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KDDI、医療スタートアップ、初代デジタル大臣、神戸市長、浜松市長など多彩なゲスト

4年ぶりのリアルAWS Summit 基調講演は生成系AIとパブリックセクター

2023年04月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年4月20日・21日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンは千葉県の幕張メッセでAWS Summit Tokyoを開催した。4年ぶりのリアル開催となったAWS Summit Tokyoの基調講演では生成系AIを冒頭に取り上げつつ、ほぼ1時間を使って、政府や自治体でのクラウド活用にフォーカスした。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長 長崎忠雄氏

累積の投資額は1兆3510億円 これからも日本にコミットする

 AWS Summit TokyoはAWS Japanのフラグシップイベントで、直近では幕張メッセを会場としている。4年ぶりのリアル開催となった今回のAWS Summit Tokyoの基調講演には、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS Japan)代表執行役員社長 長崎忠雄氏が登壇した。

 長崎氏は、「AWSが東京リージョンを開設して、すでに12年経つが、日本へのコミットメントは変わらない。1国で2つのリージョンがあるのは、北米以外では初めて」とアピール。2011年以来、日本への投資額は累計1兆3510億円で、昨年だけで3450億円に上ることを明らかにした。また、GDPへの貢献も累計1兆3060億円に上るという。

 グローバルでは不透明な状況が続いているが、長崎氏はこれを変革のチャンスと捉える。たとえば、150年の歴史を誇るビール会社であるオランダのハイネケンは、サプライチェーンのデジタル化を進めることで、スマートファクトリを実現し、意思決定を高速化した。また、IoTを用いることで、生産ラインからデータを収集し、設備の保守や改善につなげているという。「成功の鍵は、大胆に考える、小さく始める、まず実行する。失敗はあるが、間違いを恐れずに進むこと」がハイネケンからののアドバイスだという。

 世界第2位の売上を持つフランスのエネルギー会社のENGIEはAWSでデータ統合基盤を構築し、数千のプロジェクトを稼働している。扱うデータは1PB以上に上っており、Amazon S3やRedShift、Kinesis Data Stream、Amazon SageMakerなどを活用し、データドリブンな経営に活用している。こうした最適化により、ある都市ではエネルギー消費量を最大15%も削減できたとのこと。「AWSのおかげで、セキュリティ、拡張性、スピード、コスト削減を同時に実現できた。トップダウンで標準化したことで、変革が成功した」というのがENGIEのコメントだ。

自社向けの生成系AIの構築を支援するAWSの取り組み

 AWSのサービスは顧客との対話から生まれるという。その1つがワークロードが増大している機械学習だ。

 長崎氏は、リコメンデーションや需要予測、ロボット、Alexa、ドローンなど20年に渡るAmazonの機械学習について紹介。また、クラウドと同じように、機械学習の分野においてもテクノロジーの民主化を進めているという。機械学習を学ぶ「Machine Learning University」や楽しみながら機械学習を学べる「AWS DeepRacerリーグ」もその1つだ。現在、AWSで機械学習に取り込んでいる企業は10万を超えるという。

 大きな注目を集める生成系AI(Generative AI)についても言及した。会話、ストーリー、画像、音楽など、新しいコンテンツやアイデアを創造する生成系AIは、「基盤モデル」と呼ばれる膨大なデータに基づいて事前にトレーニングされた大規模なモデルを搭載している。Amazonは検索機能でこの基盤モデルを投入しており、検索精度を上げたり、Alexaの教師モデルでも最小限の入力から多言語の応答を実現している。そして、昨年発表された「Amazon CodeWhisperer」は、既存コメントやコードから推奨のコードを自動生成してくれる。「社内で使って見たところ、57%も早くデータを生成できた」と長崎氏は語る。

 また、先週発表された「Amazon Bedrock」は、ユーザーのデータを用い、業務に最適化された生成系AIをサーバーレスで構築できる(関連記事:アマゾン、AWS上で生成AIを扱うクラウドサービス「Bedrock」を発表)。「自社業務、自社用途に利用できる大規模基盤モデルを構築するのが大変」「巨大なインフラの運用管理は避けたいが、コストを抑えて基盤モデルをアプリケーションに統合したい」「自社データを用いて基盤モデルをカスタマイズしたい」という3つの声に応えるべく、フルマネージドで提供され、業務に特化した生成系AIをセキュアに構築できる。

ユーザー用の生成系AIを構築できるAmazon Bedrock

 長崎氏は、「データは暗号化され、VPCの中で利用できる。IAMで権限を制御できる。AWSの包括なセキュリティ機能によって、データを守ることが可能になっている」とAmazon Bedrockのセキュリティについてアピール。基盤モデルもAmazonの基盤モデルであるTitan(自然言語処理用のTitan Next、検索やリコメンデーションのTitan Embedding)のほか、先進的なスタートアップが提供するJurassic-2(AI21 Labs)、Claude(Anthropic)、Stable Diffusion(Stability AI)の中から選択できるという。

 また、こうした大規模基盤モデルでの学習を支えるべく、自社開発の機械学習用アクセラレーターを搭載したインスタンスも新たに用意される。トレーニングに最適化されたAmazon EC2 Trn1nインスタンス、推論に特化したEC2 Inf2インスタンスが用意されており、Inferentia、Inferentia2、Trainiumなど専用のアクセラレーターにより、高いコストパフォーマンスを誇る。さらに機械学習のデータ利活用に関しては、データアクセスを容易に管理・制御する「Amazon DataZone」、社内外の関係者で安全に分析環境を共有できる「AWS Clean Rooms」もあわせて紹介した。

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