KDDI、医療スタートアップ、初代デジタル大臣、神戸市長、浜松市長など多彩なゲスト
4年ぶりのリアルAWS Summit 基調講演は生成系AIとパブリックセクター
2023年04月21日 09時00分更新
制作や経営の決定にエンジニアの参画を期待したい
後半、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パブリックセクターの宇佐見 潮氏は、自治体や公共での取り組みについて説明した。スパコン富岳のアプリケーションとソフトウェアをAWS Graviotn3/3E上で動作させる「Virtual Fugaku」やトルコ・シリアで発生した地震の被災エリアを衛星で観測し、広域モードのデータとして公開したJAXAの取り組みを披露。テクノロジーとデータの民主化が、社会に寄与するインパクトについて説明した。
なぜクラウドが社会の変革を促進するのか? 一人ひとりがデジタルの恩恵を享受できる世界とは? 宇佐見氏と対談したのは、初代デジタル大臣 衆議院議員 自民党デジタル社会推進本部 本部長の平井卓也氏だ。平井氏は、宇佐見氏の質問に答える形で、政府のデジタル戦略について説明した。
平井氏は現在デジタル田園都市構想について、デジタルインフラをベースに「地方自治体の自主性を尊重し、サステイナブルな社会を作っていく」という構想だと説明しあ。また、デジタル庁の組織作りについて、省庁横断のニーズに応えるべく、今までの縦割りを否定するようなプロジェクトベース、アジャイル、官民一体の進め方をしているという。
デジタル庁が推進するガバメントクラウドは、国全体のデジタルインフラをクラウド化していくという取り組みだ。自治体は課題に応じてやりたいことはできるが、標準化できるものは標準化していく。「国全体のアーキテクチャを作り替える。次の世代のために今やらなければいけないこと」(平井氏)ということで、2025年をめどにある程度の形を作り上げているという。
平井氏は、「今までいろいろなことを決めていくプロセスにエンジニアの参画が少なかった。これからは企業の経営者も、政治家も、社会や企業のためになにかを決めていくためには、テクノロジーをきっちり、リスクも含めて理解している人でないとダメだと思っています。だから、政策や経営の決定にエンジニアの参画を期待しているし、今ほど自分の能力を高めるところはない。自分自身に投資をして、自ら考えて社会に参画し、変革に協力してくれる人を応援したい」と参加者に語りかけた。
データ連携基盤を活用した神戸市の事例
続いて登壇したのは神戸市長の久元喜造氏だ。久元氏は、AWSのデータ連携基盤を用いた神戸市の取り組みとして、久元氏はデータに基づく政策立案を意味するEBPM(Evidence-Based Policy Making)、ルーティンワークの自動化による業務改善、自治体サービスの共通化を図るガバメントクラウドの先行事業参画、そしてこれらを実施していくデジタル人材の育成などを実施しているという。
久元氏は保育所の適切な配置を例にしたEBPMの事例を披露。また、政令指定都市としては初めて住民記録システムと共通基盤システムをAWSのガバメントクラウドに移行。先行的に検証した結果、わかったのは「安全性」だという。「今のプライベートクラウドでも災害時のバックアップはできるが、大変時間がかかります。ガバメントクラウドでは予備サイトがあるので、災害時にただちに立ち上げることができます」と久元氏は語る。
さらに、神戸市では、こうしたクラウドの活用を可能にする人材を内部的に育成するとともに、外部人材の登用も進めているという。「決められたマニュアル通りに実施する職員ではなく、データ連携基盤を使って、自らの仕事をデザインできるような職員。キーワードは創造性です。クリエイティブな人材を採用し、クリエイティブに仕事をできるようにしていく。これが神戸市の方針」と久元氏は語る。