【膝を新品に】京大発の軟骨再生技術。老後の移動の悩みに希望
膝の痛みは誰にでもやってくる
誰しも年を取ると膝軟骨がすり減ってきて、歩くたびに痛みが出るようになる。高齢化社会で増える「変形性膝関節症」は、買い物や通院を妨げ、生活の質を大きく下げる。
公共交通は減り、免許返納も迫られ、マイクロモビリティもイマイチ普及しない。そもそも高齢者はバランスをとるのが難しく、自転車や電動バイクの運転には不安がある。移動支援の仕組みは必要だが、やはり自分の足で歩けるに越したことはない。
そんな中、京大発スタートアップの株式会社Arktus Therapeuticsが取り組むのは「膝の根本治療」だ。iPS細胞と3Dプリンターを組み合わせ、摩耗した軟骨をまるごと作り直す技術が現実に近づきつつある。
どうして人工関節じゃだめなの?
日本では人工膝関節置換術が過去10年で10倍に増加し、毎年10万件近く行われるようになっている。ただしこの治療法は術後に運動量が制限されやすく、激しいスポーツや大きな動きを必要とする生活には限界がある。人工関節は金属やセラミック部材を使う構造であり、膝関節の複雑な曲面を完全に再現するのは難しい。
「膝が新品に?」京大発Arktusが挑む軟骨再生
Arktus Therapeuticsの技術は、iPS細胞を軟骨細胞へ誘導し、それをバイオ3Dプリントで関節の形に合わせて配置する方式だ。人工の部材に頼らず、複雑なカーブを持つ膝関節を軟骨そのものとして再生できるのが大きな特徴だ。つまり、これまで人工関節や薬で「痛みを和らげる」にとどまっていた治療に対し、摩耗した軟骨そのものを作り直そうとしているのだ。
Arktus Therapeuticsは2025年にシリーズAラウンドで約6.6億円を調達。非臨床試験や製造体制の構築を進め、将来的な臨床試験に備えている。もし実用化にこぎつければ、高齢者が膝の痛みを気にせず歩ける時代がやってくる。
歩ける未来こそ、最大の社会保障
買い物や通院といった日常の不便が減るだけでなく、老いても体が動けば働ける。人口減少に直面する今、いろいろな支援を工夫するより、体そのものを再生してしまう方が早いのかもしれない。





































