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大手との協業 スタータアップが注意したい知財、契約

特集
STARTUP×知財戦略

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「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」について

 続いて、特許庁の芝沼氏の講演では「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」を紹介。政府は、令和4年6月7日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」のなかで、「イノベーションを促進するには(1)スタートアップの創業促進と、(2)既存大企業がオープンイノベーションを行う環境整備、の双方が不可欠である」と述べている。

「モデル契約書」は、公正取引委員会と経済産業省が大企業とスタートアップ企業の契約のあるべき姿・考え方をまとめた「スタートアップとの事業連携に関する指針」(2021年3月29日)を具体化するためのツールとして特許庁と経済産業省が作成したものだ。  特許庁のオープンイノベーションポータルサイトに「新素材編」、「AI編」、「大学編」が公開されている。モデル契約書は、契約書のひな型を示すだけでなく、具体的な契約シーンを想定し、条項のポイントが詳しく解説されているのが特徴である。また、大手企業とスタートアップ双方の事業価値を最大化することを基本理念としているのもポイントだ。

 オープンイノベーションポータルサイトには、モデル契約書についてわかりやすくまとめた解説パンフレットが公開されている。興味のある方はまずはこちらを読んでみよう。

パネルディスカッション「大手企業等との契約や知財戦略でスタートアップが注意すべきこと」

 後半のパネルディスカッションは、「大手企業等との契約や知財戦略でスタートアップが注意すべきこと」がテーマ。パネリストとして大池聞平弁理士とRehabilitation3.0株式会社 代表取締役 増田浩和氏、モデレーターとして特許庁の芝沼隆太氏が参加した。

 Rehabilitation3.0株式会社の増田浩和氏は、作業療法士として18年の臨床経験、在宅リハビリの会社経営の経験から、AIを用いて健康変化の早期発見やパフォーマンス向上をはかる「SAAシステム」を開発。睡眠中の心拍数や呼吸数、体動のセンシング情報から運動能力・認知機能を推定するAIに関連する特許2件を取得済みで、米国、欧州、中国でも出願中。また新たな技術を開発し、3件目の特許として出願を準備しているとのこと。

 増田氏が出願で苦労した点として「弁理士の探し方がわからなかったこと」「特許の知識が乏しかったので、事業化を目指しながら同時に特許の準備をしないといけないのが大変だったこと」があるという。弁理士を堺市の産業振興センターに相談して紹介してもらい、不足していた知財知識も教えてもらえたとのこと。特許を取得したことで、企業との協業や投資家からの資金調達で有利に働いたと実感しているそうだ。

 大池氏はスタートアップが陥りやすい特許の注意点として、「出願前に発明を開示して新規性を失ってしまうことを挙げた。1年以内であれば救済される可能性があるが、海外では救済措置が受けられない場合があるので気を付けてほしい。また特許出願について、早期権利化も考えられるが、開発過程にある場合は1年以内であれば内容の追加修正もできるのでより内容を盛り込んでから審査を進めるのも手もある」とアドバイスした。

 また弁理士に相談する際のポイントとして、「知財は企業側が主体。弁理士にお任せではなく、強い権利を取るには発明者がいちばん詳しいので、さまざまなバリエーションを盛り込み、弁理士が作成した出願書類をしっかりチェックすることが大事」とのこと。これからスタートアップを支援する専門家に対しては「初期段階のスタートアップは知財知識が乏しいので、コミュニケーションを大事にしてほしい。モデル契約書など具体的なケースや資料も使うと議論がしやすい」とアドバイスした。

 スタートアップへのメッセージとして、増田氏は「知財は大きな武器になるので、ぜひチャレンジしてもらいたい。お金はかかるが、その費用が作れないのなら事業化は難しいと考えたほうがいい。」と語った。

 大池氏は「最初の出願は勇気がいると思うが、特許が取れない製品は結局、他社に参入されて負けてしまう。長く残るのは特許を取った製品。思い切って知財を戦略的に活用して成長させていただきたい。」と語った。

イベントの模様は下記、YouTubeにて全編アーカイブ配信中です。

■タイムスケジュール再生リスト
開会のあいさつ、「特許庁のスタートアップ支援施策」
-特許庁 スタートアップ支援班長 芝沼隆太氏
基調講演 「スタートアップ企業の知財戦略」
-OEK弁理士事務所、日本弁理士会 関西会 副会長 大池聞平氏
「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」
-特許庁 スタートアップ支援班長 芝沼隆太氏
パネルディスカッション「大手企業等との契約や知財戦略でスタートアップが注意すべきこと
-司会 特許庁 スタートアップ支援班長 芝沼隆太氏
-パネリスト OEK弁理士事務所、日本弁理士会 関西会 副会長 大池聞平氏
-Rehabilitation3.0株式会社 代表取締役 増田浩和氏

■関連サイト

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