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久留米市が新規事業創出とスタートアップエコシステムの形成を目指す「START-K」プロジェクト始動

久留米市「START-K」プロジェクトの始動と目指す未来

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 福岡県久留米市が市をあげて、起業家やスタートアップなどの支援を行う。2023年7月、久留米市は「久留米から本気で挑戦する“若者”を応援する」というビジョンを掲げた「START-K(令和5年度 若年層向け創業人材育成プログラム)」を開始した。

「START-K」は次世代を担う若年層(大学生など35歳未満)の独創的なアイデアの実現をサポートすることにより、久留米発の新たなビジネスを創出する取り組みだ。具体的なプログラムとして「KURUME START FOUNDING ACADEMY」が進められている。2024年2月10日には、2023年秋に実施した創業セミナーの選抜者がビジネスプランを披露する、「START-Kデモデイ」も開催される。

 今回「START-K」のキックオフの場として設けられた2023年7月6日開催の「The Partyz Kurume 2023 kickoff」の様子と「START-K」を主催する久留米市の新産業創出支援課の担当者を取材。プロジェクトの概要や具体的な支援内容などについて話を伺った。

「START-K」キックオフに久留米市長や久留米の起業家らが登壇

 久留米市中央公園内のカフェ兼イベントスペース「KURUMERU」で、「The Partyz Kurume 2023 kickoff」が開催された。「START-K」の始動にあたり、起業志望の大学生や久留米市職員、プログラムで実際に起業家支援を行う支援者などが交流した。

久留米市長 原口 新五氏

 開会の挨拶には久留米市長の原口新五氏が登壇。「久留米市には、独創的なアイデアを持つ学生や若年層の方々が多い。その証拠に参加者30名程度を想定していた本イベントに、2倍の60名が集まった。私も20代の頃に起業を検討していたが、あっという間に時間が過ぎてしまった。ぜひ『START-K』を活用し、ビジネスアイデアを形にしてほしい」と語った。

久留米副市長 森 望氏

 久留米副市長の森望氏も登壇し、「起業に興味がある方や具体的なアイデアを持っている方などを、久留米市をあげて支援していきたい。自身の夢を実現することで、久留米市を盛り上げてほしい」と挨拶を述べた。

久留米市の起業家や「START-K」での支援者によるパネルディスカッション

 参加者の約半数を大学生が占めた「The Partyz Kurume 2023 kickoff」。メインプログラムの「久留米市の起業家によるトークセッション」では、久留米市発の起業家や「START-K」で創業支援を行う支援者などが「先輩起業家と考える、久留米のスタートアップ」をテーマにパネルディスカッションを展開した。

■モデレーター
・合同会社VisionAreal 共同代表 おきなまさひと氏
■登壇者
・株式会社ASO 代表取締役社長 宮井智史氏
・株式会社SCREAM 代表取締役CEO 古田森也氏
・株式会社SCREAM ブランドディレクター 加藤万理氏
 

── 「好きなことを仕事にするべき」について、どう思いますか。

株式会社ASO 代表取締役社長 宮井 智史氏
久留米市出身。シニアインキュベーションマネージャーとして大分県を拠点に起業支援に従事。「KURUME START FOUNDING ACADEMY」で起業支援を担当する。

宮井智史氏(以下、敬称略):私は仕事の98%がつらくても、残りの1~2%が好きだから続けている感覚があります。好きという感情がモチベーションの源になっているわけです。

加藤万理氏(以下、敬称略):私も古田も最初からアイスクリームが心底好きだったわけではありません。事業を進める中で、アイスクリームに夢中になっていきました。

古田森也氏(以下、敬称略):事業を進める中でアイスクリームを好きになった理由は、アイスクリームを通じて多くの出会いに恵まれたからだと思います。売上が増えることよりも、自社ブランドの「SCREAM ICE CREAM」という船に次々と人が乗ってくれることがモチベーションになっています。

── 起業するうえで重要なことは、何だと思いますか。

株式会社SCREAM 代表取締役CEO 古田 森也氏
福岡のスタートアップで取締役を経験後、実家のアイスクリーム屋「古蓮」をルーツにしたSCREAMを共同創業。

加藤:生き方の軸を持つことです。自分がどうしたいのか、何を大切にしたいのかなどが明確なら、たとえ同世代の成功者を目にしても、嫉妬したりブレたりすることはありません。また、起業を経験して言えるのは、資金や知識、スキルなどは後からでも手に入れられるということです。そのため生き方の軸が持てたら、ハードルを感じ過ぎることなく起業に挑戦してほしいと思います。

古田:起業するうえでは、家族や友人を大切にしておくことが重要です。起業当初、資金不足で悩んでいたときに頼れたり心理的なセーフティーネットになってくれたりする存在は、自分にとって非常に大きいものでした。

宮井:支援者から見た、成功する起業家の共通点は、事業へのビジョンや思いを発信し、その実現に向けて地道な努力を積み重ねていることです。「KURUME START FOUNDING ACADEMY」の支援でも、やりたいことの言語化からサポートしようと考えています。

──創業時に苦労したことと、乗り越えた方法を教えてください。

株式会社SCREAM ブランドディレクター 加藤 万理氏
新卒でサイバーエージェントに入社。退社後は個人で絨毯の販売を手掛ける。その後、古田氏とSCREAMを共同創業。

古田:一番苦労したのは資金繰りです。倒産するかもしれないという焦りを隠し、周りの人には笑顔で接していたこともありました。今も資金に大きく余裕があるわけではないのですが、心の面で課題をポジティブに捉えて乗り越えていく力が身に付いたと思います。

加藤:得意なことも苦手なことも、すべてやらなければならないことです。会社員時代は任された仕事をこなして、やりたくない仕事からは逃げられる環境でした。ただ、今は自分の行動がすべて業績やブランドの在り方につながるので、やるしかないと吹っ切れたところはあります。

宮井:経理や事務所の掃除など、すべて一人でやっていたことがつらかったです。それでも地道な努力を積み上げたことで、今では苦手な業務を人に任せ、やりたい仕事にフォーカスできるようになりました。

──起業支援ではどんなことが重要になるでしょうか。

合同会社VisionAreal 共同代表 おきなまさひと氏
まちづくりプロジェクトの一環で久留米市でコワーキングスペース「Mekuruto」を運営。「KURUME START FOUNDING ACADEMY」で起業支援を担当する。

宮井:支援者が起業家と同じ目線で、共に考えられる存在であり続けることです。起業家の先輩や有識者に一度話を聞くだけでは、得られる成果は少ないでしょう。「START-K」では、プログラムの終了後も一生付き合うつもりで支援したいと考えています。

おきなまさひと氏:たしかに、単発の起業セミナーに参加したものの、起業が前進しなかった経験をしたことがある人は多いと思います。「START-K」では支援者や先輩起業家、起業志望の若者などでコミュニティを形成し、途切れることのない支援を提供していきます。

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