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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第701回

性能が8倍に向上したデータセンター向けAPU「Instinct MI300」 AMD CPUロードマップ

2023年01月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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5nmチップレットが9個、6nmチップレットが4つとのことだが……

 さて、ここからもう少し深く見ていきたい。まずSu CEOの説明によれば5nmチップレットが9個、6nmチップレットが4つなのだが、まずこの数が上の画像と全然合っていない。

 下の画像はスライドからパッケージ部を大きく引き伸ばした上で試しにレイアウトを分類してみた構図だ。

Instinct MI300の構造。区分けはしていないが、上下に配されている部分はPCIeと共用のインフィニティ・ファブリックのI/Fと思われる。これは外部接続用に用意されているものと考えられる

 構造としては、上層にCPUチップレット×3とGPUチップレット×6があり、これはいずれも5nmで製造される。その一方で、下層には6nmで製造されたチップレット×4が配される。このチップレットはHBM3のI/F×2と、インフィニティ・ファブリックのI/F、それとおそらくは大容量の3次キャッシュを持つ形になる。この下層の6nmのチップレットの想像図が下の画像だ。

6nmのチップレットの想像図

 この4つのチップレットが厳密な意味で同じか? というと少し怪しい。構図で言えば、Sapphire Rapidsの4つのタイルをどう作るかという話と同じである。

 上図で言えば、右下と左上、右上と左下はそれぞれ同じにできる「可能性がある」。ただ4つのタイルを完全に同じにするのは難しいだろう。それともう1つ、右下と左上のタイルは同一にできるか? というと不可能ではないが難しいだろう。

 左上はCDNA 3のタイルが2つ載り、右下はZen 4のタイルが3つ載る。これを同一のタイルで実装するのはけっこう至難の業である。普通に考えたら別々にするのが妥当だろう。

 そして、性能を上げるためには大容量キャッシュはどうしても必要になる。HBM3は合計の帯域は凄まじいが、GPUタイルあたり1つ、CPUに至っては3タイルで2つなので、実はCPU/GPUの演算ユニットあたりの帯域で考えるとそれほど大きいものではない。

 加えて言えば、HBMはメモリーアクセスのレイテンシーが大きい。同様に大量のHBM2eを集積するPonte VecchioはRAMBOキャッシュを別タイルの形で実装しているし、Instinct MI250Xにしてもタイルあたり8MBの2次キャッシュを搭載している。

 これはMI300も同じで、CUの塊とは別に大きなブロックがある。おそらく5nmのタイルの方に2次キャシュを搭載しており、それとは別に3次キャッシュを6nmのタイルの方に実装している、と筆者は考えている。

 ちなみにGraphCoreのBOWや、Meteor Lakeのように、この下側のタイルがパワーデリバリー用という可能性も皆無ではないが、実際には違うと考えている。それはプロセスに起因する。

 GraphCoreのBOWは公開されていない(TSMCの40nmという説もあるが、公式発表はない)が、Meteor LakeはIntel 22FFLである。連載658回でも説明したが、そもそもパワーデリバリー用であればTSMC N6である必要はまったくなく、もっと安価な28nmや40nmなどでも十分お釣りがくる。

 もちろんHBMのI/Fとインフィニティ・ファブリックのI/Fが必要なので、そのあたりを勘案するとN6の方が都合が良いのはわかるが、N6のウェハーを使ってパワーデリバリーというのは、あまりにコスト的に無駄がありすぎる。

 それに、もしパワーデリバリーが本当に必要なら、N5タイルとN6タイルの下に、さらにパワーデリバリー用の階層を設けることも不可能ではない。逆に言えば、N6タイルはそれ以外の用途に使うと考えた方がいいだろう。そしてN6は大容量のキャッシュの構成に都合がいい、という話はRadeon RX 7900シリーズの説明で述べたとおりだ。

 さて、GPUの方はこれでいいとして、問題はCPUの方だ。MI300は24コアのZen 4コアを搭載する。ということは普通に考えれば8コアのタイル×3だ。実際下の画像を見ると、CPU #1とCPU #2は普通の8コアタイルだ。

Instinct MI300の構造

 寸法から言って、Ryzen 7000シリーズやEPYC 9004シリーズのCCDとは異なる(3次キャッシュがやや大きめ?)ように見えるが、そもそもRyzen 7000シリーズやEPYC 9004シリーズのCCDがそのまま使えるとは限らない。こちらは普通のオーガニックパッケージにC4 Bumpの形で実装される。一方Instinct MI300は3D積層なので、SoICに向けた構造が必要になる。

 それはともかくとして#1と#2はまだ理解できる。理解できないのが倍近くのサイズのCPU #3である。構造的にはこれがキャッシュにしか見えないのだが、するとCPUコアの数が足りない。

 そもそも上の画像のCGが本当に正確なのか? というあたりから疑わないといけなくなっているのだが、今回実物が示されたものの、CGと一緒かどうかを判断するにはやや解像度が足りない。ということで、この件はもう少し詳細がわかるまで先送りとさせていただきたい。

Instinct MI300の実物。なにしろ1080Pの動画なので、これ以上詳細な映像がない

映像を拡大したものの、HBM3は見分けがつくがCPUやGPUのタイルの区別はつかない

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