みやさとけいすけの工具探検隊 第53回
ガラスを手作業で切れる「H&H 超硬オイルガラス切り<エース>TC-15」
ガラスってどうやって切るの? ガラスカッターを使ってみた
2024年08月19日 18時00分更新
布や紙のように薄くて柔らかいものならハサミやカッター、固く厚みのある木や樹脂、金属ならノコギリといったように、材料によって切るのに適した工具があります。
では、ガラスはどうでしょう?
水中ならハサミで切れるという話もありますが、切るというよりも"砕き進む"、という方が近いです。細かく刻むだけならできそうですが、シンプルにまっすぐな直線で切ろうとしても、意図しない方向へと進みがちなうえ、砕けやすいのがネック。角を少し落とす、とかならできそうですが、切り口はガタガタになりがちです。思い通りにキレイな形を作るのは、不可能に近いでしょう。
もちろん、バンドソーやテーブルソー、ウォータージェットカッターのような大型工作機械を使えば、思い通りにキレイに切れます。しかし、これらの機械を個人で所有するのは、金額的にも設置スペース的にも難しいものがあります。
個人でガラスを切るには?
もっと手軽にガラスを切りたい、というのであれば、「ガラスカッター」を使うのはどうでしょうか。
"カッター"という名前がついているので、まるで紙を切るかのようにスーッと切れることを期待してしまいますが、実際は違います。ガラスカッターでできるのは、ガラスの表面にわずかな傷をつけることだけです。
しかし、この傷が重要。傷をつけたガラスは割れやすくなっており、ちょっとした衝撃や力を加えると、傷に沿ってキレイに割れるのです。
直接切るわけではないですが、傷をつけて割り取ることで切断できる、というのが、ガラスカッターを使ったガラスの切り方となります。
ガラスカッターは色々な製品が売られていますが、今回、三共コーポレーションの「H&H 超硬オイルガラス切り<エース>TC-15」(実売価格1950円)が借りられたので、ガラスカットに挑戦してみました。
カッティングオイルが自動で流れ出る
ガラスカッターにはいくつか方式がありますが、TC-15はヘッドの先端にローラーチップを装備しているタイプ。このチップがガラスの表面に傷をつけてくれます。
ローラーチップはどの角度でも刃先がガラスに当たりやすいため、使いやすい角度で保持できるのがメリット。といっても、ローラーチップではなくヘッドがガラス面に当たってしまうほど寝かしてしまったらダメですけどね。
ヘッドは軸に固定されておらず、左右45度くらい振れます。ぐらぐらするため、直線を引くのが難しそうに感じてしまいますが、むしろこの逆。ガイドとして厚めの定規や板を使い、ここにヘッドを当てることで、軸のひねりに影響されることなくヘッドが真っ直ぐ動いてくれます。
なお、直線定規ではなく曲線の型を使えば、カット用の曲線をキレイに引くことができるでしょう。ヘッドが左右に振れるため、軸の回転だけで曲線に追従させなくてもいいというのが強みになります。
ちなみに、曲線でカットする場合は先端が見やすく、ヘッドも左右に動かしやすいほうが有利。そのため、より曲線カット向きのガラスカッターとして、ヘッドの小さい「H&H 超硬オイルガラス切り<R>TC-1」(実売価格1700円)という製品もラインアップされています。
唯一、ガラスカッターで面倒なのは、カットする部分にオイルを塗る必要があること。オイルがあると割りやすくなるほか、傷をつける際のガラス粉の抑制、ローラーチップの痛み軽減といった効果があります。
このオイルを自動で供給できるようになっているのが、TC-15のいいところ。どうすればいいかといえば、本体後部のネジを外して、中にカッティングオイルを補充しておくだけ。これだけでカット時に自動でオイルが流れ出るようになり、別途塗る必要がなくなります。
ちなみに、カッティングオイルは専用品も売られていますが、灯油やミシン油などで代用できるようなので、入手しやすいものを使うといいでしょう。
実践!ガラスを切ってみる
まずは基本として、シンプルな直線切りを試してみました。用意したのは、分厚い定規の代わりとして、3mmのアクリル板、それと試し切り用のガラス板です。
ガラス板はホームセンターなどで購入できますが、今回は、手っ取り早く100円ショップで入手してきました。サイズは小さいですが、ガラス板が使われているフォトフレームからの流用です。
TC-15の切断可能板厚は、2〜8mm。今回用意したガラス板の厚みは1.1mmしかありませんが、ちょっと試す分には大丈夫でしょう。
ガラス板の上に3mmのアクリル板を載せてガイドにし、TC-15を当てて真っ直ぐ引いてみました。ガラス面に傷がつく軽めの「ジャーッ」という音が聞こえます。
ガラス面をよく見ると、傷がついていることが確認できます。後は、切込みの入った板を割る要領で軽く力を入れると、パキッと割り取れました。
なお、今回は最後の割り取りを素手でやりましたが、破片が怖いので、手袋や保護メガネを装着したほうがいいでしょう。手で割るのが怖い場合は、裏返してガラスカッターの後部、オイルの蓋を兼ねたネジ部分でコツンと叩くのもアリです。
このほか、ガラスカッターで入れたラインにそって挟んで割るための「ランニングプライヤー」という専用工具もあります。厚めのガラス板だと割る際に失敗確率が高くなりますから、こういった工具を用意するのもおすすめです。
続いて、曲線のカットも試してみました。やり方は直線と同じですが、ガイドなしのフリーハンドで傷をつけるという点が異なります。なお、急な角度で切るのは難しいため、緩やかな曲線用だと思ったほうがいいでしょう。
直線、曲線に共通したカットのコツは、とにかくしっかり傷をつけること。ガラスカッターをやさしく握って作業してしまうと微妙な傷になり、うまく割れてくれません。グッと指に力を入れ、押し付けながら動かすとよさそうです。
ガラスを切断した後はケガに注意
ガラスの切断面はかなり鋭利で、ナイフと同じかそれ以上。軽く触れただけでスパっと切れてしまうため、ケガに注意してください。なるべく早く、ヤスリや砥石などを使って角を丸めておきましょう。
TC-15で切断できる厚みは2〜8mmとなっていますが、ランニングプライヤーを使えば、これ以上の厚みもカットできます。といっても、個人の工作で8mmを超える厚みのガラスを加工することは、まずないと思いますが……。
なお、切断できるのは一般的なガラスのみで、強化ガラスは対象外。強化ガラスは割れる際に粉々に砕ける性質がありますから、傷はつくかもしれませんが、割り取ることはできません。
ステンドグラスのように、ガラスがメインの工作で必須というのはもちろんですが、自作液晶ディスプレーのケースを作るとか、小さなのぞき窓にガラスをはめ込みたい、といったときにも、ガラスのカットが必要になります。そんな時に、このガラスカッターが役立ってくれるでしょう。
●お気に入りポイント●
・手作業で好きなサイズにカットできる
・オイルが自動で流れてくれる
・直線だけでなく曲線カットも可能
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