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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第51回

“生成AIゲーム”急増の兆し すでに150タイトル以上が登録

2024年01月29日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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「イナズマイレブン」レベルファイブも生成AI技術を応用

レベルファイブが公開した講演資料より。妖怪ウォッチに登場するキャラクターの見た目の検討のために、Stable Diffusionが使われている

 国内でも、大手ゲーム会社の生成AI技術を使ったゲーム開発の事例が出てきています。

 2023年12月には、内閣府が主催する「AI時代の知的財産権検討会」で、ゲーム会社のレベルファイブがゲーム開発に生成AI技術を応用していることを明らかにしました(注:筆者も委員として参加)。2024年4月に発売が予定されている「メガトン級ムサシW」、「イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード」の開発に画像生成AIを使っているというものです。ゲームで重要なゲームタイトル画面のレイアウト案出しや、3Dのキャラクターテイストの案出し、背景美術の案出しなど、様々なところで使っていることが紹介されました。

 方法としては、画像生成AIで出したイラストをそのまま使うのではなく、あくまでも実際に人間がイラストを作成するときの参考にするというもの。日野晃博社長は、生成AI画像をそのまま使うのではなく、人間が手を加えるというということをルールとして、特に社内で使用に制限は加えていないと話しました。

 法律に関して言えば、あくまで参照として使っていることもあり、少なくとも日本の著作権法上の違法性はまったくないと考えられます。

 ただ、レベルファイブのタイトルは、「ニンテンドースイッチ」などの家庭用ゲーム機向けともに、SteamでのPC版の発売が予告されています。12月時点ではSteamで販売できるのかが確定的とは言い切れないとも考えられました。しかし、Valveの方針転換により、これらのタイトルも問題なくSteamで配信できることになったと言えます。

生成AI使ったゲーム会社に対する「魔女狩り」も

スクウェア・エニックス桐生隆司社長の年頭所感

 一方、アメリカでの生成AIに対する拒否感は強く、しばしば「魔女狩り」とも呼ばれる行為も見られます。最近の例としてはスクウェア・エニックスがありました。

 イギリスのゲームメディア「Video Games Chronicle(VGC)」の1月16日掲載の記事で、取材に答える形で、開発中のゲームFOAMSTARS(フォームスターズ)」の一部にMidjourneyを使用したことを明らかにしています。

 プロデューサーの岡谷洸佑氏は、使用したのは「FOAMSTARSのサウンドトラックに収録される楽曲のゲーム内アルバムジャケットの作成」のみで、割合としては「ゲーム全体の0.01%以下」だと答えています。違法性は問えないと思えますが、記事の論調としては、生成AI利用をことさら強調し、否定的に読み取れる内容でした。実際、同誌が記事を告知したXの投稿はスクウェア・エニックスに対しての批判的なコメントであふれかりました。

 スクウェア・エニックスは、1月1日に公開した桐生隆司社長の年頭書簡でもAIへの積極的な取り組みを明らかにしています。

 「AIをはじめとした先端技術をコンテンツ開発、パブリッシング両面で積極的に活用し、短期的には、開発プロセスの生産性向上やマーケティング活動の高度化、中長期的には、技術革新をビジネスチャンスと捉えた新たなコンテンツづくりへとつなげていきたいと考えています」

 法的な妥当性に関係なく、この発言と合わせて、同社には生成AIを同社が利用していることそのものに批判的な意見が見られる状況です。

GDCの調査では半数が「生成AI利用」

 一方で、ゲーム会社での生成AI利用は世界的に広がっていると考えられます。

 毎年春に開催されるGame Developers Conference(GDC)が、来場者向けのアンケート「ゲーム産業レポート2024」を公開しました。ゲーム会社目線でのゲーム産業の実態調査をまとめている調査で、今年初めて生成AI利用についての項目が入っています。

Game Developers Conference(GDC)が毎年まとめている「ゲーム産業レポート」

 それによると、アンケートに答えた3000名のうち、生成AIを31%が利用しており、自分が使っていないが会社で同僚が利用している18%を含めると、実に参加者の49%の所属企業が生成AIを利用しているという実情が示されました。

 一方で、利用部門はビジネス&ファイナンスが44%、コミュニティ/マーケティング/PRが41%と、開発のメインではない部分が多いようです。プロダクション&チームマネジメントが33%、プログラミングが25%、ゲームデザインが21%、ビジュアルアートが16%、オーディオが14%、ライティング(文章)が13%、品質管理が6%と続きます。

 利用者の所属企業では、インディーズゲームスタジオの利用率が高く37%で、大手スタジオでは21%と導入には、企業規模により濃淡があるようです。

 ただ、留意すべき事項として、生成AIの導入が進む一方で、「ゲーム業界で生成AIを使うことへの倫理性を懸念していますか?」という質問に対し、「非常に懸念している」が42%、「やや懸念している」が42%、「全く懸念していない」が12%と、合計84%の人が懸念しているという回答がありました。

 レポート内のコメントを読むと、生成AIの学習データに対する懸念が挙げられていると同時に、生成AIにより雇用が減少する不安にも直結しているように見えます。マイクロソフトを始め、アメリカの大手ゲーム会社では、コロナ期に巣ごもり需要によって市場が拡大したときにスタジオを拡大した反動が起きており、従業員のレイオフ(解雇)が相次いでいます。

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