流通の業務改革! 流通BMSがメーカー・卸売・小売をシームレスにつなぐ

文●ユーザックシステム 編集●アスキー編集部

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本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「流通の業務改革!流通BMSがメーカー・卸売・小売をシームレスにつなぐ」を再編集したものです。

 流通BMSという言葉をご存知でしょうか。

 流通BMSは「流通ビジネスメッセージ標準*(Business Message Standards)」の略称です。消費財流通業界において、メッセージと通信プロトコル・セキュリティーに関するEDIの標準仕様です。2007年4月、経済産業省の「流通システム標準化事業」により制定されました。

 2017年に、その流通BMSをイオンやイトーヨーカドー、西友、ライフ、ヤオコーなどの大手スーパーマーケットをはじめ、髙島屋や西武などの百貨店も導入しています。マツモトキヨシ、LIXILビバやカインズホームといったドラッグストアやホームセンターの分野にも広く拡大し、順調に普及しています。

 また、2019年10月の消費税増税に伴う軽減税率制度に向けて「軽減税率対策補助金」が設置されており、この補助金を有効活用して流通BMSの導入が支援されています。補助金でカバーできる割合は、対象となる費用の3分の2が上限となっています。発注システムを改修する場合、上限額は1,000万円と定められており、受注システムの場合は150万円です。発注と受注の双方を改修する場合は、上限額を1,000万円としてサポートされます。

 今回は、日本に普及しはじめた流通BMSについてご紹介します。

*「流通ビジネスメッセージ標準」「流通BMS」は一般財団法人流通システム開発センターの登録商標です。

流通BMSとは

 流通BMSが開発された経緯は、1980年までさかのぼります。

 日本チェーンストア協会はオンラインで企業間の受発注を可能にするJCA手順を策定しました。通信手段は統一されているものの、受発注や請求に関するデータは、メッセージの内容が企業ごとに異なっていました。さらに卸売やメーカーが受注するためには、個別のシステム開発が必要であるという大きなデメリットがありました。

 JCA手順は、インターネットが普及する前に作られたものなので、電話回線を使用します。そのため、通信速度は2400bps/9600bpsというあまりに遅い仕様になっています。大量のデータをやり取りする場合には、受信するだけで1~2時間かかる場合もありました。現在では、電話回線を利用するためのモデム(通信機器)を入手すること自体が難しくなっており、万が一故障した場合には、業務に大きな支障をきたすことになります。

 このような老朽化した通信手段の代替として開発された流通BMSには、大きく3つのメリットがあります。

流通BMSのメリット

1.インターネットの利用により、通信時間の短縮とコスト削減を実現
2.メッセージの標準化により、取引先別の個別対応の負荷が軽減
3.取引データの精度向上

 第一のメリットとして、通信時間の短縮とコスト削減が挙げられます。流通BMSの実証実験では、JCA手順に比べ、通信時間を90%以上削減することに成功しています。通信時間を削減するということは、単純に通信コストを抑えるだけではなく、出荷や検品等の個別の業務改善にもなります。出荷業務を早く開始することができれば、出荷までのリードタイムが伸びて、余剰時間を確保することができます。そうすれば、ピッキング作業を平準化する業務改善につながります。

 第二に、取引先別の個別対応の負荷を軽減できます。流通BMSでメッセージが標準化されると、小売店ごとの個別仕様は少なくなります。卸売・メーカーはシステムの改修コストを削減できます。流通BMSという共通の仕様があるので、新規で小売店が追加されるときも対応時間が早まります。

 最後に、取引データの精度向上です。発注から支払いまでの各フェーズでリアルタイムにデータを交換することができるので、取引情報の精度が向上します。計上日や取引間での認識の違いを最小限に抑えることができます。

 流通BMSは、メーカー・卸売・小売の3つがシームレスに接続することで、業界全体の業務改善と効率化を目指しています。流通BMSに対応した企業は、受発注、出荷、検品、請求等の業務データを迅速かつ低コストで送受信することができるのです。

流通BMSの導入事例

 このように大きなメリットのある流通BMSですが、実際に導入している企業はどのような業務改善に成功しているのでしょうか。流通BMSの導入事例をご紹介します。

■株式会社 ちふれ化粧品

 流通業界の一般的な動きとして、複数の得意先からの対応要請により、流通業界の流れとしてJCA手順から流通BMSにシフトしていることが多いようです。

 株式会社ちふれ化粧品でも、取引先のイトーヨーカドーやイオンから流通BMSの対応要請を受け、導入することになりました。

 流通BMS導入の結果、通信コストを大幅に抑えることに成功しました。今までの3分の2程度にコストを削減することができたので、システムを導入するために投資した分は十分に回収可能です。通信速度は、電話回線からインターネットになったことで劇的に向上し、通信時間は今まで30~40分かかっていたものが、5~6分で可能になり、大幅な短縮に成功しています。

 さらに、取引先によっては伝票のペーパーレス化にも成功しています。伝票を購入する費用は、年間で20~30万円の削減となります。このように、流通BMSに対応している取引先がもっと増えれば、自社だけでなく、業界全体の生産性向上に寄与できるでしょう。

■恩地食品 株式会社

 恩地食品株式会社も取引先から流通BMSの対応要請を受けて導入を検討しました。特定の取引先に対応した専用のシステムではなく、汎用的なシステムを導入することにより、量販店オンラインシステムによくある追加や修正に容易に対応できるようにしました。

 仕入れ状況や在庫に関するデータ取得だけではなく、データの訂正、納品書・明細書・ピッキングリストの発行など、業務全体を取り扱うことができます。パッケージソフトを採用したことで、短期間でコストを抑えてシステムを導入することができました。

流通BMSで業界全体の生産性をあげる

 2011年5月、経済産業省の支援のもとに「製・配・販連携協議会」が発足しました。メーカー・卸売・小売の3つが、業種や業態の垣根を越え、流通業界全体の構造改革を目指す取り組みのひとつです。参加している企業の50社が「流通BMS導入推進宣言」を発表しました。これは、流通BMSの導入を幅広く推進し、積極的に普及に尽力するという決意表明です。

 このような取り組みの結果、流通BMS協議会の流通BMS導入企業数調査によれば、2019年6月1日時点で13,400 社以上あることがわかっています。ここ半年間で500社以上のペースで増加し、急速な広がりを見せています。情報化社会といわれる現代では、最新のデータをいかに速く入手するかによって、経営判断の正確性が左右されます。業務改善の要として、流通BMSの導入を検討してみるのはいかがでしょうか。

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