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「バックアップ首都構想」「宇宙産業集積の推進」などの支援も目的に掲げる

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

2023年08月18日 12時40分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、北九州市と連携協定を締結した。2023年8月17日、北九州市役所において両者が協定書に署名した。

 この連携協定には、北九州市が目指す「バックアップ首都構想」の実現や、行政や地域のDXの促進支援、スタートアップ企業に対する支援のほか、宇宙産業の推進についても支援することが盛り込まれている。連携期間は1年間で、両者の話し合いにより更新するとしている。

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

AWSジャパンと北九州市による連携協定の概要

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

連携協定締結式に出席したアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ) 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏(左)、北九州市長の武内和久氏(右)

国内4例目の自治体連携協定、「成長への再起動の起爆剤に」と期待

 連携協定の締結に至った背景について、北九州市長の武内和久氏は、「2023年5月と7月にAWSジャパンを訪れてトップセールスを行い、北九州市の市政の方向性や、モノづくりを中心とした産業基盤にデジタルを掛け合わせた“産業のハイブリッド化”を目指す方針に共感を得ることができた」ことを挙げた。

 「世界的企業であるAWSと連携協定を結ぶことは、北九州市にとって大きな一歩になり、成長への再起動の起爆剤になる」「バックアップ首都構想の実現に向けた包括的な連携であり、AWSジャパンが持つノウハウやネットワークが活用できることに期待している。人材育成やイベント開催を足掛かりに、IT企業の集積、未来産業の振興につなげ、バックアップ首都構想の実現を確かなものにしていきたい」(武内氏)

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

AWSジャパンとの連携を通じて北九州市が期待するステップ

 AWSジャパンが国内の自治体と連携協定を結ぶのは、つくば市、浜松市、新潟県に続き、4例目となる。

 AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏は、「AWSジャパンは、クラウドによって誰もが高度なテクノロジーとデータを利用できる『テクノロジーとデータの民主化』を目指しており、その実現に向けて公共分野における取り組みを加速している。全国の自治体のイノベーションを支援し、よりよい社会の実現に貢献するための連携を図ってきた経緯がある」と説明した。

 「北九州市は『デジタルで快適・便利な幸せなまち』の実現を目指し、デジタルの価値を最大限活用して、市民サービスの向上と市役所業務の効率化に取り組んでいる。デジタルを活用する市長のリーダーシップとデジタルインフラが整っているが、足りないのは働く人たちのスキルや機会であり、AWSジャパンはそこに貢献できる。北九州市に伴走し、企業の誘致やデジタル人材の育成を支援する」(宇佐見氏)

「バックアップ首都構想」「スタートアップ」「宇宙産業」などがテーマ

 「バックアップ首都構想」は、災害リスクに強い基盤や充実したインフラなどを持つ北九州市のポテンシャルを生かし、首都圏に集中する企業本社やデータセンターなどを誘致して、日本全体の“バックアップシティ”としての役割を担うことを目指す構想。2023年2月に北九州市長に就いた武内氏が掲げる政策のひとつだ。

 今回の連携協定により、AWSジャパンのネットワークを活かした企業誘致への協力のほか、AWSの企業向けデジタル人材育成プログラムの活用などにより、進出する企業へのサポート体制強化につなげるという。「新たなデジタル人材の集積および人材育成を強力に進め、北九州市の経済構造の強化を図りたい」(武内氏)と述べた。

 また、2023年8月25日に設立予定の「IT Scrum KitaQ」にAWSジャパンが参画することも発表された。“産官学金”のネットワークにより、様々な企業を呼び込み、若者の定着を促進する活動を支援していくという。

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

「バックアップ首都構想」に関する連携協定概要

 「行政や地域に対するDX促進」では、AWSの最新技術や知見を活用したクラウドサービスの利用を検討し、AWSの多様な研修プログラムを活用した学生や市職員のデジタルスキルの向上を進めるという。「こうした取り組みを通じて、市民一人ひとりにあった行政サービスを作ることができる」(武内氏)とした。

 具体的には、北九州市の職員を対象に、AWSのパートナーが提供するクラウド人材育成プログラムの特別支援枠を提供。地域の教育機関との連携により、AWS Academyを活用して、学生を対象にしたクラウド人材育成も行うことで、認定資格の取得とクラウド業界でのキャリア構築を支援する。

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

「行政や地域に対するDX促進」に関する連携協定概要

 「スタートアップ支援」については、市内に設置しているコワーキングスペース「COMPASS KOKURA」を利用して、AWSジャパンの支援プログラムである「AWS Activate」を展開する。スタートアップ企業に対するクラウド利用の無料クレジットの提供、技術支援のほか、スタートアップ企業によるイベントの共同開催を通じて、企業間マッチングや人材獲得の支援を進める。「スタートアップ企業の事業拡大、新たなビジネス領域への進出などにより、北九州市内でのスタートアップエコシステムを強化していく」(武内氏)とした。

 「AWSはスタートアップ企業の支援で数多くの実績がある。NETFLIXやAirbnbといった世界的に知られている企業も、もともとはスタートアップとしてAWSを利用してきた。日本においても数千社のスタートアップ支援実績がある。北九州市にAWSジャパンが持つスタートアップ企業支援のノウハウを提供する」(宇佐見氏)

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「スタートアップ支援」に関する連携協定概要

 「宇宙産業の推進」では、AWSが取り組んできた宇宙産業に関する知見やネットワークの活用、市内企業や行政に対する支援およびアドバイス、宇宙に関するアイデアコンテストやハッカソンの共同開催などを行う。北九州市は、宇宙産業の集積地を目指しており、この点においてもAWSとの連携を進める。

 宇佐見氏は、AWSジャパンが2020年から宇宙産業に特化した組織を設置し、宇宙関連スタートアップやJAXAなどの国の機関に対して、クラウド活用を通じた宇宙産業の革新を支援していることを紹介した。

 「衛星による地球観測技術や、衛星インターネット技術の発展が目覚ましく、AWSはこれらの技術に取り組んでいる公共、民間企業を支援している。NASAによる火星探査機キュリオシティミッションでは、AWSが画像と動画のストリーミングに貢献した。さらに、国際宇宙ステーションにエッジデバイスの『AWS Snowcone』を送り、科学者による画像解析を支援している。北九州市と日本の宇宙産業の発展に貢献していくためにノウハウを還元する」(宇佐見氏)

AWSジャパンと北九州市が連携協定を締結

「宇宙産業の推進」に関する連携協定概要

 なお8月25日には、AWSジャパンと北九州市の共同開催による「デジタル社会実現ツアー@北九州市」を北九州国際会議場で開催。さらに10月4日には、「デジタル社会実現ツアー@東京」を東京・目黒のAWSジャパン本社で開催し、武内氏が登壇する予定を明らかにした。

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