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社会課題をビジネスで解決「岐阜アントレプレナーシッププログラム」イベントレポート

中高生が独創的なビジネスモデルを発表

提供: 岐阜アントレプレナーシッププログラム/岐阜県

計73名が参加!高い関心が見受けられたアントレプレナーシップ教育

 岐阜県では、地域産業の担い手の育成と経済をけん引する新しい産業やイノベーションを創出するために、アントレプレナーシップ教育の普及に力を入れている。こうした取り組みを広げていこうと、2023年12月16日に『INNOVATOR’S VILLAGE』(岐阜県岐阜市)、17日に『ソフトピアジャパンセンター』(岐阜県大垣市)にて、岐阜県在住または在学の中高生を対象にしたイベント「岐阜アントレプレナーシッププログラム(Gifu EP)」が開催された。

 中高生を対象にしたアントレプレナーシップ教育のイベントを開催するのは、岐阜県として初めての試みとなる。いざ開催してみると、両日合わせて73名が参加したのは、学生自身はもちろん、学校関係者や保護者もアントレプレナーシップ教育に高い関心を持っていたからだろう。

12月16日『INNOVATOR’S VILLAGE』での様子

12月17日『ソフトピアジャパンセンター』での様子

 アントレプレナーシップ教育について簡潔に説明すると、文部科学省のHPには「アントレプレナーシップとは、様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神」とある(https://entrepreneurship-education.mext.go.jp/)。

 肝心なのは、起業を目指す人だけに向けた教育ではないこと。アントレプレナーシップ教育は、起業家精神を養うことは目的の一つだが、将来的に起業する、しないに関わらず、変化の激しい社会を生きていくうえで欠かせない素養を身に付けるための教育といえる。学生からすると、自ら考える力が進路を選択する際の手がかりになる。就職活動にフォーカスしてみても、企業側は能動的な姿勢の人材を求めているはず。こうした点からもアントレプレナーシップ教育は、これからますます注目されていく分野のひとつといえるだろう。

アイデアを出し合い、チームのプランに落とし込んでいく

学生が考えたビジネスモデルを有識者が真剣にアドバイス

 今回のイベントには、起業に精通する有識者が講評者として参加、中学校・高等学校からも多くの学校関係者が見学に訪れていた。

 両日とも大まかな流れは同じで、午前が中学生の部、午後が高校生の部として実施。参加者は2〜6名程度のグループに分かれて、各グループを1名の大学生・大学院生・社会人がメンターとしてサポート。今回のイベントでは、16日は岐阜大学の大学生や大学院生が、17日は朝日大学の大学生が参加してくれた。

 事務局および審査員の挨拶に始まり、起業家診断テスト、当日のプログラムについての説明、社会課題の発見と解決のアイデア出し、有識者へ相談、ビジネスモデルの構築、グループで考えたビジネスモデルの発表、ビジネスモデルについて詳しく説明するポスターセッション、審査員の講評、参加者の感想と続く。

ポスターセッションでは、各チームのプランを参加者が熱心に聞き入っていた

 社会課題や日常生活におけるニーズを書き出し、用意された紙にまとめ、それらを解決することがどうしたらビジネスとして成立するか、グループに分かれてディスカッションする学生たち。途中、有識者へ相談する時間では、中高生が考えたビジネスモデルに対して「利益は上げられるのか」「誰からお金を払ってもらうのか」と、有識者たちが真剣にアドバイスしていた。ただし、学生の意見を頭ごなしに否定しない。発言しやすいように「イエス・アンド話法」や、「なぜなぜ分析」などを意識してアドバイス。そうした背景もあってか、世代を超えて活発に意見を交換する様子が見受けられた。また、中高生からすると、家族や親戚を除けば、大学生やビジネスパーソンと触れ合う機会は少ないはず。世代を超えたコミュニケーションの時間だけでも十分に価値があったように思う。

 今回、学生たちが考えたビジネスモデルをいくつか抜粋して紹介したい。

空き家を改装して白川を満喫!「中学生ホテル」(16日中学生の部)

VRも活用した岐阜発のテーマパーク「BACK TO THE 戦国」(16日中学生の部)

シャッター街を活用したおばけやしき「あなたをマッテイタヨ」(16日高校生の部)

学生向けのコミュニティスペース「みんなのGラボ」(16日高校生の部)

観光地で活用!言葉の壁を壊すアプリ「Gmap」(17日中学生の部)

スマートフォンなどの利用に制限時間を設けることで利益を生むサービス「GLP」(17日中学生の部)

灯油でも電気でもガスでも動く「ハイブリッドストーブの開発・販売」(17日高校生の部)

誰にも迷惑をかけずにストレス発散できる「はしゃげるBOX」(17日高校生の部)

 どれも思いつきではなく、グループで意見交換を重ね、社会課題の視点を持って考えられたもの。ビジネスモデルの発表やポスターセッションでは、堂々と大人たちに説明する姿が印象的だった。最後に発表された審査員や起業家の方の講評を一部抜粋したい。

「日常で気付くちょっとした課題を解決することで、その課題解決を望んでいる人が1人はいる。それが何十人何百人と増えていくことで、世の中を変えていくことにつながっていく。普段から日常で気になったことは、どうやって解決するといいのか?と考えていくことで、デザイン思考なども学んでいってほしい」

NOBUNAGAキャピタルビレッジ 太田匡紀氏

「誰かに意見を聞くことはすごく大切です。仲間とディスカッションをすることでアイデアも広がります。みなさんはこれから多くのことを経験していくと思いますが、それが固定概念につながってしまうこともあります。自分の考えが正しいのか、誰かに確認する習慣を身に付けてもらえたらと思います」

NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE 山下哲央氏

「ビジネスは仕組み化することが大切です。みなさんが考えたモデルには、さまざまな地域の資源を循環させるアイデアが盛り込んであり、素晴らしいと思いました。また、課題を複合的に解決されているモデルも多かったです」

朝日大学 中畑千弘氏

「日常で『困っている人がいるな』と気づいたら、ひとつ行動を起こしてみてほしい。それはどのような反応があるかわかりませんが、次のアクションにつながるタネになると思う。考えてみたことを行動に移すということを考えてみてください。みなさんの行動で誰かを笑顔にしてほしいと思います。今日考えたアイデア、学習したことを今後も生かしていただきたい」

ファイバークレーズ 長曽我部竣也氏

 イベント終了後、参加した中高生から聞こえたのは、「もっと自分の考えを整理して話せるようになりたいと思いました」「普段は接することのない大人と話すことができてよかったです」「同世代の学生に刺激を受けました」など、前向きな言葉ばかり。こうした経験を生かし、自ら考えて行動する習慣が身に付いていくのだろう。

 大成功に終わった今回のイベント。今後も岐阜県ではアントレプレナーシップ教育に力を入れていくとのことなので、少しでも興味があればこうしたイベントに参加してほしい。

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