GoogleカーもLiDARも不要。スマホとドラレコで道路点検をDX
クマが出るのは、道が“消えてる”サイン?
このところ、クマの出没のニュースが各地で続いている。山から人里に下りてくるのは、山と街の「境界」が曖昧になっているからだ。人が減り、通る人もいなくなった道路や林道は、草が伸び、見通しが悪くなり、やがて動物の通り道になる。 地方では、そんな“人が通らなくなった道”が増えている。
1回数百万円の点検車って必要?
同時に、道路や橋といったインフラの老朽化も進んでおり、地方自治体は維持管理にかかるコストの高騰に頭を抱えている。かつては職員が定期的にパトロールし、ひび割れや陥没を目視で点検していた。しかし、今は人手も時間も足りない。そこで代わりに使われているのが、LiDARなどを搭載した専用車両、GoogleカーでおなじみのMMS(モービルマッピングシステム)だ。
MMSは高精度な3D地図を作るには最適だが、1回の走行で数百万円かかることもある。3Dの高品質なモデルを構築するようなプロジェクトならともかく、日常的な道路点検にはオーバースペック。「もっと簡単に、安く見られないか?」という現実的な課題に挑んでいるのが、東大発の株式会社アーバンエックステクノロジーズだ。
公用車×スマホで“ゆる点検”
同社は、スマートフォンやドライブレコーダーのカメラから得られる映像データを解析し、路面のひび割れや段差を自動で検知する技術を開発。従来のように専門車両を使わず、一般車両の走行データから道路状態を把握できる。自治体職員が公用車での巡回ついでに、自分のスマホを設置して走行するだけで、損傷箇所の地図が自動で生成されるという仕組みだ。
このアプローチの利点は、これまで点検の優先順位が低かった道にも目が行き届くことにある。交通量が少ない農道や生活道路ほど、劣化が放置されやすい。小さなひびが放置されれば、雨水で侵食が進み、通行止めや事故のリスクにつながる。そんな“誰も通らない道”の安全を、AIが代わりに見守る。
次の道路パトロールは、あなたのドライブかも
さらに、アーバンエックスは市民投稿アプリ「My City Report」との連携も進めている。住民がスマホで撮影・通報した写真をもとに、AIが損傷の種類を分類し、自治体の補修判断を支援している。つまり、スマホを持つ誰もが、道路の見張り役になれるわけだ。
クマが人里に現れるニュースの裏には、地域の“インフラが見えなくなっている”という現実がある。けれど、AIや住民の目があれば、放置された道も“見えないまま”にはならない。次に道路を救うのは、あなたの通勤ドライブかもしれない。









































