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KDDI、医療スタートアップ、初代デジタル大臣、神戸市長、浜松市長など多彩なゲスト

4年ぶりのリアルAWS Summit 基調講演は生成系AIとパブリックセクター

2023年04月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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髙橋社長が語るKDDIの変革とAWS

 残り基調講演の2/3は多彩なゲストの登壇となった。最初に登壇したKDDI 代表取締役社長CEOの髙橋誠氏は、同社が取り組む変革とAWSクラウドの利用について披露した。

KDDI 代表取締役社長CEOの髙橋誠氏

 KDDIは「『つなぐチカラ』を進化させ、誰も思いを実現できる社会をつくる。」という2030年に向けたビジョンを掲げた。こうした中、さまざまな社会課題に直面し、不透明感の増す中、データドリブンな「先読み」こそが重要になると高橋氏は指摘する。この先読みを実現するべく、現実社会をデジタル化し、シミュレーションし、リアル社会にフィードバックするのがKDDIが進める「デジタルツイン」になる。この循環を作るために重要なのが、通信、クラウド、AIになるという。

 KDDIはデータドリブン経営、モバイルネットワーク、Web3などの取り組みにおいて、クラウドの活用を進めている。オンプレミス前提のKDDIで課題だったセキュリティに関しては社内規定を構築。また、人材育成や活性化については、社内コミュニティや専門家集団であるCCoE(Cloud Center of Excellence)の構築・運営を支援していく。

 髙橋氏がフォーカスしたのはデータドリブン経営。髙橋氏は、15年前に北米の動画配信事業者の話に刺激を得て構築したデータドリブンな意思決定プロセスを、5年前の社長就任を機に全社に拡大したという話を披露。「社員もデータドリブンに物事を進めることに関しては真剣に取り組みます。ただ、組織が縦割りなんです。横串を指すためには、プラットフォームもありますし、トップの牽引力があって、初めてデータドリブン経営が実現する」と髙橋氏は語る。

 AWSに関しては、モバイルネットワークの一部のデータベースをバックアップをAWS上に構築していく。また、AWS WavelengthやIntegrated Private Wireless on AWSなどを自ら実践し、AWSともに日本企業のDXを加速していくとアピールした。

寄り添う医療のためのデジタル疾患管理システム「YaDoc」

 続いて登壇したのは、インテグリティ・ヘルスケア代表取締役社長の園田愛氏だ。2009年創業時は在宅看護からスタートし、今ではオンラインでの医療サービスを手がけている。

インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役社長 園田愛氏

 日本はこの100年で人口構成が大きく変わり、疾患や不調を抱えたまま生活を送らなければならない高齢者の数は増えた。また、疾病についても、結核や肺炎などの感染症で人が亡くなっていた時代から、がんや心疾患など長期に渡ってケアしなければならない非感染症が死因となってきた。「医療の多くの場合では、疾患とともに生きていくことを前提として、人々のよりよい生活を支えていくことが必要になってきている」と園田氏は指摘する。一方で、現在ではスマホなどのデジタルデバイスを用い、自ら健康を管理するという概念が増えてきている。マスクや消毒などの予防措置をとった今回のコロナ禍での対応も同じだ。

 人口動態が変わり、疾病構造が変わり、人々の行動様式や認識は変わったが、医療は基本的に病院で診察することに限られる。これに対して、園田氏は「医療には人々の生活とつながる新しい手段が求められています」と指摘する。こうした課題感から同社が開発したのがデジタル疾患管理システムの「YaDoc(ヤードック)」だ。「ヤー、ドクター」と語り合えるような患者と医師の親密な関係がアプリ名の由来だという。

 YaDocはかかりつけ医から患者に付与されるアプリで、患者は自らの疾病にあわせて設計されたプログラムで、日常生活で症状を記録したり、問診に応えたり、データを収集。医師はそのデータを元に症状を分析し、診療に活かすという流れだ。

医療アプリ「YaDoc」

 たとえば、偏頭痛やパーキンソン病は多くの患者がいるにもかかわらず、その症状を医師に伝えるのが難しい疾病だ。しかし、YaDocではスマートフォンやスマートウォッチを用いて、症状を医師に伝えたり、データを収集し、クラウドにアップロードすることが可能になったという。園田氏は、業界を構成するプレイヤーと医師、患者、そしてテクノロジーとの連携が重要だとアピール。「私たちの時代に医療を少しよいものにして、次の世代に渡していきましょう」とまとめた。

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