Spotifyはストリーミング事業の収益に関する2021年のデータとその分析を公開した。
これは収益性に対する透明性を確保するためのものでもあるが、その内容には、いち企業の業績公開というだけではない。内容は損益計算書のような複雑なものではなく、昨年のSpotifyの実績について「Top 10 takeaway(キーポイント)」として、10個の注目事項が簡潔にまとめられ、ストリーミングが主導する今の音楽業界についての興味深い考察が含まれている。※画像はSpotifyのサイトから引用。
以前、イエ(カニエ・ウエスト)が独自デジタルプレーヤー向けの配信を実施すると紹介した。これに見られるように、アーティストの中にはいまだに「ストリーミングがアーティストの収益性を悪化させている」という主張が根強い。こういった出来事に対してのSpotifyの回答とも言えるだろう。
例えば、Spotifyは昨年どのサービスよりも多額の音楽使用料を支払っているとのこと。
これはCD時代やダウンロード時代に支払われていた同種の金額よりも多いそうだ。また昨年の全ストリーミングサービスの売上合計(Spotify以外も含む)は、2009~2016年のどの年と比べても、音楽業界全体の売上を上回っているとする。2009~2016年は音楽業界が低迷していた時期である。つまりこれは、ストリーミングサービスが、それだけで一時期の音楽業界全体の売上を凌駕する規模に成長したということを示している。
Spotifyによると、昨年は初めて5万組を超えるアーティストが1万ドル(約123万円)、1000組を超えるアーティストが100万ドル(約1億2300万円)を生み出したという。Spotifyは世界の録音音楽収益における20%強を占めているとのことなので、この金額を約4倍にすることで、世界のアーティストがストリーミングを通じてどのくらいの売上を得ているかを予想できる。
Spotify創業者兼CEOのダニエル・エク氏は、昨年の特筆すべきポイントとして「ストリーミングが音楽業界に記録的な収益をもたらしただけでなく、これまで以上に多くのアーティストが成功を享受できるようになった」というメッセージを寄せている。実際、ストリーミングによって、ゼロから成功するアーティストが以前よりも増えているとことだ。
Spotifyで1万ドル以上を生み出したアーティストの28%が、レーベルを通じてではなく自身で配信をしている。これらのアーティストの約34%が音楽売上市場トップ10以外の国と地域にいるという点も興味深い。
CD時代には全体売上の約25%を上位50組のアーティストが占めていた。しかし、Spotifyで上位50組が占めるのはこの半分程度の12%になっているとのこと。つまり、一握りの人々の音楽ではなく、多様なアーティスト、多様な音楽がストリーミングによって広がってきたことがわかる。