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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第319回

米国でTikTok停止→やっぱり再開 トランプ氏の動き目立つ

2025年01月21日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 米国で、中国系の動画投稿プラットフォームTikTokの運用が停止された。

 TikTokの運用停止は米国時間の2025年1月18日深夜にはじまった。日本では、19日の昼過ぎに当たる。米国でバイデン大統領からトランプ新大統領に政権が移行する、ほぼ1日前のことだ。

 TikTokは米国で1億2千万人を超えるユーザーが利用しており(2024年7月、STATISTA)、最近では、ユーザーは1億7千万人に達しているとも報じられている。当然ながらTikTokで収益を得ているTickTokerもいれば、企業の広告を配信する有力な媒体にもなっている。それだけに、米国経済に与える影響もかなり大きなものになる。

 19日になって、トランプ新大統領が、自らが立ち上げたSNSであるTruth Socialで、TikTokの運用を事実上禁止する法律の適用を延期すると発表した。18日に米メディアのインタビューに対して、TikTokの運用停止を90日間延期する方向で検討していると述べている。

 また、TikTokを運営するバイトダンス社が、トランプ政権で要職に起用される見通しのイーロン・マスク氏にTikTokの米国事業を売却する可能性があるとの見方も浮上している。さらに、米国の経済メディアCNBCは、AI検索サービスを提供するPerplexity AIがTikTokの米国事業との合併を提案したと報じている。

TikTokはなぜ禁止に?

 まず、そもそもTikTokが米国で事実上禁止されることになった経緯を整理したい。一言で説明すると、「安全保障上の懸念がある」と判断されたからだ。

 TikTokは、プラットフォームに動画を投稿し、閲覧をするユーザーたちの膨大な情報を集めている。TikTokが収集する情報は、個人の氏名、住所や生年月日、電話番号、閲覧履歴、趣味や好み、政治的な立ち位置などが含まれる。

 こうした情報の取り扱いに懸念が生じたきっかけは、2017年6月、中国で国家情報法が施行されたことだ。国家情報法は、中国の個人や組織に対して、「国の情報活動への協力」を義務づけている。政府の情報活動への協力が法律で明文化されたことで、バイトダンスなどのプラットフォーム企業も、中国政府からの要請があれば、米国で収集した情報を提供せざるを得ないとみられている。

 さらに、中国企業が運営するプラットフォームであるため、米国のユーザーに向けた誤情報やフェイクニュースの拡散といった中国政府の情報活動にTikTokが利用されるとの懸念も高まった。

 インド政府は2020年6月、国境をめぐる中国との対立が激化したことをきっかけに、TikTokやWeChatなど、中国系企業が提供するアプリの利用を禁止し、隣国のネパールもこれに追随している。

 米国の連邦議会は2024年4月、バイトダンスが270日以内に米国のTikTok事業を売却しなければ、米国での利用を禁止する法案を可決した。この270日後にあたる1月19日が売却の期限とされていた。

 2025年1月18日には、バイトダンスが自社のサイトで次のような声明を発表した。

 「バイデン政権が直ちに、最も重要なサービスプロバイダーの懸念を払拭する明確な声明を発表し、執行しないことを保証しない限り、残念ながらTikTokは1月19日にサービスを停止せざるを得ないでしょう」

 すでにイーロン・マスク氏や、Perplexity AIなどとの売却や合併に関する交渉が報じられているが、バイトダンスは、1月19日までに売却や合併を完了させることはできなかった。一方で、バイトダンスが、バイデン政権の最終日にあたる19日までに売却や合併について結論を出さなかったのは、トランプ氏率いる新政権の対応に一定の期待感を持っていたからだとも考えられる。

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