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定型業務を繰り返す「カスタムエージェント」も近日登場

Notionが“頼れる同僚”に進化 すべての操作をこなす「AIエージェント」が始動

2025年09月19日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 カスタマーサポートやコーディングの領域で先行して活用が進むAIエージェント。それでは、あらゆるナレッジワーク(知的労働)に対応するAIエージェントには何が求められるのか?

 このナレッジワークを支援するNotionは、2025年9月18日(米国時間)、Notionに組み込まれたAIエージェント「Notion AIエージェント」を提供開始した。同社が「Notion 3.0」と呼ぶ大型アップデートの一環であり、サンフランシスコで開催中の年次イベント「Make with Notion」で発表された。

 Notion AIエージェントは、2025年春頃から生成AI機能「Notion AI」の改良を重ねる中で、AIエージェントの理想を追求した集大成として展開される。Notion Labs Japanのゼネラルマネージャー アジア太平洋地域担当である西勝清氏は、「Notionのこれまでの様々な取り組みが、実は汎用的なナレッジワークをサポートするAIエージェントにつながっていた」と説明する。

Notion Labs Japan ゼネラルマネージャー アジア太平洋地域担当 西勝清氏

Notionが“ツール”から“チームメイト”に変わる

 西氏は、冒頭の汎用的なナレッジワークエージェントに必要な要素として、「仕事への理解」「チームに合わせた設計」「業務の遂行」を挙げる。これらは、Notionがサービスを展開する中で培ってきた要素であり、Notion AIエージェントにも反映されるという。

 まずは「仕事への理解」だ。AIエージェントを仕事で活用するには、AIが業務のコンテキストを深く理解するだけではなく、コンテキストのサイロ化を解消する必要がある。現在、多くの業務アプリケーションにAIが搭載されているが、統一されたコンテキストで働くには至っていないのが現状だ。

 それに対してNotionは、サービス提供当初から「情報の断片化」という課題に向き合ってきた。それは、テキストやチャート、データベースといった様々な情報や機能を、独自のブロック構造で取り込み、ひとつのプラットフォーム上で集約するという設計思想に現れているという。

独自のブロック構造で情報・機能を自由に整理できる

 加えて、Notion内に存在しないデータに関しても、SlackやTeams、Gmail、各種オンラインストレージなど、十数種のアプリケーションと連携して、横断検索可能な「エンタープライズ検索」機能も提供している。このプラットフォーム上で働くNotion AIエージェントも、Notion内外の業務データを参照し、コンテキストを理解することができる。

対応する外部アプリケーション

 2つ目の要素は「チームに合わせた設計」だ。一人できる仕事は限られているが、多くのAIチャットボットは主に個人向けに設計されている。

 一方のNotionは、もともとコラボレーションツールであり、チームワークに必要な「リアルタイムコラボレーション」「バージョン管理」「権限管理」「セキュリティ」といった要素が揃っている。Notion AIエージェントも、ユーザーと同様に、同じ環境下で協働することができる。

 3つ目の要素は「業務の遂行」だ。AIエージェントには、人の代わりに仕事をこなせる能力が不可欠だが、「実は一番難しいポイント」(西氏)だという。Notionでは、前述の通り情報や機能をブロック構造で集約しているため、それぞれのブロックを扱うだけで業務が遂行できるのがポイントだ。

 Notionでは、これらのブロックを使いこなせるよう、AIに特別なトレーニングを実施。Notion AIエージェントは、人がNotionで実行できるすべての操作を、エキスパートレベルで実行でき、協働するチームの一員としての役割を果たすことが可能になる。

 西氏は、この「チームの一員」という位置付けについて、「これまでNotionは、ノートアプリであり、ナレッジベースであり、タスク管理のツールであった。今後は、人と一緒にそれらに取り組む“チームメイト”という位置付けになる。自律的に、メモをとって、答えを探し、タスクをこなして、レポートをつくる。すべてを任せられ、かつ同じ空間で協働するのが、Notion 3.0の世界感」と説明した。

人ができる操作を何でもできるようトレーニング

トリガー・スケジュールで定型業務を繰り返す“カスタムエージェント”も近日登場

 Notionでは、2025年春頃からNotion AIに段階的に機能を加え、ユーザーからのフィードバックを取り入れながら改善を続けてきた。今回はその集大成として、あらためてNotion AIエージェントと銘うつものである。

 従来のNotion AIとの違いは、複雑なアクションを実行できるようになったことだ。指示の達成に必要なアクションを自ら計画し、エラー発生時の評価・再試行までを自律的にまわす。Notion Labs Japanの早川和輝氏は、「Notion AIは、質問するとそれに答える一問一答型だった。Notion AIエージェントは、やって欲しいことを伝えると、最終的なゴールやそれに必要なステップを考え、それをひとつひとつ丁寧に、自律的に進めてくれるのが特徴」と説明する。時には、20分間にわたって複数作業を連続実行するという。

「短期・中期のタスクを整理して」という指示を受け、プロジェクトを分析し、タスク管理DBを作成し、タスクを抽出して、短期・中期に振り分けている様子

 前述の通り、アクションは、人がNotionでできるあらゆる操作を実行できる。ページの作成・編集はもちろん、データベースの作成・カスタマイズ、検索、プロパティやビューの作成にも対応する。情報検索においても、Notionのワークスペースに限らず、連携する外部アプリケーションやWeb検索なども探索が可能。もちろん、情報セキュリティも配慮しており、ユーザーのアクセス権のある情報だけが参照できる仕組みだ。

 また、新機能として「パーソナライゼーション」機能も発表された。AIエージェントの見た目(アイコン)を変更できるのに加え、会話のスタイルや好みを設定したり、希望するアクションの手順や参照すべき情報を教えることも可能だ。基盤モデルや連携先のアプリケーションも指定でき、“自分好みのチームメイト”としてカスタマイズすることができる。「親近感が湧いて定着率が上がるだけではなく、より自分に最適化された形で、生産性の高いAI活用を推進できる」(早川氏)

パーソナライゼーション

 また、近日追加予定となっているのが「カスタムエージェント」だ。これはユーザーの指示を起点としない、日々の定型業務に最適化した独自エージェントを作成できる機能だ。スケジュールやトリガーを自由に設定することで、エージェントが自律的に作業を繰り返す。

 例えば、設定したスケジュールに沿って、Slack上のフィードバックを収集し、データベースに登録した上で、担当者に通知をするといった一連の作業を自動処理するイメージだ。「日々の作業をエージェントに覚えさせ、企業全体で動作させることで、一人ひとりの作業を何倍にも広げられるという強力な機能」(早川氏)

カスタムエージェント

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