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岐阜大学・上原雅行准教授に聞く『アントレプレナーシップ教育』とは

文部科学省も推進する人生の可能性を広げてくれる教育

提供: 岐阜アントレプレナーシッププログラム/岐阜県

 近年、よく耳にするようになったアントレプレナーシップ教育。「アントレプレナーシップ=起業家精神」と表現されることもあり起業家を育てる教育というイメージをお持ちの方も多いはず。間違いではないが、実際は少し違う。今回は、アントレプレナーシップ教育とは、そしてその重要性について、岐阜大学の上原雅行准教授に話を伺った。

「アントレプレナーシップ教育には、人生を切り拓くヒントがある」

――アントレプレナーシップ教育とは、どのような教育プログラムでしょうか?

 まず、アントレプレナーシップとは、文部科学省のWebサイトにて「様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく力※」と紹介されています。アントレプレナーシップ教育は、こうした精神や姿勢を身に付けるための教育プログラムで、「自ら社会課題を見つけ、課題解決に向かってチャレンジしたり、他者との協働により解決策を探求したりすることができる知識・能力・態度を身に付ける教育※」となります。

 よく誤解されるのですが、必ずしも起業家や起業を考えている人だけに向けた教育ではありません。いまは将来を予測することが極めて難しい時代で、人生100年時代とも言われます。そんな時代において自分らしいキャリアを構築し、ワクワクできる人生、幸せな人生を切り拓いていける可能性を高めてくれるのがアントレプレナーシップです。

※引用元「文部科学省主催 令和4年度科学技術人材養成等委託事業 全国アントレプレナーシップ 人材育成プログラム」

文部科学省アントレプレナーシップオフィシャルサイトより(https://entrepreneurship-education.mext.go.jp/)

――中学生・高校生年代でアントレプレナーシップ教育を受けることは、どのような効果が期待されるでしょうか?

 主に次の二つが期待できると思います。一つが、社会の課題や身の回りの困りごと、より良くしたいことを自ら考え見つけ、行動して解決する力を修得できることです。自分がやりたいことやなりたい姿を見つけてライフワークに変えていく力も身に付くかもしれません。もう一つが、若い世代の皆さんがアントレプレナーシップを発揮することで、将来的にイノベーションを起こし、世の中に新たな価値(革新的な商品・サービスなど)をもたらすことです。結果として、地域社会経済の活性化と発展、新産業創出を促進します。

――就職活動にスポットを当てますと、アントレプレナーシップ教育で学んだ力はどのような場面で発揮されているのでしょうか?

 生成AIなどが身近になりつつある昨今、企業は指示を待つだけの人間はあまり求めていません。新規事業の創出だけでなく、日常業務の中で自ら問いを立てて行動し、解決できる人材は企業にとっても貴重な存在です。今は副業を解禁する企業も増えてきています。会社を辞めて起業するのはリスクが高いと思う人でも、会社に籍を置きながらチャレンジできることもあります。アントレプレナーシップを身に付けた人材なら、おそらく週末起業家になったり、自ら考えてキャリアアップにつながる転職をしたりしていくのではないでしょうか。

出典:パーソル総合研究所「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」

「中高生には早くから社会で活躍する大人と出会い、視野を広げてほしい」

――岐阜大学ではどのようなアントレプレナーシップ教育を行っていますか?

「授業」と「独自のプログラム」と「起業部」を連動させた、体系的アントレプレナーシップ教育プログラムを実施しています。この連動というのが岐阜大学の特色です。大学生だけではなく、高校生も参加できるプログラムも用意しています。詳しくは岐阜大学のWebサイトで確認いただけたらと思います。

――岐阜大学 起業部の顧問としても活躍されています。アントレプレナーシップ教育を通して、学生の変化を感じますか?

 もともとアントレプレナーシップマインドを持っていたケースもあると思うので、定量的に測るのは難しいのですが、ビジネスコンテストにエントリーしたり、学生団体や会社を設立したり、一歩踏み出す学生は確実に増えてきました。

 具体的な例ですと、コロナ禍において、学生同士のコミュニケーションが希薄になっている課題がありました。せっかく大学に入学したのに、授業に出られない、友達ができない。そんな課題を解決すべく、岐阜大学の学生だけが利用できるネット交流サービスを考案しました。これは大学公認のサービスとして、多くのメディアでも取り上げられました。また最近ですと、「捨てられるバナナから、フィリピンと世界を結び、社会問題に別解を。」というテーマで、学生がビジネスモデルを考案。これは「第13回ビジネス創造コンテスト」で最優秀賞(全国1位)に選ばれるほど注目されています。

 冒頭で「自ら社会課題を見つけ、課題解決に向かってチャレンジ」とお伝えしました。学生たちは、身近なことでもグローバルなことでも自ら課題を見つけて、解決に向かって行動する姿を見せてくれました。

岐阜大学アントレプレナー育成プログラム(https://tongali-gifu.net/program/ )

――中高生の保護者の方に向けてメッセージやアドバイスをお願いします。

 アントレプレナーシップは、これからの人生を切り拓く上で必要になる力です。地域の自治体や大学、民間企業が企画・開催しているアントレプレナーシップ関連の教育プログラムやイベント、例えば、岐阜県では「岐阜アントレプレナーシッププログラム」や「岐阜大学アントレプレナー育成プログラム」など、機会があればお子さんにご紹介していただければと思います。

 こうしたプログラムやイベントを通して、社会で活躍するいろいろなロールモデル(起業家やビジネスパーソン)を知ることができると思います。例えば、アントレプレナーシップを発揮して地域で活躍している副業起業家(会社員起業家)と交流することで、お子さんたちの将来の選択肢も大きく広がり、自分がやりたいことやなりたい姿に出会える可能性も高まると思います。学校外のプログラムなども積極的にご活用いただければと思います。

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上原雅行
国立大学法人 東海国立大学機構 岐阜大学
学術研究・産学官連携推進本部 副部門長
高等研究院 准教授
起業部 顧問



PROFILE/大阪大学にて医学博士号を取得後,大手電機メーカーにて医療健康分野の新規事業創出に従事。企業時代に、非営利組織 生命科学教室を創設。
2017年より現職。教育研究業務のほか、産学官連携促進・アントレプレナー育成・大学発スタートアップ創出など、大学運営業務に携わる。2020年、大学公認の「起業部」を学生と創設(中部地域初)、顧問教員を務める。2022年「おとなの起業部」を創設、代表を務める。