日本におけるDXを阻む課題とは? 実現に向けたステップも解説

文●ユーザックシステム 編集●アスキー編集部

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本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「日本におけるDXを阻む課題とは?実現に向けたステップも解説」を再編集したものです。

 DXは、日本のあらゆる企業にとって必要な取り組みといわれています。この理由はどこにあるのでしょうか。また、DXが実現しなければ日本のビジネスはどのような未来を迎えるのでしょうか。

 ここでは、DXの意味と必要性や、DXの実現を阻む障壁を説明したうえで、DXの実現に向けたステップを紹介します。

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DXとは

 DX(デジタルトランスフォーメーション)を直訳すると「デジタルの変革」となります。しかし、DX とは単純にデジタル化を意味するのではありません。デジタル技術を活用したうえに成り立つ新たなビジネスモデルへの変革や、その実現に向けた一連の取り組みなどを意味します。

 経済産業省が2020年に公開した「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」では、DX を「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」と定義しています。

参照:DXレポート2 中間とりまとめ(概要)(以降DXレポート2)

 DXが必要とされる理由や、DXについての詳細は、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

日本におけるDXの現状

 現在の日本におけるDXはどのような状況なのでしょうか?

 DXレポート2のなかで、DX推進指標に対する企業の自己診断結果の分析レポートが報告されました。分析によると、2020年10月時点において、回答企業約500社のうち9割以上の企業が DXに「まったく取り組めていない( DX 未着手企業)」、または「散発的な実施に留まっている( DX途上企業)」状況とされています。同調査によって、日本ではDX未着手企業とDX途上企業が大半である現状が浮き彫りになりました。

 なお、DX推進指標の自己診断結果を提出したのは約500社にすぎません。自己診断を行っていない、言い換えるとDXについての取り組みを意識していない企業が多数存在することも予想できます。

 こうした現状を裏付ける別の調査もあります。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2021年9月29日付で発表した世界デジタル競争力ランキングでは、64カ国・地域のうち1位アメリカ、2位香港、3位スウェーデンと続き、日本は28位。主要先進7カ国のうち6位に位置し、世界から大きな遅れをとっていることを物語っているのです。

 激化する世界のビジネス市場のなかで競争優位性を維持していくためには、DXの実現が急務です。

DX実現の障壁とは

 日本の企業にとって、どういったことがDX実現の障壁となっているのでしょうか。

■全体的な障壁

 業種を問わず、次のような問題がDXの実現を阻害する原因となっています。

システムのブラックボックス化

 日本では、これまで企業間の競争激化とともにデジタル技術の導入が進んできた背景があります。各企業は導入したシステムをそれぞれ独自にカスタマイズして使い続けてきました。多くの企業では終身雇用制が基盤にあり、技術者が企業間を移動することが少ないことも、独自仕様が進む要因になったと考えられます。

 過剰にカスタマイズした自社独自の仕様を使い続けたことが、新しいシステムへの切り替えを困難にしているのです。そのため、前時代的なレガシーシステムから脱却できない企業が多いのが現状です。

 カスタマイズを進めた結果、システムが複雑化したことによって管理できる担当者が限られるようになりました(管理の属人化)。担当者が変わるたびに、システムの奥深い部分は解析不可能な状態となり、ブラックボックス化しています。

 また、システムの管理をベンダー任せにしている企業も少なくありません。そういった場合、自社内ではシステム内部を理解できる人員がおらず、さらにブラックボックス化を加速させます。 管理の属人化とシステムのブラックボックス化により、新しいシステムへの移行がより困難になっているのです。部署ごとに別のシステムを導入しているケースも多く、分断されたシステムが定着しているため全体的な新システムの導入が難しいケースも少なくありません。

DXへの理解不足

 そもそもDXがどういったものかを、経営層が理解していない、または DX の定義を誤解している企業も少なくなくありません。DX推進の重要性を認識していないため、DXの実現に向け着手しておらず、「まだ先の話」と考えている企業も存在するようです。

 また、一部の業務をデジタル化しただけで満足してしまう企業も見られます。

人材不足

 情報処理推進機構(IPA)が実施した「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」(PDF)の報告書を見てみましょう。DXに取り組んでいる企業のうち、 DX の成果状況について「成果なし」と回答している企業に対しIT人材リソースを聞いたアンケート結果は、「大幅に不足している」が52.9%、「やや不足している」は41.9%でした。「成果あり」と回答した企業でも、それぞれ34.8%、59.5%と高い数値です。

 この結果から、多くの企業がDXにおける人材不足を実感していることがわかります。DXへの取り組みを意識していても推進できないのはこれが理由です。

■業種別の障壁

 さまざまな業種に共通する課題のほかに、業種特有の事情が課題となっている場合もあります。

建設業特有の課題

 大手ゼネコンではDXが進んでいるものの、中小・零細企業はDX実現に時間とコストをかけることができず、前時代的な方法で行われる業務が数多く残っているのです。また、3D設計が主流となりつつあるなかで、中小・零細企業では対応できるシステムを持っていないことも多いのです。その場合、企業間のやりとりでは、一度紙の図面に起こす必要が生じます。

 3D設計を基準とした建設情報モデリングの「BIM/CIM」といった手法が、デジタル技術を活用した次世代の建設手法として注目されていますが、その手法が有効に活用できていないのが現状です。

物流業特有の課題

 物流の機能は、従来「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」の5大要素がありましたが、現代ではこれに「情報処理」を加えて6大要素といわれます。

 6大要素のなかで従来の5大要素は、車の運転や商品の輸送準備といった、人の作業が基本です。一方、情報処理はデジタル技術を応用して行う作業が多い要素であるため、情報処理にDXが浸透すれば、物流業界でのDX実現は大きく前進するはずです。

 とはいえ、物流業は従来から「荷物を輸送すること(5大要素)」に関わる業務が主体でしたから、情報処理に関する作業は付帯作業として扱われる傾向が見られます。そのため、情報処理の変革に取り組むことに消極的なのです。

 加えて、現代の物流では、製造から販売、出荷、運送というサプライチェーン全体を通して、ひとつの荷物に多くの企業がかかわります。そのため、1企業が物流の全体プロセスを決定することが難しいのです。どのようなシステムを使って情報処理を行うかは、荷主の決定に従うケースが大半です。

 物流プロセスの一部にのみかかわる各企業は、情報処理の変革に取り組める範囲が限られるため、主体性を持って進められないのが現状です。

 物流業界が抱える課題については、「物流におけるDX―業界の課題と推進のポイント、取り組み事例などを紹介!」をご参照ください。

製造業特有の課題

 製造業での改善といえば、FA(ファクトリーオートメーション)を中心とした自動化や省人化といった、実作業面での改善が中心として考えられる傾向にあります。そのため、業務効率化が実現し生産性は上がっても、DXの主目的であるデジタル技術を活用したビジネスモデルの変革までには至りません。

 また、基幹システムを導入せず、在庫管理システムや生産工程システムのみを運用するなど、一部をデジタル化するだけで満足している企業も少なくない現状もあります。

 製造業のDXについては、以下もご参照ください。
 製造業におけるDXの必要性―求められるアクションと推進事例を紹介

DXを実現するためのステップ

 では、実際にDXを推進し実現するためにはどういったプロセスが必要なのでしょうか。

 よく誤解されるのが、単純にIT化を進めてDXを達成したと考えるケースです。DXは、前出のとおり、デジタル技術によりビジネスモデルや組織自体をも変えることです。IT化はあくまでもDX実現への手段のひとつにすぎません。

 以上の点を念頭に、DXを実現するためのステップを見てみましょう。

■まずは現状を知る

 経済産業省は、自社のDXがどの程度の段階にあるのかを判断するための指標として、DX推進指標を公表しています。

「DX推進指標」の構成

 この指標を用いて、経営者がキークエスチョンを判断し、IT部門およびそれぞれの担当部門でサブクエスチョンに回答する方法で診断します。

 これにもとづいて、次のサイトのフォームに自社の取り組みの現状を入力することで、DXがどれくらい進んでいるかのベンチマークが可能です。また、自社の現状を把握したうえでDXに関する認定制度の申請ができます。

DX推進指標 自己診断結果入力サイト|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構こちらの診断サイトの詳しいマニュアルは、下記で公開されています。

DX推進ポータル 利用マニュアル(PDF)|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

■DX推進に向けた短期的対応

 DXレポート2ではDX推進のための具体的な取り組みをまとめていますが、そのなかで、短期的対応として次の3点をあげています。

・DX推進体制の整備―関係者共通理解の形成―CIOやCDO/CDXOの役割と権限の明確化―遠隔での協働が可能な体制の整備
・DX戦略の策定―デジタルを前提とした業務プロセスへの見直し―業務プロセスの恒常的な見直し―顧客の価値創出に寄与する見直し
・DX推進状況の把握―DX推進指標の活用

■DX推進に向けた中長期的対応

 中長期的な対応としては以下の5点をあげています。

・デジタルプラットフォームの形成―業務プロセスの標準化―業界内の強調領域の形成とプラットフォーム化
・産業変革のさらなる加速―変化に対応できるITシステムの構築
・ベンダー企業の事業変革―大規模な受託開発の減少に備えベンダー企業も変革する必要性
・ユーザー企業とベンダー企業との新たな関係―対等なパートナーシップの体現
・DX人材の確保―ジョブ型人事制度を拡大しDXを推進できる人材を確保する

 DX人材については、以下をご参照ください。

DXを推進するために必要な人材と、自社でDX人材を確保するためのポイント

DXの課題を解決し実現するのが日本の急務

 経済産業省が2018年に公開した DXレポートにおいて、DXが成し遂げられなければ日本のビジネスは停滞し、莫大な経済損失につながっていく可能性があることが示唆されました。しかし、2年後に公開されたDXレポート2の内容を見ると、DX実現への課題は多く、DX実現に成功している企業はまだ多いとはいえません。

 今回紹介したDX実現に向けたプロセスを参考に、自社のDX実現がどの段階にあるのか、今後どういった取り組みが必要なのかを、まずは検討するところから始めてみてはいかがでしょうか。

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