってみる」という発想に近い。そこで生まれたサービスや技術を、将来的に他の街や社会へ広げていこうとしているんですね。
「未来都市」はどう実装されるのか
北島:ブータンのGMCも、トヨタのWoven Cityも、規模や立場は違うけれど、目指している方向はかなり近いよね。
ガチ鈴木:そう思います。どちらも、単に新技術を展示するのではなく、「未来の都市そのもの」を実際に作って試そうとしている。
北島:「PoC疲れ」という言葉もあるけど、実証実験のその先にこそ期待したいからね。
ガチ鈴木:「地域向けの実証をやって終わり」ではなく、そこからちゃんと売れるものを作れるか。Woven CityもGMCも、そのための環境を街ごと用意しているように見えました。
北島:SusHi Tech Tokyoも含めて、結局みんな見ている方向は同じなのかもしれないね。テクノロジーをどう実装するのか。どう暮らしに組み込むのか。そして、それをどう経済として成立させるのか。
ガチ鈴木:いずれも利便性や効率化だけではなく、「幸福」や「サステナビリティ」まで含めて都市を設計しようとしている。その点は、これまでのテックイベントとは少し違う空気を感じました。
北島:未来都市の実験場が、ブータンや静岡にでき始めているわけですね。
ガチ鈴木:今後ここから何が生まれるのか、しっかり注目していきたいですね。
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