このページの本文へ

連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第149回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 8月31日~9月6日

「非IT部門によるベンダー選定」クラウドサービスでは4割超、データ侵害の被害コスト抑制の鍵は? ほか

2024年09月09日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2024年8月31日~9月6日)は、非IT部門がITベンダー選定/交渉に携わる「シャドーIT」の現状と課題、データ侵害が発生した場合の総被害コスト、国内ハイパーコンバージドインフラ(HCI)市場へのVMware買収の影響、社外取締役報酬の国際比較、用途が広がる音声認識市場についてのデータを紹介します。

[IT]「非IT部門が社外ITベンダーを選定/交渉」、クラウドサービスでは4割超に及ぶ(ガートナージャパン、9月4日)
・DXプロジェクトで社外のITベンダーを活用する企業は72%
・クラウドでは43%がITベンダーの選定/交渉を非IT部門が行う
・「シャドーIT」は避けるべき、ただし今後も増加が予想される

 DXの取り組みにおける「シャドーIT」の現状や課題を調査。DXプロジェクトにおいて、72.6%の企業が「積極的に」「必要に応じ補完的に」ITベンダーを活用している。とくにクラウドサービスのITベンダー選定/交渉については、43.3%がビジネス部門側の意向が反映されやすい「非IT部門」が行っているという。ガートナーでは、シャドーITを「極力避けるべきもの」としながらも、「内製化の取り組みが話題になる一方で、ITベンダーへのニーズは旺盛」だとし、シャドーITは今後も増える傾向にあると予測している。

DXプロジェクトにおけるITベンダーの活用状況。「積極的に」「必要に応じて」を合計すると、72.6%がITベンダーを活用している(出典:ガートナージャパン)

非ITであるビジネス部門がベンダーの選定・交渉をすることで生じている課題(出典:ガートナージャパン)

[セキュリティ]データ侵害による被害コストは前年比10%増、予防へのAI導入で軽減も(日本IBM、9月5日)
・データ侵害1件あたりの世界平均コストは488万ドル(約7億円)
・3分の2の組織がSOCにAIや自動化を導入、「予防」により侵害コストを大幅軽減
・セキュリティチームの「深刻な人材不足」は26%増、侵害コストにも影響

 「2024年データ侵害のコストに関する調査レポート」日本語版より。2023年3月~2024年2月の期間にデータ侵害を経験した604社を調べた。事業損失、侵害後の顧客への対応といった付随的な被害が激化しており、データ侵害コストは前年より10%増加。一方、セキュリティ人材不足の影響から、SOC(Security Operation Center)でAIと自動化の仕組みを導入する組織は3分の2に及んでおり、予防ワークフローにAIを使用している組織では、そうでない組織よりも侵害コストが平均で220万ドル削減されているという。

[HCI]ハイパーコンバージドシステム(HCI)の国内市場、VMware買収の影響は「現時点では限定的」(IDC Japan、9月3日)
・国内ハイパーコンバージドシステム市場の2023~2028年のCAGRは5%
・2028年には713億400万円に
・ライセンス体系の変更を景気とした代替ソリューションへの移行は現時点では限定的

 国内ハイパーコンバージドシステム市場予測。2023~2028年の同市場は堅調な成長を遂げ、支出額のCAGR(年平均成長率)は5.3%、2028年には713億400万円に達すると予測している。今年初旬に起きたVMwareのライセンス体系、パートナー制度の変更を契機とした代替ソリューションへの移行は、現時点では「多くは発生していない」とする。ただし長期的には、パブリッククラウドなどの代替ソリューションへの移行が徐々に進むと見ており、今回の予測にはそのマイナス要因も一定程度加味されている。

国内ハイパーコンバージドシステム市場の支出額予測: 2023~2028年(出典:IDC Japan)

[経済]日米欧5カ国の社外取締役報酬比較、日本は4位(WTW、9月6日)
・日米欧5カ国の社外取締役報酬、最多は米国で4350万円
・日本は4位、前年比2.3%増の1420万円
・社外取締役に株式報酬を付与する日本企業は12%

 日米欧5カ国(日・米・英・独・仏)の売上高1兆円以上企業における社外取締役の報酬を調べた。中央値ベースで、米国が4350万円でダントツの1位。2位以下はドイツ(2880万円)、英国(2260万円)、日本(1720万円)、フランス(1420万円)と続く。ただし、株式報酬を除くと米国は1740万円で日本とほぼ同レベル。株式報酬を支給する企業は、米国が99%、英国は29%、日本は12%だった。

5カ国の社外取締役報酬最も低いのはフランス、日本は4番目(出典:WTW)

社外取締役に株式報酬を支給する企業の割合、日本は12%(出典:WTW)

[音声認識]コンタクトセンター、営業など用途広がる音声認識市場、2023年度は21%成長(アイ・ティ・アール、9月5日)
・音声認識市場の売上金額は2023年度150億円、前年度比21%増
・2024年度は前年度比18%増
・深層学習などAI技術の進展により精度が向上

 国内音声認識市場の売上金額は2023年度、前年度比21%増の150億円を記録した。医療現場やコンタクトセンターで利用が増えているほか、会議の議事録作成、オンラインの営業活動支援など用途の多様化が進んでおり、2024年度も前年度比18%増を見込む。AI技術の進化で精度が改善していることから、今後はエンタープライズでハイブリッドAIの音声認識サービスが台頭すると予想している。2023~2028年度のCAGRは16.9%、2028年度に300億円を上回ると予想している。

国内の音声認識市場の推移および予測(出典:ITR)

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード