第19回 ユーザックシステムのRPAで実現した業務自動化の事例

ユーザックシステムのRPAユーザーがチャレンジしたDXの進め方

本番ありきで機能強化 現場への説明を繰り返した旭シンクロテックのDX

文●大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ユーザックシステム

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 2022年4月22日、ユーザックシステムは「明日からでもDXに取り組める!旭シンクロテック直伝 中堅企業でのプロジェクトの進め方」と題したセミナーを開催し、旭シンクロテック システム効率推進グループ マネージャーの山下昌宏氏が登壇。ユーザックシステム RPAカスタマーサクセス事業本部 執行役員 矢吹政之氏の質問に答える形でAutoジョブ名人をはじめとするツールの導入のみならず、自社でのDXプロジェクトの進め方を解説した。

旭シンクロテックにとってのDX、適用シーン、推進体制とは?

 1971年創業のユーザックシステムは、昨年設立から50年を迎えた。創業当初はシステム開発のビジネスを手がけていたが、1986年に販売開始した「伝発名人」を皮切りにパッケージソフト開発に舵を切り、導入企業は累計3100社(2021年7月)にのぼる。また、2004年から販売しているRPA製品の導入も1100社を超えているという(2021年12月)。

 ユーザックシステムのRPA製品を導入している旭シンクロテックは、東京の品川に本社を構え、中部電力グループのトーエネックの子会社として配管工事、配管設計業務を中心にした製造プラント設備配管、据付、一般ユーティリティ設備を手がけている。今回登壇した山下昌宏氏は、前職でRPAの展開を成功させた後、約2年前に旭シンクロテックに入社し、DXを推進している立場だ(関連記事:RPAによる自動化とAI OCRによるデータ化を両輪で進めた旭シンクロテック)。

 旭シンクロテックにとってのDXとは「デジタル技術と業務をうまく融合させることで、お客さまと社員、取引先を幸せにする」ことだという。具体的には、「なんのための業務効率化?(理解)」「対象と範囲、全員対象者だよ(全員)」「変える、捨てる、取り入れる(勇気)」「自部門だけでなく他部門も!(連携)」「世の中の変化を敏感に感じて(変化)」「やれることは各部門でやる!(自力)」といった6つのポイントを挙げる。こうした中で山下氏は、ITやDXをキーワードに全社を巻き込んでいく役割を担っているという。

 DXの適用シーンとしては、複合機やAI-OCRでのデータ化をもとにしたRPAでの自動化やデータ連携、申請業務のワークフロー化などが挙げられる。一方で、そもそもシステム化が必要かを見直し、結果としてあえて塩漬けしたり、再検討したり、業務自体をなくしてしまうことも念頭に置いた。これらの選択は企業によってまったく異なるため、まずはどこから始めたらよいかを考えたという。

 次はDXの推進体制。旭シンクロテックではまず「DX推進チーム」を創設し、全社でDXを進めるために、まず部長・マネージャーに趣旨を説明。その上で、士気が高く、ITが得意なメンバーをDX推進リーダーとして選任してもらうことにした。DX推進リーダーはDX推進チームのサポートを受け、DX施策を推進する。まずは連携の取りやすい本社部門からスタートし、全国の営業所に展開していくことにした。

DX推進リーダーの選出と役割

 具体的にはDX推進リーダーや部門への説明会からスタートし、まずはどんな仕事をしているかを棚卸したという。その上で、DX推進チームと各部門のDX推進リーダーと検討を重ね、紙資料のデータ化、RPAによる自動化だけでなく、他部門との業務統合も行なう。これによりRPAや効率化で業務時間の削減ができたら、これを部門長やマネージャーに効果を披露し、次のフェーズに進むというPDCAを回していったという。

請求書関連の処理の自動化に1年3ヶ月 ポイントは説明と段階的な導入

 あくまで予想値と断った上で山下氏が披露したのは、おもにRPAとAI-OCRを用いた自動化の実現状況。勤怠処理で必要な36協定関連の書類送付では30時間/月、資産管理のためのデータダウンロードも同じく30時間/月、資材請求書の自動取り込みと会計処理への登録という作業の自動化では100時間/月、毎月発生する支払い情報を振込先ごとにチェックする支払いチェックでも16時間/月の効率化を実現できる見込みだという。

 このうち資材請求書の処理の自動化に関しては、紙の資材請求書をAI-OCRで読み込み、PDF化・データ変換。生成されたCSVファイルを、Autoジョブ名人とAutoメール名人、TranSpeedなどを使って基幹システムに登録するという流れをつくった。こちらは3月までに全営業所での導入を完了しているため、前述したように大きな業務時間の削減が見込まれるという。資材請求明細書に関してはさらにAI-OCRをかけたデータをExcelに貼り付けてチェックを自動化できるようにした。

 大きな効果を出せた請求書関連の自動化だが、実はここまで1年3ヶ月かかっているという。RPAの開発自体は2021年始の3ヶ月で済んでいるのだが、そこから本社ユーザー部門にロボットを持ち込み、説明と機能向上を繰り返し、実際に150件/月の処理まで進んだのは2021年8月下旬から。9月からは工事部門へ、2022年1月から営業所へと導入を段階的に進め、2月の時点でようやく1000件/月という処理量に到達したという。

 ここでのポイントは「段階的な導入」という点だ。「工事部門への導入 で創出した効果を、次の営業所にきちんと説明した。効果を理解してもらうというのがポイントだと思っています」と山下氏は指摘する。これまでの実施状況、得られた効果を説明し、さらなる効率化への協力を要請するということで、全部門に展開している。

 一方で、苦労したのは作業イメージを伝えること、そして現場の声として一部聞こえてきた「仕事がなくなるのでは?」という不安に対応することだった。これに対しては、前述したように説明を丁寧に行なうこと、そして早い段階から本番に近い動きを見せて、業務での適用イメージをつかんでもらった。「こうなるんだというイメージが沸くと、話も早い。だから、僕らは先に動くものを作って展開していった」(山下氏)

キモは業務の棚卸し 違う部門でも同じような業務は必ずある

 山下氏から工夫している点として挙げられたのは、部門長とDX推進リーダーを中心とする業務の棚卸しだ。各部門では目的ごとにさまざまな業務があるが、棚卸しを進めると、各部門で共通な業務に仕分けることができるという。「同じような業務は必ずある。全業務の棚卸しをしたのはそこにポイントがある。ある業務はロボット化でき、もしかしたら統合できるかもしれない」と山下氏は語る。

業務の棚卸しで共通の業務に仕分ける

 こうして色分けされた業務は、ワークフロー、電子証憑、クラウドサービス、AI-OCRなどさまざまなツールで効率化でき、RPAを組み合わせることでさらに自動化にまで進める。一方、場合によっては要らない業務を廃止することにもつながるため、BPRとしても有効だ。「冒頭に勇気という話が出てきましたが、捨てる勇気も重要というわけですね。意外と仕事の断捨離ができなかったりします」と矢吹氏もコメントする。

 旭シンクロテックでは、RPAとAI-OCRを中心に現在さまざまなツールの導入を進めているが、今後はデータ化・データベース化も強化し、システムの導入・入れ替えまで視野に入れる。今年度は、効率化のギアを一気に上げるとともに、建設業界で課題となっている残業時間の削減を進めていきたいという。

 各部門への具体的な展開イメージとしては、これまで資材のみだった請求書を、外注請求書にまで拡大。また、図面情報やヒヤリハット、事故情報などの紙情報もデータベース化していきたいという。また、管理部門は業務の棚卸し、類似した業務のグループ化、業務の統廃合までを推進し、人事・給与・見積・購買・会計などのシステムとの連携も実現していく予定だ。最終的には会社全体の業務を棚卸しして、部門を串刺しにして、ロボットを横展開していきたいという。

Autoジョブ名人のようなRPAが担う役割

 今後のAutoジョブ名人の活用については、基幹システムを変更するとロボットの作り直しが発生するため、画面へのデータエントリをRPAで代替するという方法をやめる。ユーザックシステムのTranSpeedを使い、基幹システムにあったデータにいったんコンバート。基幹システムへのデータの流し込みをAutoジョブ名人で行なう方法にスイッチしていくという。

変換したデータを基幹システムに流し込む方法にスイッチ

 今後、ユーザー操作やメールを用いた処理はRPAであるAutoジョブ名人、RPAで処理するデータのコンバートはTranSpeedが担うことで、スピード化を実現していくわけだ。結果として、Autoジョブ名人は基幹システムへの登録、ユーザー部門への情報共有、経営ダッシュボードへの登録、データベースへのエントリなど、まさに手間だけがかかり、人手でミスが出やすそうな処理を確実にこなしていく存在となっていく。

 最後に、山下氏はDXの推進するポイントとして、「社内での理解と協力体制を確立する」「棚卸しを実施して業務を把握し、効率化を図る」「身の丈にあったサービスを活用する」「横の部門を意識した連携を強化する」「ユーザーに興味を持ってもらい参加してもらう」「運用ルールやトラブル時の対応、教育方針の明確化」などを挙げた。

 ユーザックシステムによるサービス説明の後、会場からの質疑応答に応えた山下氏は、「Autoジョブ名人を2ヶ月試用できたのは大きかった。はじめの1ヶ月は操作の習得にあて、2ヶ月目でプロトタイプを作ることができた。これを経営陣にデモで披露することで、迅速に導入までこぎつけられた」というエピソードを披露した。

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