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AWS Summit New York 2023の発表内容を振り返る

AWS、生成AIアプリケーションの開発を支援する機能を多数発表

2023年08月03日 15時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年8月3日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンは7月26日に米国ニューヨークで開催された「AWS Summit New York 2023」で発表された内容を振り返る記者説明会を行なった。生成AIの開発や利用を支援するサービスやアップデートが数多く用意され、AWSの注力度が垣間見えた。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 技術推進グループ 本部長 小林 正人氏

基盤モデルや選択肢を拡充し、生成AI開発を支援

 登壇したのはアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 技術推進グループ 本部長 小林 正人氏。生成AI関連の新サービスを中心に、解説を行なった。

・Amazon Bedrockで新しい基盤モデルをサポート

生成AIを利用したアプリケーションを迅速に構築可能にするフルマネージド型の基盤モデルAmazon Bedrockで、基盤モデルの選択肢を拡充した。

新たに基盤モデルのプロバイダーとしてCohereが参画し、コピーライティング、対話、抽出、質問への応答などで利用できるテキスト生成モデルのCommand、検索、クラスタリング、分類に利用できるテキストの特徴量を取得できる言語解釈モデルのEmbedを追加した。また、最大10万トークンを入力できるAnthropicのClaude 2、高品質の画像生成を実現するStable Diffusion XL 1.0もAmazon Bedrckで利用可能になった。

・Agents for Amazon Bedrock

基盤モデル単体では完結しない複雑なタスクを処理するアプリケーションを実現するエージェント。基盤モデルと既存のシステム、社内のデータソースをAPI経由で連携し、関連情報を付与して正確な応答を返したり、処理のリクエストに応えるアプリケーションの開発を加速する。プロンプトの自動生成機能を持ち、基盤モデルが回答を導くための過程をオーケーストレーションを実現する。バージニアおよびオレゴンリージョンでプレビュー開始。

基盤モデル以外のデータソースやシステムと連携するAgents for Amazon Bedrock

・Vector Engine for OpenSearch Serverless

機械での処理を容易にする「組み込みベクトル」と呼ばれる入力データの数値表現を用いる検索をAmazon OpenSearch Serverlessで可能にする。オープンソースのOpenSearchプロジェクトの「k近傍法」が利用可能になり、インフラ管理なく、ベクトルデータベースの機能を実現できる。Amazon BedRockやAmazon Sage Makerと組み合わせることで生成AIアプリケーションを開発できる。プレビューとして開始されており、東京リージョンでも利用可能。

生成AIで分析やコード記述を支援 基盤モデル構築用のGPUインスタンスも

・Amazon QuickSightのGenerative BI機能

自然言語で行なえるデータに関する問い合わせをAmazon QuickSight QをAmazon Bedrockで提供される大規模言語モデルで強化。デモではプロンプトを用いたグラフの作成や無料版から有料版へのシフトを促すストーリーの作成などが披露。

プロンプトからグラフを生成するデモ

・患者と医師の会話を分析するAmazon HealthScribe

患者と医師との会話を分析することで、来院理由や症状、今後の計画などカテゴリーに基づいた臨床メモを自動的に生成する。生成したメモの元となる書き下し文は参照可能になっており、臨床現場でのAIの活用を促進。音声データやテキストはサービス内部に保存しないため、セキュリティやプライバシーにも配慮されている。医療ソフトウェアベンダー向けのHIPPA対応サービスで、バージニアリージョンでプレビュー開始。

・次世代のGPUインスタンス Amazon EC2 P5インスタンス

640GBの広帯域GPUメモリを利用できるNVIDIA H100 Tensor Core GPUを搭載した次世代GPUインスタンス。前世代のGPUインスタンスと比較し、AI/MLトレーニングの処理を最大1/6に短縮。トレーニング処理のコストも最大40%削減できる。

次世代のGPUインスタンス Amazon EC2 P5インスタンス

CPUには192vCPUに対応する第3世代のAMD EPYCプロセッサーを採用し、メモリは2TB、30TBのローカルNVMeストレージを搭載。GPUDirect RDMAをサポートする320Gbpsのネットワーク帯域と、第2世代のAmazon EC2 Ultra ClusterやElastic Fabric Araptorにより、最大20エクサFLOPSの分散計算能力を実現する。バージニア、オレゴンリージョンでGA済み。

・生成AIを学べるGenerative AI Foundations on AWS

生成AIを含む最新のAI/機械学習の技術を習得した人材を育てるための無償・低価格なトレーニングコース。開発者、データサイエンティスト、ビジネスリーダー、AWSパートナーなどを想定しており、2023年度内に日本語でのトレーニングコース提供を予定しているという。

・AWS Glue StudioがCodeWhisperer対応

AWS GlueのETLジョブの開発を容易にするAWS Glue Studioにおいて、AIコーディング支援サービスのCodeWhispererが利用可能になった。実行したいタスクを英語のコメントとして記述すると推奨コードが自動的に出力されるようになった。バージニアリージョンにてGA済み。

AWS Glue Studioでの推奨コードが自動生成

 さらに新サービスとして機械学習の技術により複数のアプリケーションやデータストアに保存された関連データを相互にひも付ける「AWS Entity Resolution」やペタバイト規模での医療画像を安全に保存、分析、共有できる医療向けのストレージサービス「AWS HealthImaging」なども披露された。

 今回のAWS Summit New York 2023について小林氏は、「生成AI関係はお客さまの要望やフィードバックがサービス開発に活きている。非常にAWSらしいと感じた」と総括した。

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